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麦わらの女の子
忘れない、忘れられない大切な記憶。
それは暑い夏の日。大切なものを一つ無くした次の年。
こんなにも大切になる彼に出逢った『記憶』。
いつものように、太陽の光を照らし返す白いワンピースを着て、水玉模様のリボンが付いた麦わら帽子をかぶって。森の中を彷徨うように、ただひたすらに歩いていた。
森の中でぶつかるなんて運命のようで。少女マンガみたいだと、一瞬ときめいた彼女に降りかかったのは冷たい一言。売り言葉には買い言葉。その二人はすぐに口論を始めた。
それは間違いなく、最低で最悪の出逢いだった。
だけど、この上なく幸福な、最高の出会いでもあった。
これは彼女の追憶。
夏草向日葵の『最後の夏』の物語。