表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子  作者: KMY
16/46

第16話 第4節「我輩はエロである。エロした事はまだない」3

「ねえ、長谷川さん、」

 治は、健治の部屋にいた。健治の部屋は城の端っこ辺りにあり、かび臭く、まさに召し使いの部屋としてふさわしい部屋であった。

「治様。」

健治は丁寧に、治に言った。

「あの・・・、孫の友達に様付けをしないと思います、普通。」

「すみません、癖でございます。」

「そうですか・・・。」

そう言い、治は小さな窓から外を見る。

「寂しゅうございますか?」

そう健治に言われ、治は感傷的になる。涙がぼろぼろこぼれてくる。

「私も、はじめは寂しかったです。家に帰りたい気持ちは、私も同じです・・・。」

そう言われ、治は切ない気持ちになった。

「そういえば、さっきハルスに谷のことを言ったら怒られたんですけと。」

「谷?といいますと?」

「谷間に手をいれないて、と言ってましたし、ハルスはどこか気に入っている谷とかあるんですか?」

「あの・・・、治様。谷間とは、女性の胸のことでございます。」

「はい?」

「正確に言いますと、おっぱいとおっぱいの間でございます。」

「はい?」

治は目を丸くする。

「そんな意味付けはややこしいのでは?」

「しかし・・・。」

そう言い、健治も窓の方を向いた。


 治のいない部屋は、幾度か広くなったように感じた。ハルスは、着替えもせずに、ベットに座り、後ろの窓から外の景色を眺めていた。ふと、ハルスは立ち上がり、たんすの抽斗を開ける。そこから、一本の杖を取り出し、握る。

「なぜ、あたしは魔法が使えない・・・。」

その一言で忘れようとしたが、やはり頭から離れない。ウィルソン王子ではなく治のことばかり考えている自分に対し、憤りを感じた。

「まだ一人だったの?」

ウィリエが黙ってドアを開けて入ってくる。

「ノック、しなさい。」

「あら?仮にもあたしは姉さんよ。」

「そう。」

ハルスはそれだけ返すと、再び杖を見てつぶやく。

「なぜ、あたしは魔法が使えない・・・。」

「そりゃ、魔力が余りにも高すぎで、暴走するからでしょ。」

ウィリエはあっさりと答える。

「じゃ、どうすればきちんと使えるの?」

ハルスが問うが、ウィリエはしばらく考えてから短く言った。

「分からない。」

「そう・・・。」

「それよりさ、忘れようとしていたんでしょ?」

「えっ?」

「治を忘れたい気持ちは分かるわよ。」

「えっ?」

ハルスは目を丸くする。

「やっぱりね、最近のハルスの行動は分かりやすくなったわ。」

「どういう意味よ?」

「ふふ・・・それはとりあえず。」

ウィリエは、くすくす笑いながら、ベットの、ハルスの横に座ると、ハルスの肩を叩く。

「心配ご無用。あたしが代わりに恋人になってあけるから。」

「・・・・・・。」

「さっき、じいと治が話しているのを聞いたけれと、今朝の夢で治とキスしていたでしょ?」

「えっ?」

ハルスは真っ青になる。

「やはりね・・・、嬉しい夢が本当になったら嬉しいでしょ?」

ハルスは一瞬にして顔を真っ赤に染める。

「そ、そんなこと、な、ないよ・・・。」

そう言いながらも、口はあわあわとうごめいている。ウィリエは、そんな顔を見てくすっと噴出す。

「じゃ、さっきお父様に聞いたけれと、明日また遠足に行くそうよ。」

「遠足・・・。」

ハルスは下をうつむく。ウィリエは、笑いながら続ける。

「なんでウィルソン王子の墓に参らないか、その理由はみんなにばればれよ。」

ハルスは一気に顔を上げ、立ち上がる。

「参る。」

「無理しなくでもいいのよ。」

ハルスはその言葉を無視してドアに向かう。ウィリエは杖を構えると、ハルスに向ける。後ろから気配を感じたハルスは、ドアノブに手をかけたまま後ろを向く。こちらに杖を向けたウィリエを見て、ハルスは驚く。

「来なさい。」

ウィリエにそう言われ、ハルスは恐れたように再びベットに座る。

「無理しちゃだめ。」

「・・・・・・。」

「それじゃ、明日の遠足の心の準備でもしてて。」

「うん・・・。」

 ウィリエは、ドアを閉めて部屋から出ていってしまった。その閉まりゆくドアを見て、ハルスはやっと自分の心の中を悟った。悟ったは悟ったで、どんと涙があふれ、ハルスはベットの枕を掴むと、うつむき枕を顔に押し付けて、さめざめと泣き続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※この小説は打ち切られています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