第26話 第6節「白馬の変態様」2
治率いる1万の騎馬兵は、治の陣中の指示で、なるべく音を立てずに城へ近づいた。しかしこれは杞憂であり、城中は酒盛りの歓声しか聞こえないのであったのだが、治はそれを想定せず、兵士達に慎重な行動を呼びかけた。
治は、城へ向かう道中、ふと今の自分を変に思った。戦争が嫌いだけれとやってみたい自分が、兵士に対してなれなれしい態度をとっている。将軍らしき態度に近づいている。なぜだろうか。治の頭に一つの疑問がかすったが、今はあの人のことを考えるべき局である。治は気を引き締め、目前に近づく城を見る。
城は遠くからみると小さかったが、1粁くらい距離を置くと大きく見えた。城門は鉄で、壊すべく叩けば大きな音がする。治は少し考え、それから、はしごを使って城郭に登る事にした。しかしそれを一部の兵士達に話すと、兵士達は小さな声で反論した。騎馬をどこに置くか、というのが最大の理由である。しょうがなく、騎馬を一度城門の前においておいて、中を錯乱してから城門を開けて騎馬に乗って改めてなだれこむ事にした。
薄暗い牢の小さな小窓から、外ですっかり宴会気分の兵士達を眺めているハルスは、なぜこの期に及んで治のことしか頭にない自分に憤りを感じた。自分は、ウィルソンが好きなはずである。ウィルソン王子が好きなはずである。しかし現に、治が召喚された。その時の悔しさと今の悔しさとでは、全くの別物である事に気付いた。しかしハルスはなおも抗った。しかしそれも無駄で、昨夜の夢にも治が出てきたのである。夢の中で治は、好きと言ってくれた。そんなの嘘よ、絶対嘘よ。ハルスが反論するも、治の手はハルスの体にまきついていく。我慢が出来ずハルスも治の体を、というところで目が覚めた。空しい昨夜の出来事に、ハルスは忘れんとするが、治のおの字が消えない。それで今に至る。
「どうだ、牢屋の暮らしは。」
酒に酔った真っ赤な顔で、ザファロが檻から小窓を眺めているハルスに、後ろから声をかける。ハルスは振り向きもせずに返事をする。
「快適よ。」
「じゃあもっとひどい所に送ろうかな?」
「嫌。」
ザファロは、酔いの勢いで言った。
「俺はな、ウィルソンの首を取った、すこい男なんだぞ!なあ、結婚するなら俺だよな?」
ザファロのこの言葉を聞き、ハルスはビクッとした。そしてばっと後ろを見る。酔っているのか、ザファロは檻の鍵を開け、中に入った。
「なあ、」
と、ザファロがハルスの体に絡みつく。
「胸触らせよ。」
明らかに性的な要求である。ウィルソン王子以外の人には許さない。そう思いつつも、ハルスは更に治とキスしてしまったことを思い出し、更なる憤りを感じる。
「なあ、」
ザファロの要求に、ハルスは一案を思いついた。
「杖を返してくれるなら。」
とうせ相手は酔っている。檻を気軽に開けたことからもそのことが伺える。
「どうそ〜。」
あっさりだった。ザファロは、脇から杖を取り出し、酔ったおじさん顔で杖を何の遅延もなく、ハルスに渡してしまったのである。それを受け取ったハルスは、優しい声で言った。
「ありがとう。」
「じゃあ、お礼に触らせよ?」
「その前にね・・・。」
ハルスは杖を握り、呪文を唱え始めた。
「フライ」
浮遊魔法であるが、ここでは爆発と言ってもよかった。小さな建物ならすぐに廃墟と化すほどの爆発が起こり、ハルスのいる牢の部屋から上3階が望めるほど、爆発は天井をつきぬけ、そして、ザファロを檻にぶつけ、酔いを醒ましたのである。
酔いの覚めたザファロは、顔を真っ青にして檻から出ようとするが、ハルスが後ろから優しく声をかける。
「ねえ、出たら殺すわよ。」
ザファロの酔いの醒めた頃、城郭付近の兵士達の酔いも醒めていた。城郭に登りきった治の軍勢が、兵士達にたくさんの弓をお見舞いしたのである。ギルモ軍の兵士達は狼狽し、混乱し、その隙に治の兵士達は城郭から城内へ降り、まっすぐ城門の方へ向かうと、城門を開けてその向こうにいる馬に飛び乗り、改めて城になだれこんだ。
治の疑問の答えは、第7節あたりで答えを・・・。
これが終わったらしばらく戦争シーンはなしです。




