第1話
はじめまして。小説を初投稿しました。音月佳乃と申します。
繰り返しますが、初投稿です。作者の甘えで申し訳ないのですが、多少文章が変でも寛大な心で許していただけると幸いです。
(2016.5.1行間を改めましたが話の筋に変更はありません。)
美しく磨きあげられた回廊を、一人の少年が走っていた。
しかし、女官達がそれを阻むように立つ。
「……義母上の容態は!? 容態はどうなのだ?」
「落ち着いてくださいませ、太子様」
「后妃様のご容態にお変わりはありませぬ」
「どうかご政務にお戻りください」
そう口々に窘める女官達に、少年は苛立ったように怒鳴った。
「嘘を申すな!! 容態に変化が無ければ、侍医達になぜ召集がかかるのだ! ええい、そこを退けッ」
女官達を押し退けようとする少年を、静かな声が遮る。
「いいえ、決して退きませぬ。それが、后妃様のご命令ゆえ」
靴の音を響かせやって来たのは、后妃付き女官の筆頭であった。彼女は少年の前で足を止める。
眉を吊り上げた少年は、彼女を睨んだ。
「不敬だぞ!!」
「承知しております。しかし、例え斬って捨てられましても貴方様をお通しする訳にはいきませぬ」
淡々と女は少年を見据える。
「それが、あの方の望みなのですから」
――今まで、何も望まれることがなかった貴女。
――この命すら捧げましょう。……全ては、貴女の、ささやかな願いのために。
「申し訳ございません。――どうぞ私達を一生怨んでくださいまし」
少年の意識は、そこで薬品によって無理矢理閉ざされた。
彼が憶えているのは、「后妃様崩御」と叫ぶ声と、女達の泣き崩れる音のみである。