頼み事
がんばりましたー!
さて、今回はちょっとシリアスかな?
では、どうぞ!
「……えぐっ、……ぐずっ、……」
『いやー、ごめんごめん。まさかそんなに泣くなんて思ってなくてね?』
結論から言うとハクは拭いても拭いても涙が止まらないほど泣いてしまった。余程怖かったのだろう。今は指で涙を拭いながらも大分落ち着いていた。その頭にはクトゥリナがよしよしと撫でているがドSなのか恍惚とした表現をしていた。
その表情を見てハクは睨み付ける。
「何、だ……。」
『うん?男の癖に女の子の様に泣くのが可愛らしいなってね?』
「うぅ……」
さらに泣き出しそうになってしまう。しかしそれを我慢してハクはクトゥリナに問う。
「ここは、何処なの?」
『あー、此処は僕が作り出した精神世界だよ。君には言っておきたい事と頼みたい事があってね』
「じゃぁ、それを早く言ってよ……」
『君の反応が面白くて忘れてたんだよ』
そんなことは置いといてね、とクトゥリナは真剣な表情に変わる。
『君に言っておきたいのが一つ、それはあのおデブさんが持っていた聖剣デュランダルの事だよ。君は彼、というよりデュランダルに斬られて右腕を失ったんだよ。……あ、今はこの精神世界ではちゃんとあるから気にしないで。』
その事実に驚きはするが落ち着いて頷く。
『で、君は聖剣について何処まで知ってる?』
クトゥリナの問いにハクは難しそうに考えようとするがそれを振り払い簡単に答えた。
「聖なる力を宿す剣……超自然的な現象を起こす剣か?」
『うん、まあまあだね。聖剣が自ら主を決める事も知ってるよね?』
「ああ」
『じゃあ、無理矢理使用したらどうなると思う?』
「何ともならないんじゃないか?」
クトゥリナはやれやれとあきれた表情で顔を左右に振るのだが思わず殴りたくなってしまう気持ちを抑え黙って続きを聞く。
『正解は、無理矢理使おうとした使用者を殺しにかかろうとするんだよ』
その問いにハクはギョッとしてしまう。
「そうなのか?」
『うん、そうだよ。本来ならデュランダルを持っている彼も通常なら殺されてもおかしくはないんだよね』
「それはどういう?」
『わからないかい?デュランダルに巻かれたあの黒い鎖のせいだよ。そのせいでデュランダル自身の自我と本来の力を封印されているんだよ、ヘルちゃんもね』
「ヘルちゃん?」
ヘルちゃんとは誰の事かわからないハクだったがクトゥリナはああ、と言うと誰かを教える。
『ヘルちゃんはヘルクガムのことだよ。』
「……何で親しい読み方なんだ?」
『何でって、ヘルクガムの最初の主は僕だからだよ?まあ、それはさておきね。あのデュランダルは力を封印されているとはいえ強力なのは変わらない。正直、今の君の状況では難しいね。でも勝てる唯一とも言える方法が一つ、それは……』
「あの巻かれた黒い鎖を裁ち切る、ということか?」
『その通り!』
クトゥリナはハクの頭をよしよしと笑顔で褒め撫でる。撫でられるのを嫌がると思いきや意外とクトゥリナの撫で方は気持ち良いらしくされるがまま撫でられていた。
「で、頼みたい事は?」
『うん、二つあるんだけど……ヘルクガムをあの鎖から解き放って欲しいんだ。』
「当たり前だ」
『よかった。あの子が誰かと魂契約をすればあんな鎖には効果がないんだけどね。お願いするね』
「あと一つは?」
『……あと一つはこの件が終わってからにしよう。今は君のやるべき事、僕が頼んだ事を考えて。』
そう言うと白い空間ーー精神世界が薄れる様に消えていく。そしてクトゥリナも霧がかかったかの様に姿が消えようとしていた。
「な、これは!?」
『もうすぐ君は現実に戻るんだよ。デュランダルに斬られたところからね。黒い鎖は君のパートナーの聖獣君の太刀なら斬れるさ。……さあ、行っておいで。』
「まっーー!?」
そして精神世界からハクが消え現実へと戻るのだった。
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『……面白かったね、あの子は。似てると言っても容姿だけだったね。』
クトゥリナは消えゆく精神世界を眺めていた。その精神世界はクトゥリナがハクと会話をするために生み出した世界だ。また会おうと思えば彼とは会える。
『それにしても何で前世の僕の記憶が復活したんだろ?……神達の悪戯か?それとも何か起ころうとしているのかね?……まさかミスなわけないとは思うけど』
まあ、いいやと一息をつけてクトゥリナは少し苛ついた表情に変わる。
『……まさか『あれ』までも一緒にくっついて来るとは思わなかったよ。本当……ふざけるな、って感じだ。忌々しい!……だが今は自分がやるべき事をやっておこうか』
そう言うとクトゥリナは自分の居るべき場所へと歩み消えて行く。
それが合図かの様に精神世界は消えていったのだった。
次は現実へと戻ります!