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Chapter of Begine  作者: Tkayuki 冬至
始動
4/71

ジャンガルノ

ハク達が着いた時には既に終わった後だった。

そこには3人の男性冒険者が血だらけになっていた。身体には鋭利なナイフで斬られたかの様な傷が多数見られる。どれも痛々しく男性冒険者も呻き声声を上げている。その3人の男性冒険者の周りには悲鳴で駆けつけた冒険者等が応急措置をしていた。


「おい!何があった!」

「こいつら全員Dランク冒険者だ。速く包帯を!」

「駄目!意識が無いわ!都市内の医者に見てもらわないと!」

「誰か!応急薬持ってない!?」


ハク達は近くにいた男性冒険者に尋ねる。


「一体何があった!?」

「いや、わからない。悲鳴が聞こえて駆けつけてみればこの有り様だ。」


すると応急措置をされていた男性冒険者が掠れた声で伝える。


「ぐっ!?森の、奥に他の、冒険者、が…」


どうやら彼等の仇を取るために5人の冒険者が敵を追っていったらしい。それだけを告げるとその男性は気を失う。


「おい、どうする?ここにいるのは殆どDランク冒険者だ?怪我をしたこいつらはDランクの中でもトップのパーティーメンバーだぞ?」

「強い個体のジャンガルノなんだろうな。」

「そうだな…。ここから先は危険だ。Cランクの実力が無いと…。」

「この中にCランク以上なんているの?」


他の冒険者等は互いに相談している中、大剣を担いだ冒険者が声を張り上げる。


「この中にCランク以上の冒険者はいるか!俺はCランクの者だ!今から奥にいると思われる冒険者の救出をしたい!頼む!一緒に来てくれないか!」


しばらくざわざわするが一人の岩族(ドワーフ)の男性が前に出る。


「俺もCランクだ!着いていくぜ!」


さらに、


「私もCランクです!御供します!」


そう言ったのはソフィアだった。

一応ハク自身もSランクである為前へ出る。

だが、自分がSランクだということを伏せて。


「俺もCランク(以上)だ。」


ソフィアとハクが前へ出るとざわつきはするがこの際見た目がどうであれ彼等のに託すのだった。


決まったのは大剣を担いだ人族の男性と地族の男性、ソフィア、ハクの4人で救助しに行くこととなった。

残りの冒険者等は怪我人を運ぶのとCランク以上の冒険者を呼び集める為にギルドへと戻る事となった。



~~~~~



しばらく探索していると大きな広場に出た。周りは太く長い木に囲まれてる。上からの太陽の光が木々によって遮っている為に薄暗くなっている。


「ここが森の奥、ですか?」


ソフィアが尋ねると岩族の男性は頷く。

ハクは肩に乗っているディオンに小声で話す。


「気配はあるか?」

「…あるよ。ほら、あの木々の奥に、」


すると奥から、


ーグルルルルゥゥ…


低く、そして威嚇している唸り声だ。人族の男性と岩族の男性はそれぞれ武器を構える。


ーグゥルゥルゥァァア!!


大きな咆哮が鳴り響くとズシンッ、ズシンと奥から灰色い巨体が現れる。その巨体のモンスターは見た目は熊のようだが爪や牙が大きく鋭い。大きさは4メール超はあるだろう。


「何っ!」

「嘘、だろっ!」


二人の男性冒険者が狼狽する。


「大型のジャンガルノって聞いたからキングジャンガルノだと思っていたがそれよりも一回り大きいじゃねぇかよ!」

「おいっ、あれ見ろ!」


岩族の男性が示す先には5人の冒険者が倒れていたのだ。直ぐ様駆け寄るとあちらこちらに怪我はあるが今のところは5人共命に別状は無いだろう。気を失っているようだ


超大型のジャンガルノはじわじわとハク達へ迫る。その目は狂気を感じる。通常の状態では無いことがわかるだろう。


超大型のジャンガルノは足を止めると威嚇をしながらハク達を睨み付けていた。人族の男性と岩族の男性は気を失っている冒険者を両手に担ぎながら相手を姿を捉えている。

残りの一人は女性冒険者はハクが背負う。

ソフィアは薙刀を持つ手を変えるとジャンガルノの前に出て対峙する。


「私が相手しているのでその間に怪我人を!」


そう言うと駆け出して間合いを詰めてゆく。超大型のジャンガルノはソフィアを敵と認識したのか咆哮しながら戦闘を開始する。


「ディオン!」

「あいあいさー!」


ディオンを肩から降ろし、人族の男性と岩族の男性に指示を出す。


「さ、今のうちに怪我人を安全な所へ!」


2人は超大型のジャンガルノには勝てないとわかっているのかハクに従う。それに自分達が行けばソフィアの邪魔にしかならないと本能で感じ取っていた。


そしてハクと人族の男性と岩族の男性は怪我人を運びながら離脱するのであった。



