マフィンでも作るか…
途中からハク視点です。
ディオンの咆哮は遠くに離れて捜索していたソフィア、サツキにも届いていた。その方向へと走っていたが、捜索の為に分けた組み合わせはハクとマグナだが二人は人選を誤ってしまった。
「ここは何処ですかね?」
「さぁ…?」
二人は迷子になっていた。
そう、ソフィアだけでなくサツキも方向音痴だったのだ。
ソフィアは今までハクに頼っていたことに後悔し、サツキは只微笑んでいた。
そのソフィア達の周りにはモンスター達に囲まれていた。モンスターランクFの森蛇にランクCの森熊、ランクE森蜥蜴達だ。
ソフィアは薙刀を構えるがその後ろにいたサツキの殺気によって次々に倒れる。その殺気は敵対したモンスターによってのみしか影響しないのでソフィアには効果がなく、サツキが殺気を放ったことに気づいていない。だがサツキが何かをしたことはわかっていた。
「な、何をしたんですか…?」
「あらら、まさか倒れるとは…はいっ!」
手を叩くと倒れていたモンスター達は意識を取り戻した。モンスター達はサツキから逃げるようにその場から逃げていった。それに遅れて上空からアイズが現れる。
「ソフィア様、サツキ様、行方不明だった少女レミ様を発見しました。私についてきてください!」
二人はアイズについて行く中、ソフィアは思う。サツキという女性は何者なのだろうか、と。
~~~~~
ソフィアとサツキが到着すると少女レミを介抱していた。他に行方不明になっているクレハは見つかっていない。話を聞くにレミを逃がす為に森の奥へと向かっていったらしい。
何故ミルがこの森に迷いこんだか聞くと何者かが森へ入っていくのを目撃しそれを注意しようとして中へ入っていったがその者を見失い、自分も森に迷いこんでしまった、ということらしい。魔法を使ってモンスター達の目を欺いていたりしたが、森狼に見つかってしまう。だが、冒険者ギルドから来たクレハが間一髪で現れて救われたということだ。
「…これは世界樹の葉!」
サツキはレミの持っている葉に驚いていた。
世界樹の葉というのは文字通り世界樹から取れる葉のことだ。世界樹というのは巨大な木のことで最大で9000メートルを越えている。世界樹には高さによっては人やモンスターが住んでいる場所もあるらしい。この世界には分かっているだけで3本が存在している。世界樹の葉は世界樹本体から切り離されるとモンスターにとって拒絶する成分を放っているらしいが、その葉のお陰でモンスター達に襲われずに済んだのだろう。ちなみに世界樹の葉は通常の木の葉の様に簡単に取れる事はなく聖剣や魔剣等でも切れないらしい。だがある決まった時期に葉が抜けるのだがそれでも数十枚位。抜ける葉は枯れているものだけでなく余分な葉を無くす為に若い葉を落としているとも言われている。枯れた葉は通常の葉の様になる為、同じ様な効果は持ってはいないということだ。
サツキはハク達にある提案をする。
「この子は私が責任を持って村に送ります。熱もだいぶ治まってはいますが一時的なものでしょう。皆さんはもう一人の行方不明、クレハさんの捜索をしてください、恐らくこの森のさらに奥にいると思います。…あぁ、大丈夫ですよ。村には魔法でマーキングしていますので…。では気をつけてくださいね!」
サツキはレミを抱えると一瞬にして姿を消した。呆然と皆はしている中、マグナはハクに尋ねた。
「…なぁ、気配がもう無いんだけど」
「…もう、村に帰ったのか…?」
ハク達はもう一度捜索をするがクレハを見つけることはなかった。サツキが言った通りにこのさらに奥にいる可能性は高い。
ハク達は別行動ではなく集団で森の奥へと進んでいったのだった。
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森の奥へ俺、ハクとソフィア、マグナとミルと一緒に進んでいた。
奥は密林になっていて注意して進んでいても蔓が足や手に絡まってしまう。ハクはそれが嫌なのか元の小さな姿に戻り服の中に避難していた。ヴァリアスとスィエラも同様だ。アイズはソフィアの肩に乗っている。
「あふっ!?」
今、前に進んでいたミルが蔓に足を取られこけかけた。彼女は皆に比べ小柄で手足がか細い為か蔓が絡まりやすいのだろう。
…またミルが蔓に絡まったのだがどうしたらあんな風に絡まるのだろうか?
