被害者逆転 2
小学校の体育館ほどの広さ、その上に舞台がある。
舞台の上では何事か打ち合わせの真っ最中らしい。
「どうも、モンスター課です」
佐藤忠がそう名乗った。
「ああ、先日お電話いただいた」
そういって舞台から降りてきた男性はおそらく佐藤翔の実年齢ほどの年齢だろう。
「アンケートですよね」
長い髪を後ろでくくり多少のっぺりぎみだがそれなりに整った顔立ちのその男はアンケートの入った封筒を受け取る。
「あの、佐々木さん、モンスター課って警察ですよね」
舞台に立っていた年若い少女がそう言って舞台から飛び降り、佐藤にしがみついてきた。
「あの一体?」
「これ、見てください」
「あ、新藤さん、どうせただのいたずらだし警察を介入させることは」
「何言ってるんですか、何かあったら遅いんですよ」
話が分からず茫然としている佐藤を置き去りに周囲の人間が二手に分かれてもめ始めた。
新藤という少女はどうも高校生くらいに見えた。もっとも翔の様に成長が止まっている可能性もあるが。
「あの、警察ですよね」
新藤嬢はそう言って、手の中の封筒を差し出した。
慌てて佐藤忠はポケットからハンカチを取り出す。そのハンカチの上に封筒を置いてもらった。
「ええと、これは何?」
どうやら犯罪の証拠らしい。忠は封筒をハンカチで丁寧にくるみこみながら尋ねる。
「脅迫状です」
「なるほど、じゃあ、聞くけど、誰と誰が触ったかな」
舞台に立っていた数人が手を挙げた。
「うん、それじゃ、後で指紋採取セットを持って出直してくるよ」
「私たちを疑うんですか?」
「違うよ、関係者指紋と関係者じゃない指紋をより分けるためさ、例えば泥棒に入られたお家で、その家の人の指紋を採らせてもらえないと、犯人の指紋をより分けられないだろう」
子供に言い聞かせるように佐藤忠は説明する。アタッシュケースからビニール袋を取り出し、翔に開いてもらい、ビニール袋を密封してからアタッシュケースに戻す。
「それで、これは何?」
「脅迫状」
返事は一言だった。
「何よ」
軽く眉をひそめただけの忠に新藤嬢は気色ばむ。
「いや、うん、脅迫状を送るだけで十分犯罪だし、ネット上で殺人予告をしただけで捕まるから、たとえいたずらでもそういういたずら自体が犯罪なんだから」
噛んで含めるようにそう説明するとなんとなく納得していないような顔で新藤嬢は腕を組んで仁王立ちしている。
「届いた脅迫状はこれだけ?ほかにある?」
「以前三通届いたけど、捨てちゃった」
まくし立てていた新藤嬢の陰に隠れるように小柄な少女というには党の立ったおそらく忠と同年輩の女性が答えた。
「わかりました」
忠はアタッシュケースから今度は警察専用携帯を出し、モンスター課の上司に連絡を入れた。
「そういえば、なんでこの子ついてきてるの?」
そういって新藤嬢が指さしたのは翔だった。公務中の警察官がなぜ中学生を連れ歩いているのか。
そう目は語っていた。




