真白な髪の女神(男だよ?)
何とか書けました!
そしてブックマークに追加してくださった方々、評価をしてくださった方々本当にありがとうございます!
まだまだ未熟者ですがこれからも精一杯頑張るので宜しくお願いします!
「うっ……うぅ……」
僕、天城悠は身体が倦怠感に襲われる中、それに抗いゆっくりと目を開け、そしてうつ伏せだった身体を起き上げた。そこはジャングルの様な森の中だった。
「ここは……?」
「おお!ようやく起きたか!」
その声の元を見るとそこには武士がいた。黒い鎧を身に纏い髪と目は黒く長い髪は後ろに纏められていた。顔は……イケメンだ。羨ましいっ!それはまるで日本の武将だ。鎧からも確認できるほど鍛えられた肉体がよくわかる。
「え……えっと、貴方は……?」
「我か?……いいだろう!我が名は織田信長!同じ同郷なら名前は聞いたことはあるだろう?」
……織田信長!?いや、あの歴史上の人物の!?本当なら嘘だ、と思うのだが何故かこの人が織田信長だというのは真実だと理解してしまう。
「ほっ、本当に織田信長なんですか!?確か明智光秀に攻められたのちに自害したんじゃ……」
すると織田信長は何処か懐かしい表情をしながら僕に答えた。
「少年、お主は多くの人から伝わった物からでしか知らないだろう。その伝わっていく中で真実が偶然、いや意図的に消されたのだ。……そうだな、我が本当の真実を教えよう」
織田信長は真実を語る。
かつて彼は普通の人より強大な身体と力を持っていた。だがその力に溺れずに戦国の世で戦い抜いた。明智光秀は織田信長を裏切ったとされているが信長はこれを否定した。
「あの時、我を襲ったのは明智光秀ではなかった。正確には明智光秀の姿に偽った存在によって我は殺されかけた。」
その偽物の明智光秀との戦闘は激戦だったらしい。何故その明智光秀が偽者だとわかったかというと「自分の部下が本物かどうかは一目でわかるだろう?」と返してきた。……格好いいな。
「そして我は何とか退けたが傷が酷くてな。その時に助けられたのが明智光秀だったのだ。」
明智光秀は自分の偽者が織田信長を襲った事を知ったらしい。その偽りの明智光秀は豊臣秀吉によって討ち取られた。織田信長は四天王を呼び足してあの偽りの明智光秀は何者かのかを調べようとしたが、明智光秀はあることを言ったのだ。
「あの時は驚いた。あの明智がこの世界の住人だったのだ。あやつはあの存在を倒すために来たのだと言っていた。そして我に助けを求めたのだ。『私の世界からあの黒い存在を倒す為に手伝って欲しい』とな。」
「……断らなかったんですか?」
「断る?何を言っておる。部下の頼みだぞ?それに我の大事な家臣だ。その頼みを断る等上に立つ者がすることか?」
僕の織田信長のイメージが一気に崩れ去った。自由奔放で部下の事などあまり気にしてなさそうだと思っていた。
「まあいい。我はあやつの頼みを引き受け明智と蘭丸と共にこの世界に舞い降り冒険をしたものだ!」
「天下統一とかはしなかったのですか?」
「うん?それは猿に任せたわ!正直人ばかりと戦うのはちと飽きてな。この世界は龍や大犬、化け猫等その時の我が見たことのない存在に度肝を抜かれたわ!」
豪快に笑う信長だが、今思うと何でまだ生きているのだろうか?……何か恐いから止めておこう。
「そして、我はこの世界で生涯を終えたのだ。」
「そうなんですか……え、生涯を……終えた?」
一番聞きたくない事を聴いてしまった。え、死んでるんですか?え、えっー!?
「そう怯えるな。確かに我は一度死んだが、ある役割の為に再びこの世に復活したのだ。」
その言葉と同時にある人物が此処に近づいてくる。
「信長、見つけたぞ。」
「うん?ガラハッドか。久しいな!」
その男性は白い鎧に金髪のクール系イケメンだ。
ガラハッド?……確か、アーサー王物語に登場する人物じゃ……?
「あぁ、久しい。それより陳褘が早く来ないから怒っているぞ」
「そう言えばお茶会だったな。少年、我は用事を思い出したからここで去らばだ!」
そう言うと織田信長の身体は激しく燃え上がり一体の炎の鳥に変わる。体長は5メートルはあるだろうか。その炎の鳥は神々しく銀と金、そして長い尾は翡翠色で美しい。その炎の鳥、いや炎の神鳥は大きく飛び上がり空の彼方に消えていった。
「先に行くなよ」
ガラハッドは蒼いオーラを放つと一体の白と蒼の鱗に覆われた細長い龍に変わる。身体をくねらせると巨体な身体は浮かび上がり織田信長、炎の神鳥と同じ方向へと飛び去っていった。
「……一人になってしまった。」
そう、文字通りに。
辺りを見渡すが草木ばっかりだ。どうせなら何処かの町に送ってほしかったな。
というより何故あの人は僕を守ってくれたのだろうか。単なる気まぐれ?それとも同郷だから?
