第43話 第9節「もともと地上に道はない 人が歩いても道にならないのだ」1
ハルスは健治の墓に手を合わせ、それから涙を流し、傍らの治に声をかける。
「行くの?」
ハルスに尋ねられ、治は黙ってうなずく。
「それじゃ・・・。」
治は健治の墓とハルスから離れた。その治の背中を見て、ハルスは妙な寂しさを感じた。簡単な事では償い切れない、何かが、とにかく何かをハルスは失ったように思えた。
「それでは、行ってまいります。」
治はモルデス45世の部屋でモルデス45世に一礼すると、そのまま部屋を出た。治は、モルデス45世の用意した馬車に乗って、匈奴の治める北方へ向かった。
治は正直、このやり方があっているかどうか不安であった。しかし、匈奴の力は強大であり、匈奴を制圧すれば零細勢力の群集はモルデス国に降伏する可能性が大きい。治はそう踏み、多くの家臣の反対を押し切って実行に踏み切った。
その馬車の後ろ姿を眺め、ヴィーナスは思わず呼び止めそうになったのだが、ぐっとこらえて城内へ入る。モルデス45世が尋問をするからと、呼ばれていたのである。ヴィーナスが治の馬車の後ろ姿を見ている姿を、ハルスは陰から歯を食いしばって見ていた。
モルデス45世の部屋の入口でヴィーナスは「失礼します。」と言い部屋に入り、モルデス45世の座っている机の前へ立つ。モルデス45世は椅子から立ち、ヴィーナスにいう。
「そこにかけなさい。」
と言い、自分もヴィーナスの座った向かいのソファーに座る。モルデス45世はヴィーナスに尋ねる。
「君の記憶の中で一番古い物は?」
「記憶・・・。」
ヴィーナスはそうつぶやき、しばらく目をうつろにする。少ししてヴィーナスは口を開く。
「おばあさんに棒をプレゼントされた時・・・。」
「えっ?その棒はプレゼントされたのか?」
「はい・・・、私を拾った時に私が握っていたものよ、と・・・。」
「そのおばあさんの名前は?」
「ラファエル・ル・ド・スイグランといいました。」
「スイグラン?」
モルデス45世は眼を丸くする。
「スイグランといえば、100年も前に滅亡した王国じゃないか・・・!」
「でも、物心ついた時の記憶がそれでしたので・・・。」
ヴィーナスにそう言われ、モルデス45世は悩んだ。なぜ彼女のおばあさんが魔法の事を隠さなければいけないのか、そしてその杖をなぜ引き継がなければいけないのか。
「そういえば、おばあさん・・・。」
ヴィーナスは口を開いた。
「おばあさん、少し変なところがあります。」
「ほう、それは何だ?」
「おばあさんの話す言葉に、不自然に魔法という語句がたくさん入っていました。」
「・・・・・・。」
先ずは魔法というものに興味を持たせようとしたのか、と、モルデス45世は、極端に単刀直入でないヴィーナスのおばあさんにあきれた。
「君の頭の中でいろいろなもやもやはあるか?」
「はい・・・、でもおばあさんに相談できないまま死んでしまいました。」
「死んだのか・・・、では、もしも君が捨て子ではなく、さっきから言っているおばあさんが君の本当のおばあさんだったとしたら、つじつまは合うか?」
「あっ・・・!」
ヴィーナスは眼を丸くし、立ち上がる。
「座りなさい。」
ヴィーナスは座る。モルデス45世はさらに続ける。
「そして、君は魔法使いだ。」
「えっ・・・!」
ヴィーナスはさらに眼を丸くする。脇に治めていた杖が、ぼとりと落ちる。
「その棒は、杖といって、魔法を使う時に使う道具だよ。」
モルデス45世に言われ、ヴィーナスは、落ちた杖を拾う。その様子を見て、そうか、魔法が実在するという事に現実味を帯びさせるために、魔法と言う言葉をたくさん入れたのか、とモルデス45世は納得した。
「では、話は戻るが、」
モルデス45世に言われ、ヴィーナスは杖をしまった。
「君の感じたさっきまでのもやもやとは?」
「はい・・・、実は、おばあさんの子供、私のお父さんとお母さんがある日突然そろって行方不明になってしまいました。」
「ほう?うむ・・・、その名前は?」
「はい、お父さんは、レイジ・タロウ・ド・スイグラン、お母さんは・・・」
「レイジ?」
モルデス45世は、ヴィーナスの話の終わらぬうちに、ヴィーナスに問う。
「レイジ・・・。」
モルデス45世は、窓のほうを見る。これは治にも事情を聞かなければいけない。治の苗字という物である「れいじ」と同じものであった。
「あ、いや、続けて。」
モルデス45世はヴィーナスに言う。ヴィーナスは答えた。
「は、はい・・・。」
第10節を最後に王子の連載を終了します。
とゆわけですw
最終話は、第50話にしておきます。
前回作より少し短いですが我慢してくださいな^^;
次回作は、前もってマンガを描いておいて
そのマンガの内容を下に文章を書く形式にします。
でもって僕はもともと絵が苦手なので
文章書き終わったら即廃棄ですねw
と、次回作の前に、
短期集中連載としてミステリーを書いてみたいと思います。




