第23話 第5節「逃げろメロス」6
日の出も間近だった。
治は軍勢を引き連れ、5つの砦には兵を1万程ずつ残し、5万の兵で首都の総攻撃にかかった。
首都は、他の5つの砦とは違い城といえる城で、規模が大きく、一筋縄ではいかなそうであった。その城を目の前にして、治は少し離れて陣を作った。
ああいった頑固な城を落とすには、中から部隊に出てもらうに限る。しかしあちらもそれを分かっているらしく、なかなか出ようとはしなかった。そうしているうちに、太陽が真上まで来た。治は汗ばんだ頭を腕でふき、それからしばらく考えた。
「モルデスの王様が来た?」
一方、ザディアムの城で、ギルモは、見張りの兵士の報告を軽くあじらう。それからザファロ将軍の方を向く。
「なあ、モルデスの王様がここを落とすんだって。笑わせるなあ。」
「ああ。」
ザファロ将軍も、にやりとしてうなずいた。
「あ、相手は40万もの兵が、」
見張りは真っ青になっていた。しかし二人の将軍は平然と口を揃えた。
「なぜならな、こっちにはあの人がいるんだぜ?」
モルデス45世の軍勢は、ザディアムの城を取り囲み、陣を張った。
「要はあそこをどうやって落とすか・・・。」
モルデス45世は城を仰ぎ見、長考した。それから、こっくりとうなずいた。
「台車の準備を。」
モルデス45世が傍らの兵士に言うと、その兵士はこっくりとうなずき、兵士達のたむろしているほうへ走って行った。
「そうだ!これしかない!」
治は、ウモライの城を目の前にして、一つの作戦を思いついた。力攻め。それしかないのである。治は兵士達のたむろしているところへ行くと、怒鳴る。
「これからあの城を力攻めする!まず、はしごかけからだ!」
治が言うと、兵士達は整列をする。
「はしごも忘れずに・・・、行くよ!」
治が叫ぶと、兵士達は慌てて支度を整え、陣から出て行く。
ザディアムの城では、城郭で守備をしていた兵士達は狼狽していた。いきなり高い車が現れたかと思うと、その車の上に乗っている兵士達がこちらめかけて弓を放つのである。車の頂上は城郭の回廊と同じ位の高さであり、あっという間に兵士達に城郭を乗っ取られ、弓矢ではなく槍で戦う事になった。
この戦況を、ギルモとザファロは、城の頂上に登って見ていた。そして、二人の間には、無理やり杖を持たされたハルスが怯え顔で立っていた。
「さあ、魔法で爆発させるんだ。」
ギルモが、ボンとハルスの背中を叩く。
「ハルス、君の魔法が必要なんだよ、」
と、ザファロも同調する。
戦争に魔法の力が使われた事は、今まで一度もなかった。当然である。魔法の規模はその場に居合わせた数人の人々に対して効く物であり、一般的には対人に対して用いられる。戦争規模の、多くの人々を殺すのには適していなかった。しかし、今、戦争に使うことが出来るほど大きな魔力を持った少女、ハルスは、杖を持つ右手が震えているのを感じた。
「さあ、さっさと呪文を唱えるんだ。」
ギルモが刀を抜きハルスの首の方へ持ち、脅す。ハルスは怯え顔で、震えながら無理やり右手を上げた。杖がぼろっとこぼれそうだったので、杖をがしっと強く握った。しかし何をどうしても声帯が動かない。城の屋根に二つついている塔が高すぎるから?少なくとも原因はそれではない。自分の父の軍勢にとって不利なことを、今、強制されているのである。
「ん?あれは?」
台車に乗っているモルデス45世は、塔の頂上に3人の人がいるのに気付いた。周りの数人の護衛の兵士達も見上げる。
「あれは!」
モルデス45世は目を丸くする。なんと、その塔の頂上には、ハルスに刀を突きつけているギルモ、ギルモが監視しているはずのザファロ、そして、こちらの台車に杖を構えているハルスが立っていたのである。
最近投稿の時間がほとんど出来ません。
ということで、王子は予定より早めに終わります。
ごめんなさい。




