新たに旅立つ者達
PV3000を越えました!ありがとうございます!
これからの投稿は不定期になると思います。
誤字脱字があるかと思います。
「さて……先にハクさんの治療を開始します」
サツキは千切った腕を後ろに捨てると地面にあった凍った箱に触れる。クレハが創造しアイズが凍らしたものだ。それを素手で軽々と握り潰し切断された右腕を取り出し仰向けに寝ていたハクの切断面にくっつけた。
「『修復治療』」
そう唱えると合わせた傷から不純物を含めた余計な血液を一瞬飛び散るが、その後は傷も無く綺麗に治っていた。
「さすが『旋律』だね?」
「その名前はあまり好きではないですね」
そう言いながらも汗一つも無い涼しい表情をしていた。
『修復治療』というのは治療術の高位レベルの一つであり、修復と治療を同時に行えるものだ。だが修復にも限度がありハクの様に切断された腕が腐らずに残っていれば修復は可能である。
「ハクの腕は大丈夫なんですか!?」
「はい、少しのリハビリは必要ですが違和感無く動かせるでしょう」
ふらつきながらも立ち上がったソフィアは涙を浮かべながら安心した表情をしていた。それはクレハ達も同様であり、ディオンは余程心配だったのか眠っているハクの頬を頬擦りをしている。
「君達も大丈夫かい?マグナ、ミル、クレハ」
「あぁ、何とか」
「まさかギルマスが来るとは思ってなかったです」
「……御迷惑を御掛けしました」
クレハは申し訳なさそうにギルドマスター、レッドに向かって深々と頭を下げていた。
「いいんだよ、無事で良かった」
女性顔負けの美しい微笑みをしたレッドはまさしく聖母の微笑みの様だと思ってしまう。
サツキはヘルクガムの所へ向かう。
「久しぶりですね、ヘルクガム」
「サツキか……」
そのヘルクガムの横からソフトボール位のスライムがひょっこりと現れた。
「ライム、無事だったか!」
「貴女も久しぶりですね」
トランススライムであるライムは身体が小さくなりながらも命に別状は無かった。
スライムというのは生物の中でも最も生命力が高い存在で、日本でいうとゴキブリ以上である。もちろん、スライムの方が断然可愛いことは言うまでも無いが。
「ヘルクガム、もうレイアの事は……」
「わかってる、わかってるさぁ……俺も、ライムもな」
レイアという名前はヘルクガムとライムの主だった女性で、そしてサツキの親友でもあった人物だ。サツキが毎年来ているのはレイアを墓参りの為だ。
「ライム、お前はサツキの所へ行け」
抗議するかと思われたライムだが、悲しむ様に身を震わせヘルクガムに少し触れるとサツキの方へとぴょんぴょんと跳び跳ねていった。
「サツキ、ライムをよろしく頼むぜ」
「わかりました」
サツキはライムの契約の儀式を行う。ライムのいる地面には魔方陣が現れ、その魔方陣はライムに吸収され儀式は終了した。
「ヘルクガム、貴方はどうするんですか?」
「俺は……のんびりと新たな主を探すか」
そしてレイアの墓の前には向かうと別れを決意する。
「レイア……お前との旅はぁ……楽しかった。本当なら此処に居てぇが……お前なら叱るだろうな。……だから、俺とライムは、前を向いて、これからの未来に向かって歩いていくぜ。まぁ、どうなるかわからねぇがな」
そう言うとヘルクガムは剣に戻ると地面に沈んでいくように消えていった。
「……さて、貴女は私が引き取りますね」
サツキはデュランダルに同意を求める。
『ミーはハクと……』
「貴女の気持ちはわかりますが、もし取り返そうと奴等が彼等に被害が出る可能性も充分高いですよ?」
『……わかりまシた。大人しく貴女についていくデース』
サツキはデュランダルを片手で担ぐと他の者達に別れの挨拶をする。
「では、私これから行くべき場所がありますので先に帰還します。レッドさん、ドゥムさん、ゴーンさん、この子達を宜しくお願いします。……では」
サツキは肩にライムを片手にデュランダルを持ってこの場から一瞬にして立ち去った。
そしてレッドはハク、ゴーンはマグナ、クレハはソフィアを背負うと村へと帰還していった。