人は見た目で判断してはいけない
クレハ視点です。
「うぅ…ここは…?」
瞼を開けると目の前の景色がぼやける。
「知らない天井だ…」
まさかこんな台詞を使うとは思わなかった。本当に此処は何処だ?しかも目の前には金髪の美少女が!実に可愛らしい…。
「あ、気付きました?よかった…。ちょっと待ってて下さいね?」
金髪美少女はテントから出ていってしまう…。ん、テント?…あぁ、そうか助けられたのか…。
横を見ると可愛らしいモンスター達が眠ってるではないか!?白い子狼に緑と水色の二匹の鼬、青い小鳥。
私は近くにいる白い子狼を抱上げる。抱上げた瞬間に目覚め驚いた表情をしていたが構わずもふもふしてしまう。他の子達も目覚め私の方に近寄ってくる。
あー、もうたまらん!
「身体は大丈夫?」
「大丈夫だ。それよりも元気がで…ん?」
今の声は何だ?金髪美少女ではなく子供の様な可愛らしい声だ。
「こんだけもふもふしてたら大丈夫そうだね。」
…まさか、この子狼の声か?喋ってるぞ!…だが、声と容姿が合ってるなから可愛い!
すると誰かがテントの中に入ってくる。
さっきの金髪美少女だ。
「お腹空いてると思ったのでスープ持ってきました。」
この子狼について聞いてみたところ聖獣ということだった。この子狼だけでなく二匹の鼬と青い小鳥もということ。子狼はディオン、緑の鼬はヴァリアス、水色の鼬がスィエラ、青い小鳥はアイズという名だ。話してみたが皆愛らしい声をしているな!
金髪美少女の名前はソフィアというらしい。ランクはBだということだ。歳は15ということだがその年でランクBというのは凄いな。
しばらく話していると轟ッ!!という音が鳴り響く。
私はモンスターが攻めてきたと思いテントから飛び出したのだが、そこには二人の人物が戦闘を繰り広げていた。
「ミルさん!二人共何をしてるんですか!?こんなことしてたらモンスター達が…」
「大丈夫です!既に音と衝撃を遮断する結界を張ってます。それよりSランク同士の手合わせですよ!」
ミルという小柄な少女が興奮気味だ。
戦闘を繰り広げていたのは一人の茶髪の美少年と真白な髪の美少女だ。茶髪の美少年は力強くキレの良い拳と蹴りを繰り出し、真白な髪のクールでボーイッシュな美少女は素早く柔軟性のある動きで攻撃を受け流しながら攻めている。
例えるなら…茶髪の美少年は『剛』で真白な髪の美少女は『柔』だな!あの美少年、美少女がSランクというのは信じられないだろうがこの戦闘を見れば納得せざるを得ない。
だが、これが手合わせと言っていたが本気で戦ってる様にしか見えないのだが…。
「いや~、久々に良い運動したぜ!」
「あぁ…でも汗かいた…。」
どうやら手合わせは終わったようだ。茶髪の美少年は清々しい笑顔だ。その反面真白な髪の美少女は汗が気持ち悪いようだ。
「熱い…」
真白な髪の美少女は徐に上一枚しか着ていない黒のタンクトップを脱ごうとしていた。脱ごうとしているタンクトップの隙間から細く括れのある白く綺麗な肌が見えてしまう。
「ちょっ、ちょっと待った!!」
私は慌てて脱ごうとしている彼女の手を止める。この子は本当になんだ!確かに汗をかいて熱そうではあるが女である君がやってはいけないだろう!
「えっ?」
彼女は驚いた表情をしているが…。天然か、この子は。
「こんな所で脱いではいけないだろう!」
「上半身だけなんだが?」
上半身だけでも大問題だ!そして何故茶髪の美少年やソフィア等は止めないのか!
私が阻止している手を何故か抵抗してるし…。
「だから駄目だろ!君は只でさえ美少女なんだ、少しは恥を持てっ!」
言うべきことはちゃんと言わなければな!…どうした、何故彼女は泣きそうになってるんだ?…それにしても潤んでいる瞳は綺麗で 美しい。本当に可愛いな!
「…俺…男…だから…くずっ…」
「え?」
思わず思考が停止してしまう。…え、あの真白な髪の美少女は男だった?いや、美少年か。…男の娘の方がしっかりくるな!…じゃなくて!男!?
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
わかるわけないだろう!
