マグナ・ハーディー、ミル・ガーネット
都市ルールム支部冒険者ギルドのギルドのギルドマスターがいる支部長室。本来そういうところであれば豪華であるか、素朴な感じるのが普通であろう。だがこの部屋はそうではない。暗かったのだ。カーテンも閉められておりただ光るのは8つのテレビの画面とパソコンの様な画面だけだ。その部屋に一人の猫の獣族の女性が入る。彼女は副ギルドマスターであるラウラ・リューエン。元SSランクの冒険者である。その暗闇の部屋にはゲームやテレビを布団にくるまってしている人物がいる。誰もがゲーマーかオタクだと思うだろうが残念ながらこれがギルドマスターであるレッド・スパークスだ。目と髪は桃色で中性的な感じだが、男性である。耳だけを見れば森族だとおもうだろうが森族と妖族のハーフであるのだ。彼はゲームのコントローラーを片手で操作しもう片方の手でキボードを打っていた。ラウラは部屋に光をつける。
「ギルドマスター、光をつけましたよ。あと、仕事持ってきましたので…」
「働きたくないでごさる~」
「と、いいつつもちゃんとしっかりと仕事をこなす、そんなギルドマスターの事を私は愛して…」
「うむむ、前に本部に召集した時に新たな物語を配信してるとは…!急いで仲間達と一緒に蹂躙するぞ~!」
完全なるゲーマーでありオタクである事を除けばギルドマスターとしては素晴らしい人物であろう。彼は元EXランクの冒険者であり『千舞刃』と呼ばれる異名を持っておりギルドマスターの中では上位の実力者ではある。そんな彼をラウラは好意を抱いているのだが…。
「…。」
「あ、ラウラ。前にルスウェム村には彼と最近来た彼女二人に任せておいたよ?」
「…誰と誰です?」
「Sランク冒険者のマグナ・ハーディーとAランク冒険者のミル・ガーネットだよ。」
「なるほど、確かにクレハ・オーレンスが帰ってきてませんね…。」
「むぅ…連絡があった時には他の冒険者達も依頼に出払っていたからね。職員達も大変だったし…。唯一暇そうだったマグナと昨日来たミルちゃんに頼むしかなかったんだよ。」
「彼等も帰ってこなかった場合は…?」
「直接僕が行くよ」
「行くのですか?」
「うん、だから明日はラウラにギルドを頼むかもしれないからよろしくね?」
「わかりました。」
レッドはゲームを中断して仕事の席へと着き、その横でラウラは部屋から退出する。一人になったレッドは呟く。
「こんな僕のどこがいいんだろうね…?というかこんな時に限って『天鎚』と『不動』がいないの?あの二人はルスウェム村の鍛冶屋でしょうが!…どう思う?我友、織田信長よ。お前は今、何してる?
…確か御茶会と言ってたか?…僕も行きたいな…」
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ハク達が広場に着くと少年少女が二人がいた。広場に向かう途中に話していた冒険者だろう。
ハクはかなりの不機嫌である。その証拠に鍛冶屋の従業員である獣族の男性が酷く怯えていたのだ。理由は簡単。ハクの事を女だと勘違いしていたからだ。それだけで怒る理由にはならないのだがこれまでの旅の中で必ずと言ってよいほど女と間違われ続けていたのだから。居酒屋でナンパされたりしたのだが、その数はソフィアよりも圧倒的に多かったのだ。
ハクは野郎共に「自分は男だ」と言っても信じてもらえず、結果として殺気を放ちその場を凍りつかせた。最後は和解し、ハクが居酒屋にいる人達全員に酒を一杯奢ったのだが…。
「えっと…貴方は女ですか?男ですか?」
そう声をかけたのは魔法使いの服装をした獣族の小柄な少女だ。年齢は13位だろうか。頭と尻尾は栗鼠の獣族だろう。髪は黒と焦げ茶色のメッシュでボブだ。目はくりくりしていて小動物らしい。手には杖を持っている。
「いや、明らかに男だろ」
横にいたのはハクより背の高い少年が見透かした様に言う。年齢はハクと同世代だろうか。髪は茶髪で短髪で服装は冒険者にしてはラフな格好をしている。中々の美形で将来有望だろう。左手には黒いアタッシュケースを持っていた。
「名前は?」
「俺はマグナ・ハーディー。Sランク冒険者で鬼族と人族のハーフだ。」
「私はミル・ガーネットです!Aランク冒険者で獣族と魔族のハーフです!」
ハクはゆっくりとマグナの前に立ち手を取った。余程一発で男だと認識したマグナに感動していたのだろう。ハクの表情は嬉しそうに、そして泣きそうになっていた。その表情を直視してしまうと異性問わず見てしまえば心を打たれてしまうだろうがマグナは冷静に「何だこいつ?」という表情になっていた。ソフィアは羨ましそうに、ミルは「男の娘!マジですかー!?」と小声で叫んでいた。そしてサツキは変わらず微笑んでいる。
獣族の男性は咳払いをする。
「そろそろ移動していいか?」
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「ここが、デファト森だ。大丈夫だと思うが気を付けろよ?」
獣族の男性に見送られハク達は森へと入っていった。行方不明なった少女の名はレミと冒険者の女性、クレハだ。
森へと入っていくと様々なモンスターと遭遇するが殆どが小型で臆病なモンスターばかりだ。先頭にはハクとマグナ、後方にはソフィア、ミル、サツキの順に進んでいた。ディオンとアイズはサツキの頭の上だ。マグナはハクに後ろには聞こえない程度に話しかけた。
「なぁ、あの盲目のねーちゃんって何者だ?何か凄いオーラを感じるし」
「いや、わからない。でも只者ではないくらいしか…」
チラリとサツキを見るが盲目であるがしっかりと歩いているし相手が何処にいるかわかっているようだ。ハクとマグナは無意識にこの女性、サツキを敵に回してはいけないと感じてしまう。
一方サツキは頭の上にディオン、アイズを乗せながら何か言いたそうにしていた。それに気付いたソフィアとミルが尋ねる。
「どうしたんですか?」
「どうしたんです?」
一瞬躊躇ってしまうのだが決心して口を開ける。
「あの、マグナさん。その服の中にいる二体の鼬って聖獣ですか?」
「「「えっ!?」」」
全員が足を止め驚く。ディオンとアイズもだ。
マグナの服の中から二匹の鼬が顔を出す。
「何でわかったのー?」
「不思議ー!」
それぞれを可愛らしい声を発すしている。マグナは頭をかいて説明をする。
「あー、俺のパートナーだ。緑色がヴァリアス、水色がスィエラだ。」
「「よろしくー」」
「凄いです!二体の聖獣にお目にかかれるなんて…」
ハクとソフィアはサツキの頭の上にいるディオンとアイズを見ていた。
「まさか…」
サツキの上からハク、ソフィアの肩に飛び乗る。そしてマグナとミルにディオンとアイズの紹介をした。
「上手く気配を消していたと思ったのにー」
「僕らはわからなかったよ?」
「そうかなー?」
「サツキ様が別格なだけですよ」
聖獣同士だからなのかディオン、アイズ、ヴァリアス、スィエラは仲良くなっていた。ヴァリアスとスィエラは余程の自信があったらしい。
とりあえず捜索の話に戻り、話し合った後上空からアイズが、ヴァリアスとスィエラは先に捜索する。ソフィアとサツキ、ミルとディオンと別れて行動することになった。ハクとマグナは個人で捜索することとなったのだった。