発見
「ふかふかでぬいぐるみみたいです!」
ミルはディオンを抱えながら捜索していた。ディオンはされるがままにもふもふされているが別に嫌な訳ではない。
「それにしてもサツキさんって何者なんですか?悪い人ではないことはわかるんですけど…何というか只者ではない雰囲気を感じましたし…」
「…本当に何者なんだろうね?」
サツキという盲目の女性は本当に計り知れない。だがその事は置いておく。
更に奥の方へと捜索していると草むらから数匹のモンスターが現れる。森狼だ。その中に一際大きい森狼がいる。あれが森狼主だろう。
「森狼に森狼主!?」
ミルはディオンを抱え警戒している。
じりじりと近づく森狼達にディオンは呼び掛ける。
『あのー、ここらせんに人が通らなかった?二人くらい…。知ってる?』
しかし森狼達は唸っているばかりで先頭にいた森狼が襲いかかった。
「そうくると思いましたけどね!魔法壁!」
目の前に魔方陣が現れ森狼の攻撃を防いだ。そして続けて魔法を展開する。
「魔法結界!」
ミルの足元に魔方陣が発動すると見えない壁が現れる。次々に襲ってくる森狼達の攻撃は魔法結界を壊そうとするがびくともしない。
『ねぇ、話しだけでもいいから聞いてくれない?』
森狼達と話そうとしていたディオンだが突然オーラが激変する。森狼達はディオンにこう言っていたのだ。
『すっこんでろ、クソガキ!』
『黙れ、真白野郎!』
『消えろ、チビ!』
このようなことを言っている森狼達だがこの小さく真白な狼が聖獣だと思わないだろう。
「ごめんミル、下ろして…」
「う、うん…」
ミルはディオンを下ろすと森狼達へと近づいていく。ちなみに結界は外からは入れないが内から外へは行けるみたいだ。
ディオンの身体が光輝く大きな白狼に変化した。森狼達よりも比べ物にならないとしなやかな身体付きで毛並みが美しい。森狼達といえばディオンの威圧に当てられ平伏していた。本能で敵わないと思ったからだろう。
『…質問の問いに答えろ』
森狼達は洗いざらい話し出す。話し終えた後、森狼達はディオンから一刻も逃げたかったのか森の中へと消え去っていた。
「二人の行方はわからなかったけど、ここから少し離れた場所に何かあるみたいだ。モンスターがその場所を嫌がってるみたい…って聞いてる?」
「はっ!…まさか、ディオンさん?」
声は勇ましいが本質はディオンと同じだ。
「この姿は本来の姿だよ。でもこの大きさよりいつもの小さい方がないかと都合がいいからね…。さぁ、背中に乗って!」
ディオンはミルが乗りやすいように伏せる。
「いいんですか?」
「ん?全然いいよ」
ミルは発動していた魔法を解除しディオンの背中に股がる。大きくなったディオンの毛は柔らかく、そしてしっかりしていた。こんな抱き枕があればな…と思ってしまうミルだった。
ゆっくりとディオンは立上がり森狼達が言っていた場所へと駆けていった。
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森はざわめきそこに住まうモンスター達は容赦なく襲ってくる。どのモンスターも殺気を丸出しにしていた。
「これが通常か、それとも…」
襲ってくるモンスター達の殺気はハクにとって大したことはない。逆に殺気を放つと尻尾を巻いて逃げてしまう。
しばらく歩いているとマグナと合流する。
「おっハクか、どうだった?」
「いや、全くだ。」
「そうか…。あちらさ見つけてるか?」
「どうだろう。…最悪の事態も考えた方がいいな…」
望みが薄い事はわかってはいるがそれでも可能性はあるのだ。
「マグナー、はっけ~ん」
「ハクー、みっけ~」
木からヴァリアスとスィエラが飛び降りてくる。
「おう、どうだった?」
「全然みつかんな~い」
「ないない~」
どうやら手掛かりは無かったようだ。ヴァリアスとスィエラも広範囲で捜索したらしい。ハクとマグナもこれ以上は無いもないと判断し、一度全員と合流するために駆けていったのだった。
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森狼達に教えてもらった場所に舞い降りたディオンとミル。彼等の言っていた通りにモンスターらしき気配は一つもない。ディオンはこの違和感を感じたのか辺りを捜索しようとする。
「ふ、ふへぇ~…」
ディオンの背の上にミルはぐったりとしていた。駆けていく速さに酔ってしまったのだろう。しかし酔っていても落ちないようにしっかりとしがみついていた。ディオンはゆっくりと伏せるとミルは少々ふらつきつつも背中から下り、深呼吸を二度行う。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫…ぅぷっ」
しばらくするとミルの酔いも治まり辺りの捜索を開始する。ミルも違和感に感じとりそれを辿っていくと洞穴を発見する。
「これはっ!」
洞穴に駆け寄ると結界に行く手を阻まれてしまう。
「これは…結界?」
「みたいだね…ん?洞穴に人の気配がする!…これは…子供!ミル、この結界なんとかなる?」
「やってみます!」
ミルは結界に触れるが成功するかは分からない。最悪ディオンが無理矢理抉じ開けるかことになるが、どうなってしまうかはわからない。
2~3分程格闘していると結界の解除に成功する。洞穴に入ってみると一人の少女が倒れていた。ミルは少女の額に手を当てる。
「…すごい熱!」
少女は発熱を起こしていた。悪夢に魘されているように眠っている。とりあえず少女を運び出そうと洞穴から出るが何やら騒がしい。
外は森狼達に囲まれていたのだ。森狼や森狼主が約100はいるだろう。その中心には森狼王がいた。森狼王はモンスターランクAであり大きさはディオンより大きい。だが、ディオンは森狼達へと前に出る。
そしてディオンは勢いよく咆哮を放った。その咆哮は大気が震え、大地が轟く。
正直、あっけなかった。
森狼や森狼主達は吹き飛ばされたかの様に逃げ惑い、森狼王も仲間を見捨て逃げ去っていった。ミルと少女には被害が出ないようにディオンが光の壁を貼っていた。
辺りに静寂が訪れる。
ミルは少女を仰向けに寝かせると傷の手当てを行い、回復魔法を発動した。しかし回復魔法でも熱を治すことはできなかった。だが少し楽になったのか少女は目を開ける。
「ん…誰…?」
その声は弱々しく目は虚ろだった。
「私はミル。貴方は迷子のレミちゃんかな?」
少女は頷く。
すると上空から青い小鳥、アイズがやってくる。おそらくディオンの咆哮に気が付きやってきたのだろう。
アイズはディオンの頭に乗っかる。大きさは違えどディオンだということはわかってるようだ。
「どうしたんですか?その子は…」
「レミちゃんです。皆さんをよんできてもらっていいです?」
「わかりました!」
アイズは再び空へ飛び、仲間を呼びに行った。
「…今ハクとマグナ、ヴァリアス、スィエラがこっちに向かってるよ!」
ディオンは目を閉じ気配を感じ取った。ミルは少女を看護を続ける。
突然レミはミルの袖を掴んだ。
「お願い…馬のお姉ちゃん…を…助けて…」