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王子  作者: KMY
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第31話 第7節「君の後ろの戦争は勝った 君の前の戦争は」2

「治、この子を部屋へ案内しなさい。」

 タナトスが退席し、モルデス45世は治に言った。

「部屋って、どこの部屋ですか?」

「ハルスの部屋だ。」

「・・・・・・・・。」

「そうか、まだ喧嘩したんだな。」

モルデス45世は微笑する。

「い、いや、送るだけでさっと身を引けば・・・、」

「ふっ・・・、任せよう。」

モルデス45世にこう言われ、治は「失礼します。」と頭を下げた後、傍らの少女に話しかける。

「行こう。」

「は、はい・・・。」

その少女は下を向きながら云った。

「じゃ・・・。」

「は、はい。」


 ハルスの部屋へ向かう廊下で、治は少女に尋ねた。

「自分の名前は自分でつけないの?」

「あ、あの、名前は他の人がつけるものだと思います。」

「名前・・・。」

反復し、治は上を振り向く。しばし考えた後、急に少女の方を向いて云う。

「俺が決めていい?」

治が言うと、少女は気弱そうにこっくりとうなずく。

「誰でもいいです。名前がないといろいろ不便ですので。」

それを聞いて、治は嫌われたような気がした。しかしそれを振り切り、しばらく考えてから少女に云った。

「ヴィーナス・・・。」

「ヴィーナス?」

「い、いや、君の名前は・・・、」

「何でもいい。クスと呼んでもいいです。」

その少女の瞳の奥には、大きな孤独感が見えた。治はその少女に対し、何も云えなくなった。しかし気を振り絞り、云った。

「き、君は今からヴィーナス、だから・・・?いい?」

よく考えもせずに決めた名前なのだが、名前なら何でもいいという孤独に満ちた顔をして、少女はこっくりとうなずく。

「な、なぁ、今まで孤独なことってあったの?」

「孤独・・・。」

少女は治が尋ねると、ぼうっと上を振り向く。

「確かに・・・、あたしの人生は孤独だったかもしれない。」

そう云うと、ヴィーナスは瞳からぼろりと、涙を流した。その涙を見て、治はヴィーナスの手をぎゅっと握り締めた。


「誰、この人。」

 完全にいきり立っていたハルスは、部屋に入ってきた治の後ろに少女が付き添っていたのに気づき、怒鳴る。

「あ、あのさ、」

治が云うが、ハルスは罵詈雑言を始める。

「何なの、この人は。」

「タナトスを助けてくれた」

「連れてくるだけならそれで十分じゃない!」

「あ、いや、それがさ、」

「何よ。」

「杖を持っていて。」

「えっ?」

ハルスは驚き、立ったままの治の顔を足蹴にして治を倒すと、後ろにいたヴィーナスに声をかける。

「名前は?」

「あ、あの、ヴィーナスと云います・・・。」

「ヴィーナス・・・、いい名前じゃないの。」

「あ、あの、そ、それは・・・。」

そう云い、ヴィーナスはハルスの顔を見上げる。笑顔だった。ハルスはにっこりと、自分を見ていた。しかし問題はその笑顔である。あまりにもかわいすぎで、見るだけで頭がくらっとしてくる。

「ねえ?」

ハルスにさらに声をかけられ、ヴィーナスは何で返せばいいのか分からず、頭に血が上った。

「えっ?」

ハルスはヴィーナスの異変に気づき、ヴィーナスの肩に手をかける。

「あっ・・。」

ヴィーナスは、鼻血を流し、ハルスの手元で倒れた。

「ち、ちょっと、どうしたのよ?」

倒れたヴィーナスの体を、ハルスは揺さぶる。しかし反応はなかった。ハルスは周章てて大きな声で叫ぶ。

「じい!」

ハルスが呼ぶと、部屋に一人の老人が入ってきた。

「じい、この女の子、ベットへ運んで。」

「はっ、」

と、じいは云われたままに、少女の体を抱え、ベットまで運び、布団を体にかけてやる。それから後ろの方を向く。一人の男の子が倒れているのに気づき、じいは尋ねる。

「治様は?」

「様をつける必要はなし。というか治を触ったら馬鹿が移るから、あたしが扱う。」

「は、はっ・・・。」

じいは頭を下げる。

第32話、いよいよ宣戦布告です。

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