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Chapter of Begine  作者: Tkayuki 冬至
七天龍、緑剛龍ノ章
38/71

暴走

すみません!

遅くなりましたー!





ソフィアはこの現状が受け入れられなかった。


目の前に落ちた血だらけのハクの右腕。


そしてその斜め前にはハクの右肩から切断された傷口からおびただしい血が不規則に流れ落ちていた。その下には赤よりも黒かがっている血溜まりが出来ている。


ハク自身は左手に持った太刀(ディオン)を握り締めたまま立っていた。


「あ……あぁ……」


言葉が出ない。

頭の中がグチャグチャになりながらも何があったのかをリピートしていた。


わかることはハクが私を庇った事。


その代償だと示しているかの様に目の前にある右腕からソフィアに向かって血の川が流れていく。逸らしてしまいたいほどの光景だが身体が、全てが動かない。時が止まったかのような錯覚にも感じていた。


切断されたのにも関わらずハクは叫びもせず喚いたりもせず、只立っていた。もしかすると激痛で気絶しているのかもしれない。


(私は……何を……やってるの?何でハクが傷つけられた……?……誰の……せいで?……私?)


ソフィアの瞳から涙が流れる。

泣きたくて、悔しくて、自分の無力さが、ソフィアの心を、力を、暴走させてゆく。



「嫌だ……」


ハクが死んでしまう。


「嫌だぁ……」


自分の無力さで。


「嫌だぁ……」


いつか彼の傍に立てるように誓ったのに。


「あぁ……」


何もできずに。


「いやだ……」


誰のせいだ?


「誰、の」


憎い!


「壊す……!」


ハクを傷つける存在を。


「傷付けた奴を……」





(この手で)







「ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」



そして暴走が始まる。



『ソフィア様!?』


強く握った太刀(アイズ)は光に変わり、ソフィアの身体に入ってしまう。


そしてソフィアを中心に冷気と殺気が混じった物が辺りを埋め尽くした。


身体は氷の様に凍り付いたかと思うと背中から氷の翼が生え、大きさは大人一人を包み込む事ができるだろう。


今の姿は氷の天使と表現するべきかもしれないが、暴走している様は混沌に堕ちた堕天使という表現が正しいかもしれない。


「不完全な、『聖纏(アス)』……っ!ぐっ!?」

「余所見してんじゃねぇ!!」


聖纏(アス)』というのは聖獣とパートナーが一体となる現象だ。ハクとマグナも使えることは使えるが最後の切り札としてだが。


『聖纏』は身体能力を大幅に上昇することができる。だが、ソフィアの場合は不完全だ。本来なら天使の様な美しい姿の筈が左右対象だと分かりやすいほど翼の大きさが全く異なり透き通っていた氷の色も濁っている。その色はソフィアの精神を表しているかの様で怒りに塗り潰されているのがわかるだろう。



そして、ソフィアは不安定な力を解き放とうとする。空中には氷の刃が無数に出現し、放たれようとしていた。



が。




「ソフィア。」



何者かがソフィアを抱き寄せていた。


「『……ぁ……ぁ……ぁぁ』」


右腕を失いながらも苦痛の表情をせずに微笑んでいたハクがソフィアを抱き寄せていたのだ。


『「ハク……ハクぅ!!!」』


抱き返した反動で斬られた腕が痛むのか少し顔をしかめるが子供をあやす様に左手でソフィアの頭を撫でながら落ち着かせる。


すると氷で生み出された翼は崩れ砕け散り、その氷の破片達は二人を美しく輝かせていた。ソフィアの中からアイズが飛び出すと糸が切れたようにハクに倒れてしまう。不完全な『聖纏』で魔力の消費が酷かったのだろう。だがそれをハクが左手で抱え込んだ。


「ソフィア、大丈夫だ。後は俺に任せろ。」


大粒の涙を流しながら頷くとハクはソフィアを強く抱き寄せ、ミルとクレハの元へと向かおうとするがデュランダルを持つ太った男が襲いかかってくる。その男の顔は酷く腫れ上がり出血をしていた。


ハクが右腕を切断された瞬間に無意識て殴り飛ばしていたのだ。先程まで気絶していたのだろう。

しかし振られたデュランダルは二人には当たらず白い大狼に変化したディオンによって生み出された光の刃で相殺していた。


無事に辿り着くとミルとクレハは敵を薙ぎ倒すと二人に近寄っていた。


「ハクさん!大丈夫なんですか!?」

「出血が酷い、早く止血しなければ!」

「後でいい。それよりソフィアを頼む!」


ソフィアを離そうとするが力無く服を掴む。手は震えていた。力が上手く入らないのだろう。だが必死な表情をしながらハクを離そうとしない。


「ハク……」

「大丈夫だ……アイズ、いるか?」

『はい、ソフィア様を救っていただきありがとうごさいます』


アイズはソフィア同様に魔力を消費し酷く疲れきっていたのだ。だがハクはアイズにあることを頼む。


「すまないが……これを凍らせてくれないか?」


そう出したのは血だらけの右腕だ。


『このままで凍らすのは……』

「私に任せるんだ。『創造(クリエイト)(ボックス)』!!!」


クレハの手から長細い箱が生み出された。その箱に血だらけの右腕を入れ箱を閉めるとアイズが氷らせる。


「これで大丈夫だろう……って、おい!ハク」


クレハはディオンの元へと向かうハクを呼び止めようとするがソフィアの手からすり抜ける様に駆けていった。




~~~~~



「すまない、待たせた。」

『構わないさ。でも、あの剣中々にやっかいだよ?』

「それは大丈夫だ。ディオン、『武器化』だ」

『うん!』


そう言うとディオンは純白の太刀に変わり左手で持ち正面に構える。


「くそっ、くそぉ!この小娘がっ!!」


ブヒブヒと息を切らしながら黒い鎖に巻かれたデュランダルを振り回す男の動きは素人同然ではあるが一撃一撃の振りが衝撃を放っている。


それをハクは太刀(ディオン)で一撃を綺麗に捌いていた。


「シッ!」


弾き返した瞬間に巻かれていた黒い鎖に一閃を放つ。そして。


バギィィイン!!!


デュランダルに巻かれていた黒い鎖は縄が切れたように落ちてしまう。するとデュランダルは白く発光し本来の姿へと戻っていく。


刀身は白くなり黄色と青の線の紋様が交互に合わさっている。形は両手剣の様な大剣であったがブレイドの様に全てを狩り斬る雰囲気を醸し出していた。


「ターブ、それを捨てろぉ!!!」


マグナと戦闘を繰り広げていたリーダーの男は太った男、ターブに叫ぶがもう遅かった。彼がデュランダルを持っていた手から腕までが、破裂してしまったのだ。



「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」


破裂したのと同時にデュランダルは重々しく地面に突き刺さる。


そしてデュランダルは自我を取り戻してこう発していた。























『oh!やっと黒い鎖の呪縛から解き放たれたデス!!ホント無理矢理とか強姦ものじゃないデスカー!!ホワイトヘアーなガール、ありがとデース!!!』







デュランダルが本来の姿に戻りました!



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