被害者逆転 3
不老系の存在は知っていたらしい。どんなに未成年者に見えても一応成人だということはわかってもらえたらしい。
性別は不詳だが、
とにかく一度署に戻り、準備を整えてから出直すということで話はついた。
忠は鑑識に脅迫状を持って行って鑑定を頼んだ。
それから一般警察のほうにも出動を頼まなければならない。
今回は被害者が怪物で、加害者が普通の人間の可能性が高い。
そうなると普通の警察の仕事になるのだ。
モンスター課が逮捕するのは怪物化した犯罪者だけなのだ。
「それでどうなんの?」
田中明が書類をさばきながら、たずねた。
モンスター課は忙しい時にむらがあり、今は結構暇だった。
「とりあえず捜査三課と合同で、捜査に向かうことになるな」
さして重要ではないと思われる脅迫はそっちに回す。
「殺すって書いてあるけどねえ、こういうはったりはよくあることだしねえ」
田中明は木のない顔で、脅迫状のコピーをもてあそぶ。
「で、こっちは誰を出すの?」
「お前」
あっさりと佐藤忠は答えた。
「人型警察犬、こういう時に役に立たなかったらいつ役に立つ気だ?」
田中明の嗅覚は確かに警察犬と渡り合えるほどある。その嗅覚を利用して犯人を嗅ぎだすことも不可能ではないはずだ。
「もし、劇団内に犯人がいたら、お前が行けば一発だろう」
その通りなので何も言えない。
「劇団員は全員怪物化してるんだよな」
「その可能性も考えてだ」
劇団員同士のいざこざでああいう脅迫状を描くに至ったとすれば、相手が買い部嫁している以上逮捕するのはモンスター課でなければならない。
「矢駄ねお役所仕事は」
「手を抜いているようで妙なところでややこしくしてるんだよな」
佐藤忠もそう呟いた。
田中明は劇団に向かう。
パトカーには捜査三課の方たちも同乗している。というより、捜査三課についでに連れて行ってもらっているというほうが正しい。
当然三者の間に会話はない。
基本的に田中明は軽いノリで生きている。
刑事になれるからというだけの理由で警察に就職したことにもそれは表れている。
しかし、モンスター課という組織が設立され、怪物化はすべてそちらに、そして、怪物化は全人口に比べてかなり少ない。
結果として怪物化になれていない警察官というものが出来上がる。
思わぬ形で噴出した弊害だった。
「いい天気ですねえ」
そういってみたが、相手は黙りこくってそっぽを向いている。
アメリカで黒人公務員が出始めたときこんな思いをしたんだろうか。
そんな的外れなことを考えていた。




