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推しが弟の友達でした!?  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
第一章

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9/20

9.推しと遊園地デートとか、夢!?(1)

 私が配信に出るのを辞めて、マモルのチャンネルから男性ファンが少しだけ減少したようだが、ほとんど変わりはなかった。

 瑠為くんとは、軽くメッセージをやりとりすることはあったけど、なかなか会うこともなく、日々は過ぎていった。

 そんな矢先、ネットニュースで衝撃の記事を目にした。


「ルイが……ドラマの……主役……!?」


 アイドルに芝居はつきものだ。

 でも、ルイは歌唱力を売りにしていたので、あまりドラマなどに出ることはなかった。

 出ても友情出演みたいな、美味しいけど出番は少ないやつ。

 それが、主役。


(大抜擢じゃん!!)


 私は大興奮していた。と同時に、僅かながら不安もあった。

 ルイは、確かに、抜群の歌唱力を誇る。

 ダンスもすごいし、バラエティのトークもうまいし、グループをまとめるのにも長けている。

 だけど、芝居に関しては、なんというか、その。

 ちょーっとばかり、苦手なようだった。


(大丈夫かなあ)


 私なんかが心配することではないけど。

 そんなことを思っていた矢先、瑠為くんから連絡があった。


【みのりさん、デートしませんか?】


 ぎょっとして、画面を見たまま暫くフリーズしてしまった。

 宛先を間違えているのだろうか、誤爆というやつだろうか、でも私の名前が入っているし。

 震える手で、何とか返信を打つ。


【詳細をお伺いしてもよろしいでしょうか】


 しまった、業務連絡か。瑠為くんもそう思ったようで、


【これプライベート用で合ってますよね?(笑)社用だったりします?】


 うおおおお、文面からでも見える推しの笑顔……!

 すみませんと謝って、あらためて詳細を聞く。


【実は、今度ドラマの主演をやることになって】


 知ってます知ってます、と頷きながら、オタクっぽさを出さないために口を挟まず次を待つ。


【俺、あんまり普通のデートってわからなくて。恥ずかしいんですけど、芝居があんまりうまくない自覚あるんで、気持ちだけでもしっかり作っておきたくて。役作りに付き合ってくれませんか?】


 なるほど。ドラマの役作りのために、一般人らしいデートがしてみたい、と。

 そういえば、瑠為くんって芸能活動始めたの早かったもんな。あんまり普通の青春時代は送ってないのかも。


【場所は遊園地を考えてるんですけど、どうですか?】

【遊園地? 人の多いとこだと目立っちゃわない?】

【変装はするんで。それに、万が一に備えて、サポートを待機させておくので、あまりあちこち移動しないようにしたいんです】


 なるほど。映画見て、ご飯食べて、ショッピングして、みたいなコースを組んでしまうと、それだけ人目に触れるリスクも増えるし、見張る方は大変だ。

 個室居酒屋の時と同じように、近くに誰か待機させておいて、万が一見つかって騒ぎになりそうだったら「グループで遊びに来た」という体を装いたいのだろう。

 だったら確かに、1日遊んでいられて、食事や買い物も中で全て済ませられるテーマパークは適しているかもしれない。


【わかった。遊園地デート、楽しみにしてる】


 瑠為くんからスタンプが返ってきて、私はそのまま流れるように五体投地の姿勢をとった。

 いや、役作りだけど。疑似だけど。

 推しと、デート…!?


(私、正気をたもっていられるかな……)


 醜態をさらさないか、今から気が気でなかった。



 ☆★☆



 日々はあっと言う間に過ぎて、いざデートの日。

 現地集合だったため、私は早くから遊園地の前で待機していた。

 間違っても、推しを待たせるわけにはいかない。

 もう外で待つのは寒い季節だけど、推しを待つのは全然苦ではなかった。

 暫く待っていると、人の流れにのって、ニット帽とサングラスで顔を隠した人が見えた。

 シルエットが瑠為くんっぽいな、と思っていると、その人物は手を振りながら近づいてきた。


「みのりさん、お待たせしました」


 少しサングラスをずらして、挨拶してくれる。

 ああ~、この待ち合わせ感~。

 思わず拝んでしまいそうなのを隠して、私は笑顔で答えた。


「ううん、全然」

「それじゃ、行きましょうか」


 手を差し出してくれた瑠為くんに、一瞬固まってしまう。

 こ、こ、これは。

 手を繋いでいいって、ことですか…!?