いや、そんなことより……。
「……本当にどうしよう。」
とりあえず、このジャングルから離れよう。
僕は倦怠感を感じながらゆっくりと、静かな足取りで歩き始めた。
それにしてもやはり異世界だと感じてしまう。
見たことのない植物に木の実に草食系モンスターらしいのが居たのだがそれでも強靭な甲羅に覆われていたり地球で言う首長竜等がいる。その草食系モンスター達に一か八か近づいてみるが僕に気にせずに木の実や草を食していた。
すると森奥から銀色ではあるが薄汚れた何がふわふわと飛んできた。僕はそれを見た瞬間、歓喜に震えわたった。
そう、竜だ。
しかも小型犬並のだ。
「きゅい?」
目の前に来るとまるまるとした愛らしい目を僕に向け小さな顔を傾げていた。
「かっ、かわいい……!」
思わず手を出そうとするがここが異世界だということを思い出し引っ込めてしまう。
確かに可愛い竜系モンスターだ。だがそれは外見だけで内面はどうかわからない。むしろ凶暴かも……。
そんな事を考えると後ろに一歩下がってしまう。
しかし……。
「きゅいっ!きゅいっ!」
その小竜は僕に近付くと頬擦りをしてきた。
……どうやらなついたようだ。特に何もしていないのに。
これは要するに『テイマー』?になるのだろうか。特に何するわけでもなく只僕に甘えるだけだったのでその小竜の名前を『ギン』と名付けた。ギンは名前を付けられたのが嬉しいそうに翼と尻尾をパタパタと振っていた。
「きゅっ!?きゅい!!!」
するとギンは何かを感じ取ったのか僕の手を引き何処か離れようとしていた。
「……何か……来るの?」
「きゅいっ!」
僕の質問にギンは頷く。どうやら僕の言葉を理解しているようだ。賢いな、じゃなく!
ーキュグググググ!!
逃げようとするが目の前に一体のモンスターが現れる。
毒々しい紫の身体に四つ足の蛇頭の竜だ。翼は左右に二つあるがそれさ飛ぶにしては小さい。
しかしその図体のでかさは協力なモンスターだとわかる。
ーキュグググググガガガガっ!!!
その毒竜は僕に向かって口を開けて威嚇をしている。その口から見える鮫の歯と同等の鋭さを持っておりその歯から毒が滲み出ている。あれを食らえば僕の命は危うい。
「きゅんっ!!!」
ギンは僕を守るように前へ出ると火のブレスを毒竜に向かって放った。その威力は火炎放射機位だろう。
しかしそのブレスを受けて毒竜は少し嫌な顔をするがあまり効果が無いようだ。
「きゅっ!?」
ーギュガガガガ!!!
「危ないっ!」
僕はギンを庇って毒竜が放たれた紫の霧をまともに受けてしまった。そして身体の自由は無くなりその場で倒れ込んでしまう。
「うあぁ……っ」
僕の身体の手は紫色に変色してしまう。学ランの下はおそらく身体全体紫に変色しているだろう。
意識が朦朧とする中、僕の脳裏に一つの単語が浮かび上がった。
それは。
『死』だ。
あぁ、もう死ぬんだ。
『仕方がない』。
でも、僕の頬に温かい液体が流れていた。
無意識に涙を流していた。
死ぬことを受け入れたはずなのに……。
「きゅぃ!きゅぃ!!!」
目を向けるとギンが悲鳴にも似た泣き声で迫る毒竜を目に止めず只僕を必死に僕の身体を揺すっていたのだ。
「ぎ……ん……?」
「きゅぃきゅぃ!」
もうすぐ毒竜が僕とギンを飲み込もうと大口を開けていた。僕は口で逃げろとギンに呼び掛けようとするが思うように口が動かない。ギンは悟ったのかうつ伏せになった僕の身体に引っ付くように傍にいる。まるで僕を一人で死なせないように……。
「きゅぃ!」
ギンは僕の瞳を見ると安心する様に目を瞑った。
あぁ、こんな僕と共に居てくれるのか。
嬉しい。その時の僕の気持ちはそれで一杯だった。
今までギンの様に自ら犠牲にしてまで共に居てくれようとする存在がいなかった。
でも、今はここにいる。
僕は。
僕はこれでいいのか?
『仕方がない』でいいのか?
嫌だ!
『仕方がない』で終わらせない!
しかし僕の決意は虚しく毒竜は僕とギンを飲み込んだ。
はずだった。
ーギュグガァァァァァア!?
毒竜の断末魔が響き渡る。
恐る恐る目を開けてみるとそこには。
真白な髪の女神がそこにいたのだ。
『ーー、ーーー!……ーーーー。ーーーー?ーーーーー。』
何を喋っているか理解が出来なかったが彼女の容姿は美しい。
黒の着物の様な服装をしていて真白な髪はボーイッシュだ。年齢は僕と同じ位だろうか。右手には純白の太刀が握られている。雪の様な真白な髪と美少女な顔が印象的で苦痛でありながら心を打たれてしまった。両目の碧眼は優しく僕を眺め優しく身体を起こしこう言った。
「安心しろ、助けてやる」
そう日本語で確かに聞こえたのだった。
真白な髪の女神=ハクです(笑)