第2話
私が彼女に会ったのは、まだ私が幼く、彼女もまた、大人というにはまだ幼い頃であった。
私は物心がつく前に、后妃であった実母を亡くした。
父親は、私の父である前に皇帝であり、親子として会ったことなど無かった。それでなくとも、会うこと自体、少なかった。
さらには、父の側室や異母弟と不仲であった。
彼らには太子たる私が目障りだったので、当然のことだ。私も、別段異母弟に情を感じたこともなかった。
だから、彼女を目新しく思ったことを覚えている。
私のことを家族だ、と言い切った女。
――一体、何の思惑があるのだろうか。
――私の祖父が起こした反乱によって死んだ、自分の父親の仇を討つつもりなのか。
しかし、それも仕方のないことだと思った。
彼女は、私の祖父の反乱が無ければまだこの国の一の姫であったはずだ。
今、彼女はかつての王家の姫として利用されている。――彼女の両親と弟達を殺し、王位を簒奪した男の息子に嫁がされたのだ。
嫁いだ男とは歳が離れている上に、すでに寵愛を欲しいままにする側室がいる。妹達のためとはいえ、王家の姫にとって屈辱はいかばかりか。
しかし、それにしては視線に憎しみを感じない。しかも、やたらと私の世話をやこうとする。
彼女については、解せないことだらけであった。