第32話 第7節「君の後ろの戦争は勝った 君の前の戦争は」3
「はっ・・・。」
ヴィーナスは、深夜、夜空に月のそびえるころに、ベットの上で眼を覚ました。隣には少女、あまりにもかわいすぎで鼻血を出した少女が寝ている。再び鼻血を出したらどうしようかと、その少女の寝顔から視線をそらす。
「ん・・・?」
ヴィーナスは、部屋の隅で寝ている一人の少年に気づいた。ヴィーナスは、金髪の少女を起こさぬように、そっと少女の体をまたいでベットから降りた。そして部屋の隅まで行くと、その少年の前へ立った。
その少年は、年齢は少なかろうとも多少の貫禄はあると見える顔をしていた。ヴィーナスは、その顔を見てはっと気づいた。その顔は、ヴィーナスにとって、どこかで見たような気のするものであった。これはデジャヴなのか、それとも偶然なのか―――・・。ヴィーナスはしゃがみ、少年の顔へ、自分の顔を近づける。
名付け親。ヴィーナスにとって、名付け親の定義はなかったのだが、自分の名前を決めてくれた人に特別な感情を持っていることは確かだった。しかしそれは一方的だったかもしれない。お互いに。お互いに一方的だったのかな、とヴィーナスは思い、そしてはっと気づき眼を大きく開けた。ヴィーナスはいきなり立ち上がると、その少年の寝顔を見る。
「ひゃふ・・・。」
いきなり後ろから女の子の声がし、ヴィーナスは慌てて振り向く。その少女が起きていたのかと思うと、それは違っていた。寝言だったらしい。窓から差し込む月の光が、その少女の体を照らしていた。それを見て、ヴィーナスは、この少女が自分にとって宿命的な人ではないか、と一瞬感じた。しかしこの心は一時的なものかもしれない。ヴィーナスは、うつむく。
「あんたぁ・・・。」
再び声がし、ヴィーナスは再度顔を上げる。しかしまた寝言だったらしく、ヴィーナスは安堵の息をおろす。それから次に、なぜ少女がベットで寝ていて少年が部屋の隅で寝ているかを考察した。女は、おとなしい。ヴィーナスの持論であった。そして男は荒っぽい。仲が悪いとヴィーナスは感じ、先ほどの考察を撤回した。しかしこれを撤回すると言うことは、この少女が自分の宿命的な人ではないと言うことは、いやしかし宿命的な人かもしれない。そういった顔つきを、この少女は持っていたのである。
「分からない!」
ヴィーナスは、いきなり叫んだ。その声にびっくりし、ハルスも治も起き、ハルスはベットから降り、治も立ち上がる。立ち上がっていきなりヴィーナスの後ろ頭に視線が行き、ついて次に吸った空気が天然のやわらかいにおいがし、治は顔を真っ赤にする。
「あ、あっち行けよ!」
「その通りね。」
ハルスも賛同する。
「こんな男のすぐ前にいたら、バカが移るんだもの。」
「バカとは何だよ!」
治が反芻すると、ハルスはベットの近くの小さなテーブルの上においてあった杖を握る。それを治に向けるまでの間に、治はハルスに向かって土下座をする。
「俺が悪かったんです!」
「へぇ・・・。」
ハルスは、治の方へ歩み寄り、視線の真下に治の頭が来るくらいに近寄ると、治の頭をにらんだままヴィーナスに言う。
「ベットに戻ってて。こいつこれ以上見てたらバカが移るから、ね。」
ハルスがそう言い、杖を構え、呪文を唱えんとした時、ヴィーナスは言った。
「私は、そうは思わない。」
「えっ?」
ハルスは眼を丸くして、ヴィーナスの顔をじろじろ見る。
「だって・・・、あなたにとっては嫌な人でも、私にとっては・・・、調べたいことが一つ増えたから。」
「何?」
「この男の子、どこかで見たような気がするの。」
「えっ?」
「確か・・・、レイジ・・・、」
ヴィーナスがそこまで言うと、治は顔をあげ、ヴィーナスの方を見る。
「何で俺の名前知ってんだよ?」
「えっ?」
ハルスは困ったように顔を真っ赤にする。それから、何かを絞るように怒鳴った。
「り、理由はそれだけじゃないんでしょ!」
「これだけ。」
「嘘よ。」
「嘘じゃない。」
二人はおでこをあわせた。
「出てって!」
「嫌!王様に、ここにいなさいって言われたから。」
「それが口実?」
「口実じゃない!れっきとした理由よ!」
「へー・・・。」
そうしてハルスが横をチラッと見ると、治は立ち上がっていた。
「あんたは引っ込んでろ。」
ハルスは治の股間を蹴り、治を夢の世界へ強制連行すると、再びヴィーナスの方を向く。
「あんた、名前は?」
「昼、言いました。」
「何だっけ、ブタリンゴねえ・・・。」
ハルスがそこまで言うと、ヴィーナスはハルスのほっぺたを叩く。
「やめて。」
「あんたがここにくるから悪いのよ。」
ハルスは、ヴィーナスがハルスのほっぺたを叩いた手を手でつかみ、言った。それに対し、ヴィーナスは、手を引っ張ってハルスの手から抜かして反芻する。
「あんたがここにいるから悪いのよ。」
「それはこっちの言うことじゃないの。」
ハルスが怒鳴ると、ヴィーナスも反論する。
「たいたい、何の話なの?」
それに対し、ハルスは眼を丸くし、当たり前という様に話した。
「あんた、治が好きなんでしょ?」
「勝手に決めないでよ!」
「たいたいね、あんたは、治と手をつないで来たんでしょ!」
「つないでない!」
「つないでた!」
二人が怒鳴りあう傍らでドアが開き、ウィリエが眠そうな顔をして部屋にはいる。
「何の騒ぎ?」
ウィリエが言うと、ハルスが真っ先に怒鳴る。
「こいつが悪いのよ!」
「こいつが悪いのよ!」
ヴィーナスも呼応して怒鳴ると、ウィリエはしばらく考えてから言った。
「とりあえず、わけを話してくれるかしら?」
最近、BooksForgeといいます、
別にとーでもいいサイトをプログラミングしています。
もしも完成したら、もしもの話ですけと、
ここで簡単な説明をしますが、
もし完成する前にあきらめてしまったら、
小説が速く進みます。
どっちを選びますか?
たぶん読者にとっては、
どっちを選んでも自分の運命に変化はないので
どっちも興味ないと思いますか。