私の叫びが辺りに響いたのであった。
そして私は心に刻む。
人は見た目で判断してはいけないと…。
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茶髪の美少年はマグナ、真白な髪の美少女…ではなく美少年はハクという名だ。
私はハクに謝罪し許して貰ったが…彼は今上半身裸になっている。真白な髪は撫で肩に流れ、鎖骨まで伸びている。その鎖骨が色気がありそこからの細く綺麗な身体は華奢で女性モデルの様に細く曲線が美しい。撫で肩から落ちる腕は少し力を入れれば折れてしまいそうな位に細く、手は繊細な物に触れ感じられる様に指は細長く芸術的だ。…男だと言わなければ無乳の美少女しか見えないな。…あ、鼻血が出そう。
それにしても他の物達は気にしないのか…いや、マグナやミルは気にしていないがソフィアは顔を真っ赤にしてはいるがハクの身体に釘付けだ。 ハクよ、少し位恥ずかしそうにしないか?堂々としているとこっちが恥ずかしい。
「…そう言えば、あの子レミちゃんが『馬のお姉ちゃん』って言ってましたけど、どういうことですか?」
「あぁ!そうだ、あの子は無事だったのか!?」
ミルの発言に思い出した。私は森狼達から逃げる為にあの子、レミちゃんを洞穴に…。戻ってくると言った筈だったのにな…。何者かに銃で邪魔されなかったら迎えに行っていたというのに…。
「大丈夫です、今はサツキさんという方と一緒に村に帰ってます」
…よかった。本当によかった。あの子には謝らなければな、迎えに行けなくてごめんと。…ミルが言っていた疑問に答えないとな!
「私は馬人族なんだ」
「でも普通の人族の姿ですよ?」
「今はな…よっと!」
私は下半身を馬に変身させる。これは私達一族の特有魔法、具現化魔法なんだ。馬人族は獣族と勘違いされることはあるが実際は人族で下半身を馬にさせて戦うことを主にしている。
馬人族の起源は人族で初めて騎馬をした者達の事なんだ。それを初めて見た他の者達が怪物視して上半身は人、下半身は馬と印象付けたんだ。だが、私達の御先祖様達は長い年月、その印象を具現化魔法で下半身を馬に変身させたのだ。具現化魔法で馬同然の下半身にするには難しいが私達は幼い時からやっている為、無詠唱で簡単にできるのだ。
その説明を終えると可愛い聖獣達が下半身の馬の背に乗ってくる。ちなみに下半身の馬は鎧で包まれているが重くはない。
「そう言えば肩にあった銃弾の傷、どうしたの?」
「レミちゃんをあの洞穴に避難させた後、森狼達を引き連れていた時にな。…何者かわからないが…撃たれた。」
本当に何者かわからない。
結論は出ないのでそれは置いとくことにする。
「髪、切ろうか…」
ハクは自分の真白な髪を弄っている。汗をかいている為に首や肩に引っ付いてしまっているのだ。 見ても分かるが彼の髪は雪の様に真っ白で綺麗だ。…もったいない!
「よかったら私が髪を結おうか?」
私は提案をしてみる。今は髪を降ろしてはいるがポニーテールをしていたのでヘアゴムは予備に多くある。
最初は悩んでいたハクだったが髪を結うことを決断した。
「頼む。」
ハクは私に近寄って背を見せる。…後ろ姿だけでも美少女だな。
早速ハクの髪を結うために真白な髪を触るのだが髪質は絹のようにさらさらでしなやかだ。しかも艶があるのだが…うらやましい。
私を含め女性が求めてる髪質を彼は殆ど持っている。
髪を結うために手ぐしをするのだが…。
「んっ…はぁ…」
このように妙に艶かしい小声が聞こえてしまう。どうやら気持ち良いみたいだが…なんだか髪に手ぐしをするだけでドキドキしてきた。
本当であればこのまま続けていたいが…目の前にいるソフィアの目が怖い為、これぐらいにしておく。ちなみにハクは目を閉じていてソフィアの目を見ていないようだ。
とりあえずポニーテールをしてみた。
「…これ意外といいな」
どうやら気に入ってもらえたようだ。私も自分で髪を結うとハクが見て笑顔を向けた。
「お揃いだな!」
…あ…あぁ、その笑みは反則だ。
仏頂面だったからこその笑顔は…何というか…心に…ズキュンッとする。こんな可愛い弟が欲しいな。
「ハク!私もお揃いですよ、どうですか?」
いつの間にかソフィアもポニーテールをしていた。一瞬反応に困ったハクだったが「似合ってる」と言うと嬉しそうな表情をしていた。…好きなんだろうな~。
何故かミル、マグナも髪を後ろに結っていた。ミルは少し短めのポニーテールでマグナは何とか結うことができていた。
「何でマグナまで?」
「…知らないよ」
どうやら遊びでミルにやられたみたいだ。これはこれで…。
すると聖獣達が異変を感じた様で森の奥にある山を見ていた。
「どうした、ディオン。」
「…うん、何か強い気配がするんだよ。それに何か引き付けられるような…」
他の聖獣達に聞いて纏めるとその気配は二つあるらしい。一つは強い気配を出し、もう一つは引き寄せられるような気配だということだ。
さて、これからどうするか五人で話し合うことになったのだった。