異世界!?
新章突入です!
天城悠視点です!
広々とした空間の中、僕達は光る床の中心に佇んでいた。
その光る地面は大きな円状サークルの様で出口らしい扉の前には黒一色の人達が驚いた様に僕達を見ている。しかしその人達は暫くすると焦った様に駆け寄ってきた。
『ーーー、ーーー、ーーーーーー?』
『ーー、ーーー、ーーー!?ーー……』
何言ってるかわからない。他の皆も同じの様だ。しかし、僕達は声をかけてきた人達を見て言葉を失っていた。
美しく耳が尖った人、猫や犬等の耳と尻尾を持った者、背が小さくモジャモジャな髭を蓄えた者……。
あぁ、何度か本やネットで見たことや聞いたことがある。
エルフ、獣人、ドワーフ……。目の前にいることが信じられなかった。そして理解する。暗い場所だが、ここが異世界なんだと。
さて、何で僕達がこの様な状況になったのか振り返ってみよう。
~~~~~
「おい、悠!邪魔なんだよっ!」
「ガハッ!?」
僕の名前は天城悠。絶賛虐められ中だ。只今虐めの主犯の一人、山村淳司に鳩尾を殴られて踞っている。
「おら、さっさと立てよ!チビっ!!」
踞っている僕の腹を蹴ってきたのは荒井亮だ。山村よりも背が高い。確か柔道部に入っているらしい。
チビと呼ばれているが確かに僕の身長は男にしては低いし下手すれば女子よりも低い。おまけに自分の容姿が問題で女顔なのだ。体型も含めて。よく考えてみればこの容姿が最初の原因だ。
「おらっ!!」
「ぐっ!?」
何度も殴られたり蹴られたりするが顔には何もされない。やってしまえば主任の教師等にバレてしまうからだ。その為に人目の少ない放課後の体育館の裏に呼び出されリンチにあっているのだ。
いきなり僕の左腕に熱くて痛い感覚が襲われた。
「いっーーー!?」
「動くなよ!!!」
天本一、彼はこの学校でトップクラスの成績を持っており担任や先生達からの信頼は高い。それに スポーツも万能、人柄もいいと周りから認識されているが、今の彼を見たらどうなるだろうか?彼は僕の腕に火が付いている煙草を腕に押し付けたのだ。もちろん痛くて熱くい。痛みがありながらも必死に抵抗して逃げようとするが山村と荒井に取り押さえられて更にそれを押し付けた。
「逃げんなよ、手元が狂うからさぁ!!!」
この虐めは中一から始まっている。まさか誰もがこの者達が人を虐めているとは思わないだろう。簡単に言えば彼等は猫を被っている。
ちなみにこの虐めは一部のクラスメイト、他のクラスは知っている。だが、この虐めの事は誰一人口に出さなかった。次の標的にされたくないからだ。まあ、仕方がないだろう。僕も彼等の立場だったら同じことをするだろうから。別に彼等を恨んでもいない。仕方がない、と考えてきた。
暫くすると飽きたのか山村達は学校から帰っていった。僕はよろよろと立ち上り鞄を取りに行く為に教室に戻った。クラスは5クラスまであり一クラス約35人位はいるだろう。ちなみに僕のクラスは3組だ。
自分のクラスに入ると一人の女子がいる。女子は僕の姿を見ると悲痛な表情をしていた。
「天城君……」
彼女は僕の幼馴染みである白川理彩。物心付いた時には一緒にいた存在だ。彼女も僕が虐められている事は知っている。目撃したこともあるが、それからは他も同様に離れていった。誰一人助けてもらえなかったが、同時にその事に感謝もしている。嫌な事や痛い事をどうすればいいのかを自分なりに考えた。そして辿り着いた答えは「仕方がない」だ。「仕方がない」と考えて諦めれば嫌な事、痛い事については何も感じなくなった。
「あのね、」
彼女は何か言っているがボクはそれを無視して自分の机の上にある鞄を持って帰ろうとする。
「まっ待ってよ!」
「何?」
彼女が必死に呼び止めるので仕方がなく要件を聴いてみる。
「明日ね、林間学校でしょ?」
そう、明日から林間学校がある。この学校では1年から3年まで自由に参加ができるのだ。
「その時に話したい事があるの……」
彼女は何かを言っているが正直どうでもいい。本当は参加はしたくないがこの行事は成績に反映されるのだ。僕の成績は普通なのだが担任に勧められてしまい「仕方がなく」参加することとなったのだ。
「ねぇ、聴いてる?」
「……どうでもいい。」
「天城君……」
僕はそれだけを言うと教室から出ていくがその後に理彩が着いてくる。
正直鬱陶しい。
何時もなら他の男女友達と一緒に帰っているのだ。僕と一緒に帰って何の得がある?……何かの罰ゲームか虐めようとしているのだろう。
暫く歩いて家に到着するが理彩も後ろ離れずに着いてきていた。まあ、僕の家の隣が彼女の家なのだが。
