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その影は何の影か (夕焼け、華麗なる、化け猫)
*200文字小説です。
鮮やかな夕焼け色に世界が染まっていく中、僕は塀の上を華麗に跳ぶ、一つの影を見た。
その影は確かに猫の形をしていたが、猫では無かった。
猫という枠組みから大きく跳躍した存在。
俗に言う、化け猫だと、僕は直ぐに気づいた。
何故気がついたのかはわからない。
それは人生に悩み絶望する僕を嘲笑うかのように、どこまでも残酷で、美しく、僕の瞳に焼きついた。
その時の僕はきっと、死んでいたのだ。
生きながらにして、死んでいた。