第14話 第4節「我輩はエロである。エロした事はまだない」1
ハルスは、治が落とした城に、モルデス45世の使者と共に入った。
ハルスは、新しい自分の部屋を見て、あまり驚かなかった。ハルスが心配なのは、ウィルソン王子が生きているという、ただそれだけであった。ウィルソン王子が生きていれば、これ以上の喜びはない。
「お父様。」
ハルスは、モルデス45世の部屋のドアをノックする。
「入りなさい。」
中から声がすると、ハルスは静かにドアを開け、部屋に入る。
「ハルスか。何だね。」
モルデス45世は、問う。ハルスは心配そうに答える。
「あの、ウィルソン王子は・・・。」
「死んだよ。」
モルデス45世は、言いたくなかったような、重い声で言った。
「えっ・・・。」
ハルスは絶句した。
ハルスが自らの部屋に戻ると、そこにはこの前一目惚れした治が掃除をしていた。この部屋は長い間使われていなかったらしく、治は積もった埃をふいていた。
何よ。一目惚れなんで、してない。あたしは、生まれてこのかたすっとウィルソン王子が好きなんだから。ウィルソン王子以外の人を好きになってたまるもんか。そう思い、ハルスははっと、治のおでこにキスした事を思い出す。ハルスの憤りは、慕ってゆく。ハルスはバンとドアを閉め、びっくりしてこちらを見ている治をけり上げる。
「エロ!」
その単語に尽きた。ハルスは更に、くるくる転がった治を再び蹴る。
「この前あたしのお尻を触ったのは、あんたでしょ?」
謂れもない前科を押し付けられ、治は立ち上がると怒鳴る。
「そんなことしてねえよ。」
「嘘ばっかり!」
憤りの慕っていたハルスは、さらに治に、誰にもされていない前科を次々と押し付ける。
「あたしが寝ている途中におっぱい触ったでしょ!」
そう言われ、治は更に蹴られる。治は後ろの壁に押さえつけられる。
「もともとお前の胸は平らじゃないか、」
と治は反論するが、
「お尻の谷間に手を挟んだでしょ。」
と、ハルスは一蹴する。
「そんなことするわけ、」
「ある。」
と、ハルスは治の首を強く絞る。
「うう・・・。」
息が苦しくなった治は、あえぐ。
「ゆ、ゆる、して、」
「許さない。」
「た、たす、け、て、」
「殺す。今すぐお前を殺す。」
「な、なんで、」
「あたしね、本当はウィルソン王子が好きなはずだったのに、あんたが出てきた所為であんたに惚れちゃったじゃないの。あれもこれも全部あんたの所為よ。だから殺すのよ。」
いくらなんでもむちゃくちゃな理由である。治はハルスの、自らの首を絞める手に手をかける。
「は、話せば分かる、」
ハルスは黙って治の股間を蹴る。
「あんたの選択肢は二つ、あたしに殺されるか、自分で死ぬかのどっちよ。」
「う、うっ、」
「どっちがいい?」
「ひ、ひっ、」
「答えてくれないならあたしが殺す。今日はほぼ確実にあんたの命日だから、」
「たす、け、け、て、」
ハルスは、治の首を更に強く締め付ける。
「何やってるの。」
と、突如部屋のドアが開き、中から一人の女性が顔を出す。ウィリエであった。
「姉さん。手伝って。」
「何を。」
「このエロ殺すの。」
「殺すんだったらあたしがもらっていい?」
と、ウィリエは二人に近づき、治の首を絞めていたハルスの手をばっと払いのけるなり、治の唇に自らのそれを押し付ける。
「ち、ちょっ、」
後ろから見ていたハルスは、真っ赤になってウィリエに怒鳴る。
「あんた、本気だったの?」
「当然じゃないの。」
と、ウィリエはそう言うと、
「あっ、」
と言う治の腕を引っ張り部屋から出る。その二人の姿を、ハルスは呆然として眺めていた。
ウィリエは、治を自らの部屋に入れると、治に言った。
「ごめんね、これは空くまで芝居だから。」
「そうですか。俺だって気にしてませんよ。」
治から返答をもらい、ウィリエは少しためらっている様子だったが、短く付け加えた。
「・・・でも、あなたが好きなのは本命だから。」
「えっ?」
治は目を丸くする。なんとなく悪寒がした。
「ねえ、もう一回キスしてくれる?」
「えっ・・・。」
治は顔を真っ赤にする。
「そ、それよりさ、俺の話を聞いてくれよ、」
「何の話。」
「えっとさ、俺、ハルスに召喚される前ね、こことは違う世界に・・・。」
「聞いてる。」
「えっ?」
「ハルスの執事さんに。」
ウィリエは寂しそうにそっぼを向く。
「お父様、あたしじゃなくでハルスに執事をつけるの。あたし、お姉ちゃんなのに・・・。」
「なぜですか?」
「・・・・・・。」
ウィリエは、手で自らの顔を覆う。
「理由は分かっているんだけと、でも、でも・・・。」
その手と手の間から涙が漏れる。
「理由って何だよ?」
治があわててウィリエに問う。
「エロじじい!こんなとこにいたのね!」
と、いきなりドアが開き、ハルスが姿を表す。ウィリエは慌てて濡れた顔を腕でふきハルスの方を見る。その目元が赤くなっているのに気付き、ハルスは激怒して治に怒鳴る。
「あんた、姉ちゃんにまて手を出したのね!」
「いや、だから、そういうわけでは、」
治は真っ青になって退る。ハルスは更に治に近づく。
「ち、近づくなよ、」
「姉ちゃんに手を出すなんて、相当の罰を与えないとね。」
そのハルスの顔は、かわいいながら、もはや小悪魔であった。
「ご、誤解だよ、」
治は慌てて弁解するが、ハルスの影がだんだん大きくなってきているのに気付いた。
メール上の友人にろくに返事を書くことも出来ないほど多忙です。
本人がこの文を見ていましたら、許してください。