「天城君、今日私の家で夕食はどうかな?お父さんやお母さんも天城君の事気にしてたし……」
「いらない」
俺は彼女の誘いを即効に断り自分の家に帰宅した。
俺には家族はいる。だが本当の親ではない。俺の実の親は俺が小学生低学年の時に母は病気、父は事故で亡くなっている。今の親は母の姉夫婦だ。彼等にも子供はいる。僕の一つ下の義妹の実里だ。彼女は最初は仲が良かった。しかし俺が虐められ始めるとまるでいないかの様に僕を無視していた。暫くはろくに話していない。まあ「仕方がない」だろう。彼女も僕が虐められているのを目撃していたのだから。こんな虐められている義兄なんかと関わりたくないだろう。因みに林間学校に参加するみたいだ。
さっさと夕食と風呂を済ませ自分の部屋に戻るとベットの上にダイブし、意識を手放した。
翌朝、俺は休みの間に用意していたリュックを持って学校に向かう。
学校にはバスが数台止まっておりかなりの人数が林間学校に行くことがわかる。
僕は出来るだけ虐めの主犯達と一緒にならないように最後のバスへと乗り込み林間学校の場所へと向かった。
到着したのは山奥で大きなホテルの様な建物が建っている。バスは止り僕達生徒は校長の話を聴いて林間学校が始まり僕達はグループに別れて行動することとなった。
グループメンバーは3年の志島龍輝、大木薫、岩川寧々、緑川椿。2年は
山村有史、天本一、荒井亮、神城凪、白川理彩、僕。1年は佐々木望、松浦光、折村浩輝、天城実里、だ。最悪な事にあの虐めの主犯達と同じグループとなってしまった。最悪だ。
先生の指示で自分達の部屋に荷物を置いた後体操服に着替え集合場所に戻るとオリエンテーリングが始まる。
オリエンテーリングはグループで地図を見ながら目的地に辿り着くのだが3年の志島がいきなりこんなことを言い出す。
「なぁ、こんなのつまんねぇからもっと奥に入っていこうぜ!」
「いいッスね、志島先輩!!!」
「そうだな、お前らもいいよな?」
山村が賛成しそれに続いて先輩の 強迫染みた発言に僕達は只頷くだけだった。
僕達は更に奥深くへと進んでいく中、大きな看板が出ており『立ち入り禁止』や『危険!』というのがあったのだが先頭に進んでいる志島、大木、山村、荒井、天本は目もくれず只奥へ進んでいく。同じく進んでいくが僕を含めたグループメンバーは何度か止めようと声を掛けるがそれを無視し、睨み付けて黙らせついていく事しかできなかった。
暫く進むと遺跡の様な物を発見した。その遺跡を見て志島達は興奮したように見ている。
「すげぇ!!!先輩、これ大発見だぜ!!!」
「あぁ!!!」
彼等は遺跡をマジマジと見続けている。僕も遺跡を見るがどれも古びておりまるで古代の産物の様にも見える。
「おい、ここに入り口があるぞ!!!」
志島は遺跡の入口、大きさは約3メートルで幅は2メートル位だ。
「あの、これ以上進まない方が……」
「いいじゃない、これは大発見よ!」
3年の緑川は中止を勧めようとするが岩川はそれを却下する。岩川という人物は大金持ちの令嬢で傲慢な人物である。一方の緑川という女性は噂で僕と同じ様に同級生の女子から虐めを受けているらしい。その主犯の一人が傲慢な岩川だというのも噂で聴いた。
「天城君、大丈夫かな……?」
「……おにぃ」
こんな時に限って白川と実里が怯えた表情で僕に近寄っていた。都合がいいというかなんというか……。
僕達は仕方がなく彼等と共に中に入ると通路の様に長い道のりだ。それにしてもこの遺跡には何があるのだろうか?
奥には広い部屋があり、その部屋全体に魔方陣の様な何が描かれていた。
そしてその魔方陣の中心にはバスケットボールの三倍もありそうな碧色の宝玉の様な物が飾っている。志島は中心にある宝玉を掴み取ろうとするが抜けないらしい。
「おい、お前らも手伝え!!」
僕達全員で引っ張ろうとするが中々動かないが暫くすると何かが作動した様に宝玉が光輝きを放ち、その光がこの部屋全体を包み込んだ。
~~~~~
まあ、こんな感じでいつの間にかこの場所にいたのだ。碧の宝玉はここには無い。あれが原因だということは直ぐにわかった。
ちなみに志島達はというと……。
「す、すげぇ……」
「まじかよ」
「綺麗だ」
「可愛い……」
他の皆は心奪われたようにそう呟いていた。でも誰一人彼らと言葉が通じなかった。
すると一人のエルフの……女性?が咳払いをするとこう発言してきた。
「君達、私の言葉が、わかる、かい?」
そう日本語で話してきたのだ。
さて、どうなることやら?