~~~~~



一方ソフィアは超大型のジャンガルノと激戦を繰り広げていた。

ふと右肩に重みを感じるが戦闘の支障には出ない。そこにはディオンが乗っていたのだ。


「ディオンちゃん!?」

「やっほー。手助けいる?」


何呑気なことを言ってると思うが、この子は聖獣なのだ。高い戦闘力を持っているのは確かだろう。手助けしてもらえば何とかなるだろう。

しかしソフィアはその申し出を拒否する。


「ごめんなさいっ!この、ジャンガルノを、私に任せてくれませんかっ?」


ジャンガルノの攻撃を避けるソフィアは少し余裕がある。その言葉を聞いてディオンは仕方がなく了承する。

だが、条件付きで。


「うん、わかった。任せるよ。でも僕の判断で勝手に介入するかもだけど、いいかな?」

「…わかりました!」


そう告げるとディオンはソフィアの肩から退散する。超大型のジャンガルノの攻撃を避けていたばかりだったが薙刀を動かし反撃に出る。


超大型のジャンガルノはソフィアに向かって逞しく大きな両腕で叩き潰そうとするが、動作が大きくすり抜ける様に回避する。

超大型のジャンガルノは右に回避したソフィアの動きを逃さずに 裏拳の様に飛ばしてきた。

身体を反らし回避したソフィアはがら空きになっている超大型のジャンガルノの身体に向かって薙刀を降り下ろした。


ーグギャァァァァアッ!?


斬りつけられた超大型のジャンガルノは顔を押さえながら暴れまわる。

ソフィアはそれに巻き込まれないように距離を取った。

どうやら右目を斬りつけられて苦しんでるようだ。証拠に右目には切傷が見える。


ソフィアはあることに疑問を抱いていた。

まず、目の前にいる超大型のジャンガルノの目は何処か怯えているように感じる。同時に強い使命感があるようにも思えるのだ。


ーグルルゥ…


超大型のジャンガルノは暴れるのを止め2つの双眼でソフィアを睨み付ける。どうやら斬りつけられた右目は見えているようだ。

徐に近くに倒れていたのだ木を掴むとソフィアに向けて投げつけた。


「…っ!?」


ソフィアは驚きに反応が遅れるが回避に成功する。だが超大型のジャンガルノは手を休めること無く次々に木以外に埋もれていた岩も投げつけてくる。

ソフィアは回避しているが最後に投げてきた大木が迫る。その大きさは投げてきたものより一際大きい。近くに生えていた木をへし折ったのだろう。周りは木や岩が散乱して行き場を失ってしまった。

ソフィアは薙刀に力を込め、その大木に目掛けて一閃する。


「はぁっ!」


見事に大木はすっぱりと切れ、ソフィアの左右に落ち転がっていく。だが、正面にいた超大型のジャンガルノの姿が見えない。


ーグルァァア!


声をした方へ目を向ける。

上だ。

超大型のジャンガルノは木の上にいたのだ。

木はミシミシっと悲鳴を上げているが超大型のジャンガルノはターザンの様に木から木へと跳び移ってゆく。よく見ると超大型のジャンガルノは木から木へ移動する際に太く丈夫な木を見極めている。

ソフィアは目で追うが葉が密集しているので姿が隠れてしまう。


「何処にっ…!」


ーバキッ


ーミシミシッ


ーカサカサッ


木が折れる音や悲鳴を上げる音、葉が揺れる音はするが目に追っても姿は見えない。


ーブゥンッ!


後方から何かが落ちてくる。

咄嗟にソフィアは薙刀で大きく薙ぎ払うが…。


「なっ!木ー!」


驚く暇も無く後方から超大型のジャンガルノが木から襲いかかっていく。


「しまっー!?」


まるで巨大な岩石が落ちたかの様に超大型のジャンガルノが落ちた場所は大きく抉れてた。

ソフィアは間一髪で避けることが出来たが、無事ではない。

頭からは鮮やかな血が頬に向かって流れる。避けるときに飛び散った石が当たったのだ。

それだけではない。


「あ、足がっ…」


無理な態勢から回避した時に右の足首を挫いてしまったようだ。右足を引摺りながら超大型のジャンガルノが落ちた場所へと目を向ける。

超大型のジャンガルノは無事のようだ。

怪我をしたソフィアに狙いを定めて襲いかかろうとしている。

ソフィアは逃げようとするが右の足首を動かそうとすると痛みが響いてしまう。

まともに超大型のジャンガルノの攻撃を受けたら命は無いだろう。

超大型のジャンガルノは鋭利な爪を持った腕を降り上げる。


(私は、ここで…)


ソフィアは死を覚悟して目を閉じる。

その閉じた目から一筋の涙が零れ落ちた。


そして超大型のジャンガルノはソフィアに向けて腕を降り下ろされた。











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