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夢追-ユメオイ-

流血表現があります

ダメな方は回れ右













 幼いころ、暗い小路を進んだとき、いつしか離れにたどりついていた。ほとんど使われることのない、締め切られた離れは時たま祖父が知らない客を招き入れていたらしいが、記憶にない。

 中は六畳と少しの小さな部屋で、簡単な押入れもあった。その押し入れでかくれんぼをするのがその時の、自分だけの、密かな流行りで。

 けれど、そんな場所があることは中学に上がると同時くらいで忘れていた。







 ただただ愕然としていた。離れの入り口を開けっぱなしにし、久しぶりに入ったその中の、押入れを開けたその状態で、ただただひとり立ち尽くす。静かに(したた)る水音と、虚ろな目でそこにいる人物――双子の弟に。

「×××…?」

 問いかけに反応するはずもなく、震える手を伸ばしてその頬に触れた。冷たくひんやりとして、少しざらつき、ぶよぶよとした彼の頬。

「×××?おいっ×××?!」

 ここにきて初めて“死んでいる”ということを認識した頭は恐怖よりも、悲しみよりも、何よりも先に“憎悪”に取り憑かれ。大切な弟…たった一人の肉親は今、目の前で、すでに失われていた。


 首から下を幾度となく切り刻んで刺し抜かれ、真っ赤に染まった弟をこの腕に抱きしめながら。声もなく涙が流れ、弟越しの押入れの暗い壁を見つめ、見つめ―――


 睨み付けた。































「見ぃつっけた♪」


 耳の真横でした声に、まるで金縛りにでもあったかのように全身が硬く強張る。同時に両の二の腕をがっちりと掴んでいる手に気付き、言い得ぬ悪寒にぞくりと震えた。

 けれどそんな意思に反して体は勝手に行動を取る。

 振り向きざまに掴まれたままの腕を大きく振りかぶり、しかし本来なら肘が捉えるであろう相手の顔はそこになくて。

 体ごと振り返るが後方に人影はない。


 そう、誰ひとり。



 不気味さに一歩後退(あとじさ)り、その背に何か(、、)を捉えた。

 そして次の瞬間には強く強く抱き(すく)められる。


 ぎゅぅっとぎゅっと抱き締められ、耳の横、見えないそこで、嗤う気配。




   「もう、逃がさない」




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