第28話 第6節「白馬の変態様」4
「ハルスを放せ!」
治は、ギルモに対して怒鳴り、一歩踏み込む。
「おっと、それ以上近寄ったら、お前のヒロインの命はないよ?」
ギルモが脅す。
「これはただの脅しじゃない、わかったか・・・。」
「ギルモ!ハルスは関係ない!」
「まーた、そんなことを言っておるのかね?」
ギルモは、治を翻弄するように言った。
「ハルス・・・。」
治がハルスの名を言うと、ハルスは言った。
「あんたが代わりに人質になって。」
「はい?」
治は真っ白になった。
「あ、あのさ、この場にふさわしい言葉じゃ・・・、」
「あたしが思っていることをそのまま言ったらいけないの?」
「あ、のさ・・・。」
「お父さんからよく言われたの。嘘は言ってはいけないって。」
「時と場合によってすべきことは違う!」
「雑談はそこまでにしてくれるかな?」
非情な声で、ギルモは治に言う。治はこれからどうすればいいのかという恐怖を覚えた。
「ん・・・?」
一人の男、タナトスは、目を覚ました。
「ここは・・・?」
タナトスは白いベットに寝ていた。ここは木でできた部屋。横には窓があり、部屋の中央には木のテーブルがあり、木のいすがあり、ドアも木でできていた。
タナトスは、傍らを見て誰もいないのを確認すると、起き上がろうとし、背中に力を入れるが、
「ぐっ・・・。」
背中を起こそうとすると、体中に激痛が走る。
「ぐ、ぐっ・・・。」
タナトスがそうやっていると、ドアが静かに開く。タナトスは、そのドアから入った人に気づいた。
「気づきましたか?」
その人は女性だった。
「は、はぁ・・・。」
びっくりし、タナトスは問いかける。
「あなたは・・・?」
「わたし?わたしは・・・、」
少女がそう云おうとすると・・・
バサッ バサッ
突然窓から一匹の大きな鳥が部屋に入る。その鳥が部屋いっぱいに羽振りをするものだから、黒い羽がたくさん部屋中に散らされる。
「こら!フロート、やめなさい!」
少女は、立ち上がりその鳥に怒鳴る。鳥が鎮まったころ、タナトスは再び少女に声をかける。
「あの・・・、」
しかし少女はいらたった表情をしていた。
「声を出すと傷が痛むわよ?」
一方、山の奥でも一人の男を背負った二人の男が、川のほとりで水を飲み休んでいた。木にもたれていると、二人の男は、一人の男の目がかすかに動いているのに気づいた。
「王様?」
兵士は、寝込んでいるモルデス45世に声をかける。眼がゆっくりと開き、モルデス45世はゆっくりと腰を起こす。
「お気づきになられましたか。」
兵士がモルデス45世に声をかける。
「ここは?」
「近くの山です。」
「そうか・・・、あの戦争に負けたんだったな・・・。」
モルデス45世は、そう言うと空を見た。
「鳥は自由だな・・・、ああいった広い空を飛べて。」
「・・・・・・。」
「空に果てなんでない。空に戦争なんでない。空に障害なんでない。だから、羽さえあればどこまでも飛べる。」
「・・・・・・。」
「ああ、あの碧空は・・・、何で平和なんだろう・・・。」
「・・・・・・。」
兵士たちは口をつぐんでしまった。
あれから10分ほど経過した。治はギルモに土下座をしていた。
「お願いだ、ハルスを返してくれ!」
「だめだ。返したら俺を捕まえるつもりなんだろう。」
「そんなことは決してしない!」
「だめなものはだめだ!」
治は涙顔で顔を上げる。そしてぐっと唇を噛み、ギルモの後ろにいる兵士をじっと見る。その兵士は治の意思に気づいたようで、忍び足でギルモに近づく。
治が唇をかんだ意味を単なる悔しさと見たギルモは、さらに揶揄してやろうと、ギルモは口をついて言った。
「お前はハルスが好きなくせに、いさとなると何もできないんだな。」
それを聞き、治はあわてて立ち上がる。
「違う!」
「じゃあ何だってんだよ。」
「お、お、俺は・・・、ハルスが好きなんで・・・。」
治の顔は真っ赤になっていた。
「何もできない男っているんだなあ、この世には。」
それを聞き、治は逆上した。
「おっと、俺に一歩でも近づいたら、この子は死ぬよ?」
「その前に、卑怯な手段で勝つなら死んだほうがマジだ!」
「はっはっは、負け惜しみかね?」
治は一呼吸置いて、さらに強い声で怒鳴る。
「それはお前に言っているんだよ!」
と同時に、後ろから忍び寄っていた一人の兵士が、ギルモの肩をつかむ。びっくりしたギルモがナイフを持つ手を緩めると、ハルスはその手をがぶりとかむ。
「痛た!」
ギルモが手を離すと同時にハルスは逃げ、治のほうへ駆け寄ると、股間を蹴り上げる。
「余計なことはしないてくれる?」
ハルスは治の腹を踏み、片方のひざにひじを乗せて、治を見下ろして言った。
「ギルモを捕獲しました。」
一人の兵士が傍らに寄るが、治はハルスの誅殺を恐れ、返事する由もなかった。
変漢ミスコンテストに、
「内容を知りたい王子には十分に注意」
があったりします。
「内容を知り対応時には十分に注意」
の間違いなのですが、
ハルスにこの一文を言ったら、
どうなるのでしょうかね・・・?




