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王子  作者: KMY
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第24話 第5節「逃げろメロス」7

 治の軍勢は、ウモライ城の力攻めを開始した。兵士達ははしごに登り、城郭へ慎重に近づいていく。そして、城郭の回廊に着き、足を下ろす頃には、ある事に気付いた。

 誰もいないのである。無人。自分の軍勢のほかには、誰もいないのである。千人ほどの兵士が城郭に降り立つと、上の余りの静けさに治が下から怒鳴る。

「やけに静かだよ?」

すると兵士の一人も上から大きな声でいう。

「誰もいません!」

「何!?」

治は慌ててはしごに登る。残りの兵士たちも続いてはしごをのぼる。それに気付いた治が、壁を見たまま叫ぶ。

「上にいる君達は城門の鍵を開けろ!下の人たちは城門の前で待機!」

「は、」

と、治に続いた数千人の兵士達ははしごから降り、城門へ向かう。既に城郭に登った兵士達は、5人くらい残って他は全て城門の鍵を開けに去った。

 城郭に登った治は、城郭から城下町を見下ろす。

「いかかいだします?」

治は、傍らで尋ねる兵士の言葉をろくに聞きもせず、城下町を見た。誰もいない。まさか、まさか・・・。

「してやられた!敵は・・・。」

治は空を見上げ、したんだ踏んだ。そうだったのか・・・、治には今、あの5つの砦がペンタゴン状に配置され、そしてそれぞれの砦の耐久が少ない理由が分かったような気がした。

「城門が開きました!」

一人の兵士が報告に上がる。その兵士に対し、治は言った。

「ここでは昼御飯は食べる?」

「はぁ・・・休めればそれで・・・。」

「休んだら最後だ・・・。」

その治の目には、焦りと脅威が映っていた。治は叫んだ。

「全員でライアン砦を総攻撃だ!休息はライアン砦を落としてからだ!」

「はぁ・・・?」

そこに居合わせた6人の兵士達は、皆驚いた。

「まさか・・・、ライアン砦は既に占領して、」

「そのまさかだよ・・・。」

「はぁ?」

兵士が、理由を教えて欲しい声で治に言うが、治は言った。

「とりあえず今すぐ出陣する!」


 モルデス45世は、ザディアム城の塔を見上げていた。

 塔の頂上には、ギルモ、ザファロがいた。そして、その真ん中に、こちらに杖を向けたハルス。

「さあ、早くするんだ。」

ギルモが刀をハルスの首に突きつけ、脅す。ハルスはぼろぼろ涙をこぼす。

「ごめん・・・!」

「ハルス、まさか・・・!」

モルデス45世は驚き、周りの兵士達に怒鳴る。

「退け、退け、退くんだ―――!!」

目をつぶり、限りあらんほどの声を張り上げるモルデス45世は、塔の方から大きな閃光が走るのを感じた。


 ウモライの軍勢は、5つの砦にそれぞれ2万ずつの兵士を送り込み、これを全て鎮圧し、昼前に五方から一斉に中央の城へ向かう要領であった。

 まとまって戦えば被害は多いが、少しずつ鎮圧して行けば何とか全滅できる。治はそう感じ、まずはライアンから向かった。5万と2万。治は力押しを以てこれを撃退し、ライアン砦を奪還し、休息を取ったのち、3時頃になると隣のアンデス砦へ総攻撃を開始した。

 そこを鎮圧し、砦の中へ踏み込んだ治と数百人の手勢は、派手に着飾った一人の男を見つける。

「取り押さえよ。」

治が言うと、10人程度の手勢がその男を捕まえる。

「あああ、あああ・・・、命だけは・・・。」

男が真っ青になって言うと、治は言った。

「君がウモライ国の王、だな?」

「ああ・・・。」

男は真っ青になっていた。

「悪いがあなたには、俺の大切な人のためにも・・・。」

「ああ、わかったよ、死ねば。」

「えっ?」

治がびっくりするが、それと同時に男は懐から短剣を取り出すと、自らの首を刺す。

「ああ・・・。」

治は真っ青になった。そして、叫んだ。

「ひ、人の話は最後まで聞けよ!」

その治の眼下で、ウモライ国王ナスオ19世は倒れた。その死体を目の前にし、治はつぶやく。

「こんな臆病な王がザディアム国を滅ぼした・・・。信じられないなあ・・・。」

「さようでございますね。」

傍らの兵士が一人、返事をする。治は首を振り、言った。

「供養して・・・。俺が本当に言いたかったことを言ったら、巫蠱ふこされるから、な・・・。」

「・・・・・・。」

傍らの兵士達は口をつぐみ、目を閉じた。それに応じ、治も黙って目を閉じた。

 戦乱の世の中は、臆病をも生む。そして・・・。治は、やりきれなさを感じた。そして、その場にしゃがむ。はっと治の頭に、ハルスの顔が浮かぶ。浮かぶと同時に、治ははっと目を開ける。治は急に立ち上がると、後ろの兵士達の方を向き言う。

「モルデス45世の援軍に行く!」

そろそろ名シーンが出て来るのですが、

いや、なにって・・・治がハルスを助けるシーン。

名シーンです。


いいえ、いえいえいえいえいえいえいえいえ、

みんなは絶対迷シーンって言うのですから。

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