第25話 第6節「白馬の変態様」1
治の軍勢は、ウモライの6つの城を全て鎮圧すると、一睡し、次の日の未明にザディアムへ向かった。
命令に沿っていない行動であり、本来なら慎むべきなのだが、治にはハルスのことが気がかりで、せめて様子だけでも、と、ウモライに4万の兵を置いて、1万の兵を引き連れてザディアムへ向かった。
治がザディアム付近の山に着いて、真っ先に見た物は、ザディアムの城郭を目の前にしてたくさんの兵士が倒れている風景であった。それは地獄絵巻のようであり、いやそれをはるかに越えるほどすごい風景なのかもしれない。治には基準が分からなかったのだが、これを一見するなりモルデス45世の軍勢が敗北したことがすぐに分かった。
「将軍様!」
一人の兵士が、治の立っている山の頂上付近の丘へ走ってくる。
「何?」
「モルデス45世の兵士と名乗る兵士がたくさん、来ております。」
「敗走兵?」
「おおむねそうでございます。」
「3人くらいここへ通して。事情を知りたい。」
「はっ。」
兵士が去り、まもなく4人の兵士が来る。
「連れて参りました。」
と言う兵士以外は、みな身も心もぼろぼろであった。治はその姿を見るなり、事のすさまじさを感じた。
「何があった?」
治がいうと、兵士の一人は真っ青になって言った。
「は、は、ハルスが、魔法をお使いに・・・。」
「それがどうした?人を引っ張るだけじゃあそこまで・・・。」
治は、ウィリエが自らに使った魔法しか知らないのである。しかし兵士は治の予想に反して、更に真っ青になった。
「いえ、爆発でございます。」
「はい?」
「ハルスが、ギルモに脅されて、こちらへ杖を向けたのでございます。」
「ギルモ・・・反乱の首謀者でしたっけ?」
「さようでございます。」
「そうか・・・、君達は何人くらい?」
「二千足らずでございます。」
「そんなに大きいのか。」
「いえ、四方に散っていますので。」
「そうか・・・、して王様は?」
「モルデス45世様は行方知れずにございますが・・・。」
「そうか・・・。」
治は改めてザディアムの城を眺める。そして同時に憤りも感じた。自分がせっかく落とした城を、もう一度落とさねばならないなんで・・・。人の欲は、どこまで追い求めるのか。底なし沼の如く、底を突き破り、自然が新たに作った底をも突き破り、更に新しく出来た底をも破る鯉のようであった。
窒息。治はこの単語を思いついた。鯉は深入りしすぎで、いつかは窒息して死ぬ。そう、深入りするほど酸素が少なくなる。そして、水圧も―――・・
「君達はここで残りなさい。俺は手持ちの1万の兵で攻撃するよ。」
治が言うと、敗走兵は真っ青になった。
「そんな無茶を・・・、ただでさえ40万もの兵を散らせた魔法ですよ?」
「時と状況によって、結果は大きく変わる。」
「で、でも、あれは例外でございます・・・!」
「・・・・・・でも、あの城の中には、俺の大切な人がいるんだ・・・。」
「はい?」
兵士はひどく躊躇した。
治にとってハルスは、先ほどまでは塵に等しい女だと思っていたが、この状況に置かれると、顔を見てもいないのにハルスのかわいさに惹かれる。そしてあの気の強い性格。怒った時のかわいい顔。寝顔。それらの記憶が、治にひそかな愛情を募らせていたのである。
「将軍様・・・。」
やっとのことで兵士が口を開いた。
「無謀でございます。」
「いや―――・・、望みはある。」
「このような状況で望みなんで、無茶ですよ!」
「とりあえず、君達はここで休憩しなさい。俺の軍勢は攻撃にかかる。」
「は、はぁ・・・。」
兵士は更に躊躇し、後ろへ下がる。
治は一万の兵士を引き連れて、ザディアムの城へ向かった。彼らの姿を、敗走した兵士達は、少しも休んだ気がせず、ただただ心配しながら、山の頂上付近の丘へみんな集まり、眺めていた。
一方、ザディアムの城の中では、兵士達が酒盛りをしていた。ザファロ将軍も、ギルモ将軍も、酒に酔っていた。あの40万もの兵士をたったの10万で壊滅寸前まで追い込んだことが、彼らに優越感を持たせていたのである。酔いが回り、更に、自分達は無敵だとも錯覚するようになって来た。
これからここが修羅場となる事は夢にも思わずに―――・・
言い忘れていましたが、
この小説の中の城は、
三国志や史記とかに出てくるような、
中国の城がモデルです。
つまり、城下町は城郭の中に入っている
な感じです。
もち城郭の外に民家があったりしますw




