第09話 第3節「思い出と共に去りぬ」1
ウモライ国はザディアム国に侵攻を開始した。
前はザディアム国一の英雄ザファロ将軍、20万。中はザディアム国王ナスオ、20万。後は用心深いウィリアム将軍、10万。累加武将数十人。合計50万の兵を率いて、ザディアム国は、モルデス国より一日早く大陸統一遠征を開始したのである。
「た、大変でございます、国王さま!」
兵士が、ザディアム国王ザディアム11世の部屋に、ノックの一つもせずに入ってくる。
「火急の用かな?」
と、しわかれた声で、一人の老人、ザディアム11世は落ち着いて答える。
「ウモライ国がわが国へ遠征を開始しております!その数はおよそ50万と予想されます!」
「何!?」
ザディアム11世は、驚いて立ち上がる。
「い、いますぐモルデス国に使者を送るのじゃ、使者を!」
落ち着きのない声であった。
「は、はい。」
「それからウィルソンを呼べ。」
「はっ。」
「お父様、何でございますか。」
すっかり成人になったウィルソン王子が、数人の付き添いを背後に置き、ザディアム11世の部屋に入る。
「ウモライ国が大陸を統一せんと遠征を開始した。そして、その最初の標的がわが国なのだ。」
「はい。」
「ウモライ国にとって、モルデス国を滅ぼすにはここを通るのが最短距離。致し方あるまい。」
「はい。」
「お前は落ち着いているようだが、50万の兵力と聞くと?」
「・・・・・・。」
「それが理由ではないのだが、お前に10万の兵を預ける。モルデス国に援軍をお願いした。モルデス国の援軍が来るまで時間を稼いでくれ。」
「はっ、わかりました、お父様。」
ウィルソンはそれだけ言うと、一礼して部屋から出た。
一方、使者は馬に乗り、モルデス国へ向かっていた。
「あれがザディアム国の首都か。」
ウモライ国王ナスオ21世は、山に登りザディアム国の城を望む。城は四方から山で囲まれており、守るには絶好であったが、敵から城を一望されるほど高い山が多く、それがデメリットとも言える。
「ザファロ。」
「はっ、」
と、ナスオ21世の傍らにいたザファロ将軍が返事をする。
「帝王軍8万を分ける。28万の兵であの城を攻め落としてくれ。」
「はっ、承りました。」
と、ザファロ将軍は返事をし、一礼して下がると、兵士たちが休憩しているところへ行く。
「出陣だ。あの、ザディアム国の首都となる城を、制圧するのだ!皆、ついてまいれ!」
と、一喝すると、兵士たちは立ち上がり、それぞれ騎馬に乗って弓を整える。ザファロ将軍も騎馬に乗ると、
「いさ出陣!」
と怒鳴る。
28万の怒濤の声が、山しゅうに響き渡る。それを見計らい、ウィルソン王子も、10万の兵力を率いて迎撃に行った。
ウィルソンの兵士はウィルソンの騎馬を除き歩兵、ザファロの兵士は全て騎馬、そして兵力の差もあり、勝ち負けは一目瞭然であった。ただ、モルデス国からの援軍に間に合うよう、それだけでウィルソン軍は動いた。
二軍は平原で激突した。まず兵種がものを言った。ウィルソン軍ははじめから不利で然るべきである。
「何、ウモライ国がザディアム国へ侵攻を開始した?」
モルデス45世は、自らの部屋で、ザディアム国から来た使者の報を聞き、驚いて立ち上がる。そして、しばらく考える。
「そこの者!」
「はっ、」
と、一人のモルデス国の兵士が姿を表す。
「モルデス国の遠征を一日早める。全ての兵士に召集命令を取れ!」
「はっ!」
と、兵士は一礼すると、走って部屋から出て行った。それを見届け、
「ありがとうございます!」
と、使者も一礼すると、部屋から出ていく。
「ついに始まったか・・・。」
モルデス45世は、その使者が部屋から出て行くのを見届けてつぶやいた。
「そこにいるのは敵の御大将と見受けたり!」
ザファロ将軍は、敵の中で一人だけ騎馬に乗っているウィルソンを見つけ、槍をウィルソンの方へ向け、ウィルソン目かけて走って怒鳴った。
「ああ!我こそはザディアム11世の息子、ウィルソン・ラヴァルト・ド・ザディアムなり!」
と、ウィルソンも槍をザファロに向けて応じた。
「我こそはウモライ国の家来ザファロ将軍なり!」
と、ザファロ将軍も怒鳴る。
二人の槍が、お互いの首へ向かって行った。
一瞬だった。
一方の首、ウィルソン・ラヴァルト・ド・ザディアムの首は、胴体から離れ、浮遊した。
ザファロ将軍は、その首の根っこを槍で刺して高く掲げる。
「ザディアム国の王子、ウィルソン・ラヴァルト・ド・ザディアムの首、このザファロ・ベラーミグン・ド・レゲが打ち取ったり!」
ウィルソン王子、戦死。




