第41話 第8節「それだから隠すのだ。次いて恋、フィロストラトス以外」5
イファガラ国王は宮内で捕らえられた。治はイファガラ国王の前へ立ち、話しかける。
「今回の戦いの指揮を取ったのは誰です?」
治が国王に尋ねると、国王は黙ったまま首を振った。
「誰ですか?」
治が、傍らの兵士のもっている槍を国王の首につきつける。
「誰ですか?」
しかし国王は黙ったまま首を振った。
「誰ですか?」
治が再度尋ねるが、国王は黙るのみであった。治は、これやむを得なしと見なし、隣の兵に槍を返して言った。
「牢に入れよ。」
「はっ。」
兵が一礼した時であった。
「いました。」
突然後ろから声がし、治は振り向く。そこには、ハルスが一人の兵士に連れられて歩いて来ていた。ハルスは治の顔を認めると、いきなり治の方へ飛び込んできた。
「何をやってるの!」
ハルスは、治のほっぺたを強く叩いた。
「あたしが捕まったの、全部あんたの所為だからね!」
ハルスは治の顔を足蹴にし、イファガラ国王の頭ごと足で押し倒した。ハルスは足を上げ、治に怒鳴る。
「いい?これであんたを殺す口実が出来たんだから!」
ハルスはそう怒鳴り、それから治の顔をつかみ、しゃがんで治の顔に自らの顔を近づける。
「な、何を・・・、」
治が尋ねるが、ハルスは何も言わない。
「ち、ちょっと、」
しかしハルスはやめようとしない。そのまま・・・、治の唇に自らのそれを押した。
「むぐ・・・。」
ハルスはそのまま顔をぐいっと放し、それから再度治のほっぺたを叩いた。
「怖かったんだから!」
それからハルスは立ち上がった。治も立ち上がる。そして後ろを見る。後ろでは、国王が目を回して倒れていた。
ハルスの部屋は、気まずい雰囲気だった。ハルスはベットに座り、ドアの前に立たせた治をにらむ。
「何であたしを助けない?」
「・・・・・・・。」
治は、答えるすべがなかった。
「何であたしをあんた一人で助けない?」
「・・・・・・・。」
治は口をあける事が出来なかった。ハルスはベットから立ち、ずんずんと治の方へ歩み寄る。
「あたしが今までに読んできた小説では、ヒーローが一人だけでヒロインを助けるという事なんだけと、それはどういうことなの?」
「い、いや、」
「七万の兵を使うなんで卑怯じゃないの?」
ハルスは治の鼻をつんと下から指で押す。
「そ、そんなこと知らなかったから、」
「普通一人で助けるんでしょ?」
「い、いや、だから、」
治がそこまで言うと、ハルスは治のほっぺたを叩く。
「もう・・・、せっかくお金まで払ってお願いしたのに。」
「はい?」
治はそれを聞くなり、一気に表情を変えてハルスの方を見つめる。
「じ、じゃ、これは・・・。」
治がそこまで言うと、ハルスはしまったと言うように手をおでこにあて、それから手を下げて言った。
「い、今のは嘘!」
「嘘じゃないだろ!」
治がそう言うが、ハルスはつかつかとベットの方へ歩み寄り、ベットに座る。
部屋は、違う意味でさらに気まずくなった。
「今回の戦争、ご苦労であった。」
モルデス45世は、将軍たちを集め、一室で上席に立って言う。
「兵たちを休めるがよい。」
「はっ。」
将兵たちは、一斉に起立して一礼した。
「いや、まだ会議は続いている。座れ。」
将兵たちが全員座ったのを確認すると、モルデス45世は一区切り置いて言った。
「今後の戦略はどうするか。」
「はい。」
一人の将軍が手を上げる。
「ヴィラ。」
「はっ。」
ヴィラ将軍は立ち上がり、モルデス45世に進言する。
「北方に大きく勢力を構えている匈奴らとは仲良くすべきです。」
「なぜ?」
「彼らは手怖いからです。」
「禍根を残してもいいのか?」
モルデス45世のこの言葉に、ヴィラ将軍は黙ってしまった。そのまま座る。
「他に意見は?」
モルデス45世が言うと、治は手を上げる。
「オサム。」
「はい。」
治は立ち上がり、発言する。
「俺は、匈奴と結ぶべきと存します。」
「なぜ?」
「今、匈奴では内部から分裂が起こっているときいております。もしこの分裂が小勢力の群衆を全て滅ぼした後も続いているようであれば、俺が一滴の血も流さずに匈奴を屈服してみせます。」
治が言うと、他の将軍たちはびっくりして一斉に立ち上がる。
「発言者以外は控えよ。」
モルデス45世のこの言葉を無視し、将軍たちは一斉に言った。
「こんな少年に任せていいんですか?」
「もし屈服できたとしても反乱を起こすのでは?」
将兵たちの罵詈雑言に、治はしばらく考えてから言った。
「それでは、こちらの手を汚さずに匈奴の指導者をみな殺しにしましょう。」
治の性格好戦的に変わっているかもしれません。
これについての伏線は後でちゃんと説明しますので
安心してくださいw