 こ、恋人ならそうか。そんなもんか。

 あれ恋人?


「瑠為くん、デートの前に設定を確認しておきたいんだけど、一緒にデートする相手は恋人でいいの? それとも片思い?」

「ああ、そうですね。ええと……最初は片思いから始まるんですけど、デートする頃には恋人です。今日の目的は、デート中にする自然な仕草とか、女の子がきゅんとするポイントとか知りたいかなって。なので、きゅんとしたら、丸でも作って教えてくれると嬉しいです」

「そんなバラエティみたいな」


 冗談めかした瑠為くんに、私も笑って答える。

 というか、それで言うと、私は四六時中ルイにときめいているので、常に丸作りっぱなしになるんだけど。


「そうだ。その役って、敬語キャラ?」

「いえ?」

「だったら、瑠為くんも普通に喋ってよ。ちょっと気になってたんだよね。私の方が年上ではあるけど、友達だって言うなら、そういう上下関係みたいなのが見えるの嫌だなって」


 そういう礼儀正しいところも好きだけど。

 パワーバランス的にはどう考えたって私の方が下だし。

 瑠為くんはちょっと考えて、その方が役に近いと思ったのだろう、ひとつ頷いた。


「わかった。みのりさん」


 にこっと笑った瑠為くんの笑顔と、崩れた言葉遣いに、胸を撃ち抜かれた私は手で丸を作った。


「え? 今ので?」

「う……ごめん、私、採点ガバガバかも」

「ええ? 厳しくしてくれていいよ」


 声に出して笑う瑠為くんは、年相応の青年に見えて、可愛い。

 まだ24だもんなあ。


「それじゃ、改めて」

「……うん」


 瑠為くんが差し出してくれた手を握り返して、私たちは遊園地内に入った。


「まず何からいく?」

「体力ある内に、テンション上がるやつに乗りたいな。絶叫系とか」

「みのりさん絶叫平気なんだ」

「割と好きだよー。スカッとするしね」

「じゃあまずジェットコースター行こっか」


 ジェットコースターの列は、冬の平日だというのに、そこそこ並んでいた。

 列に並んで喋っていると、バレるリスク上がるんじゃないかなあ、なんて思っていたら。


「みのりさん、こっち」

「あれ? 並ばないの?」

「俺、特別優待パス持ってるんで」


 あれか。金持ちがやる、スポンサー関係とかああいう。

 そういえばスタスタ、ここの遊園地のCMやったことあったっけ。

 一般のデートが知りたい、という瑠為くんの希望との兼ね合いを考えた結果、多分撮影でもロングで並んでるシーンなんか撮らないだろうと判断し、ありがたく優先で乗らせてもらう。


「ジェットコースターなんて久しぶり」

「友達と遊園地とか来ないの?」

「いやー……大人になると、なかなかねー。よく飲みには行くんだけど、1日使って遊ぶってあんまりしないかな」

「へえ……そういうものなんだ」

「いや、やる人もいると思うけどね? 私の場合は」

「じゃあ、今日は思い切り楽しもうね」


 もう既にだいぶ楽しいですけど!

 と叫びそうになった時、ジェットコースターが動き出した。

 カタカタと上がっていく時間は、なんだかわくわくする。


「ごめん瑠為くん、先に謝っとく。私叫ぶから、うるさかったらごめんね」

「あはは、ジェットコースターって皆叫ぶよね。俺も叫ぼっかな」

「喉大丈夫?」

「このくらい、バラエティでもやるから大丈夫」


 ジェットコースターが頂上に辿り着く。

 くる、くる、という期待感から、一気に。

 がくん、と襲う落下。


「っきゃー!!」


 ストレス発散も込めて、大声で叫ぶ。

 胃が浮き上がるような浮遊感が気持ちいい。

 ぶんぶん振り回されて、ぎゃーぎゃー喚いて。

 私はすっかり緊張なんか忘れて、遊園地を楽しんでいた。

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