美味しいカレーの作り方
美味しい料理を前にすると人は言葉を忘れる。そんな話を聞いたことがあるような気もしたけど、今日のお母さんたちはやけに饒舌だ。
「外で食べるご飯は違うわね。お米に甘みがあって美味しいわ」
「良いお米は甘みがあるのね。このお米は誰が持ってきたのかしら」
「飯盒で炊いたお米は、味が違うのよ」
今日は少年スポーツの夏合宿。言葉は忘れなかったけど、今日のカレーは美味しかった。でも、ちょっと僕には辛すぎた。飲み物のお替りをしようとタンクのコックをひねる。……あれ?
「おかあさん、飲み物がもうないよ。ポカリのタンクが空なんだけど」
「……」
お母さんたちのお顔は真っ赤っ赤。
やっぱりこのカレー、ちょっと辛すぎだよね。
粉ポカリを溶かした飲料用タンクと、お米を研ぐための水のタンクを間違えたため、お米が甘かっただけなのに薀蓄たれてしまったお母さんたち。母親たちの会話の流れまで含めて実話です。