身体中に蔓で絡まっているのだが、太股や腰、胸の部分にも絡みつきエロい事になっている。
ミルは必死で蔓を解こうとするが逆に色々と食い込んでしまう。
「だ…だめぇ…」
とりあえず腰にある片手剣で蔓を切る。ミルはお礼を言っていたが…こっちがお礼を言いたいぐらいだ。…いいものを見せてもらったからな。ありがとう。
ふとソフィアと目が合うのだが…何だろうか。微笑んではいるが目が全く笑ってない。…仕方がないだろう。俺だって男だ。あんなエロい出来事を見てしまうのが男の性だろう。
同意を求める目をマグナに送るのだが頭にチョップされた。何故だ?
しばらく進んで行くがソフィアの成長に驚きを隠せない。襲ってくるモンスターはランクCだがアイズの力を借りずに倒すことが出来た。マグナは体術で、ミルは魔法で撃退をしている。マグナの体術を例えるなら『剛』だろうか。中々面白いが力比べしたらマグナの方が上だ。だが、速さでは俺の方が勝ってると思う。…是非手合わせしてみたいものだ。
しばらくすると道は開けてはいるのだが複雑に入り組んでいる。なのでソフィアには注意しておかなければならない。俺はソフィアの腕を掴み引き寄せて言っておく。
「ソフィア、傍から離れるなよ」
まあ、アイズがいるから大丈夫だとは思うが一応釘を刺しておく。方向音痴だからな。
それにしてもソフィアの様子が変だ。顔を真っ赤になってるし肩も震えてる。…風邪でも引いたのか?
「おぉぅ、熱いねー!このこの~」
マグナが肘をつついてくる。地味に痛いが何だ?何なんだ?
「いいですねー。私的には『いいからこっちこいよ』とか『駄目、離さない』とか言われたいですよ!ソフィアさん、さっきの台詞にキュンキュンしましたよね!?」
何だ?ミルはニヤニヤしてソフィアを見ている。キュンキュン?病気か?…村に帰ったら医者にみてもらったほうがいいな。
…それにしても皆さん、緊張感ないな。クレハさんはまだ見つかってないし…。
そんな事を思いながら進んでいると湖のある広場に出る。その広場には苔のある岩が多くあるのだが只の岩ではない。この岩はツナードと呼ばれるモンスターでランクはBではあるのだが普段は温厚でこちらから攻撃を仕掛けなければ襲っては来ない。今はドーナッツ状に眠っている。それは上から見てみないと分からないが…。ツナードは大きい身体で首長竜のようで他のモンスターには襲われる事も滅多にない。
「…!?」
服の中にいたディオンが何かに気付いたのか服から出て近くに寝ていたツナードに近寄る。何やら話しているとその背中に飛び乗った。
「ねぇ!いたよ!この人がクレハって人じゃない?」
そのディオンの言葉にツナードの背に乗り下を見るとまるで守られている様に人族の女性がそこにいた。マグナとミルはギルドから依頼を受ける時にクレハの写真を確認していたらしくこの人で間違いないと言っていた。
黒髪にポニーテールに褐色の肌、服装は騎士という感じだ。彼女の身体にある傷はどれもたいしたことは無いと思っていたが肩に銃に撃たれた後があった。応急措置はしているようだが完全には出来ていない。おそらく片手でやったから甘い応急措置になったのだろうな。
ツナードが重そうに鳴いていたので場所を移し治療を開始する。その為には着ている装備を外さなければならない。鎧の下には服を着ているがモデルの様なスタイルで巨乳だ。…Gはあるだろう。顔も端整な顔立ちで美人だ。俺は治療術、ミルは回復魔法を行う。
何とか治療は終わったがもう日が暮れていた。俺達は此処で野宿することにする。俺が背負ってきたリュックサックからテントを2つ出しそれを俺とマグマで立てた。ちなみに折りたたみでコンパクトサイズなので荷物の邪魔にならない素晴らしいテントだ。
「夕食は任せろ!」
マグナは自信があるみたいだ。手に持っていた黒いアタッシュケースはどうやら料理をするための料理器具と様々な香辛料が入っていたのだ。鍋やフライパン等はリュックサックに入っている。携帯食料も多く入って…凄いなこいつ。
「ただいま戻りました!」
ソフィアは聖獣達と共に野菜や果物を持ち帰った。食べられるかどうかはマグナとミルが判断していた。マグナは数々の食材を見て扱っており、ミルは魔法で毒があるかどうかわかるということだ。
「これで大丈夫ですよ」
「よし、腕がなるぜ!」
マグナは料理の支度に取り掛かり、ソフィアとミルは女性陣テントに眠っているクレハの介抱をしている。
さて、俺は…マフィンでも作るか…。
ハク
趣味…お菓子作り、トレーニング、召喚獣の毛繕い、睡眠
ソフィア
趣味…ハクの観察、ハクの匂い嗅ぎ、ハクの使用済みタオル等集め等…
マグナ
趣味…料理、裁縫、洗濯、香辛料集め、料理器具の手入れ
ミル
趣味…読書、観光、???、ファッション