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推しが弟の友達でした!?  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
第一章

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7/20

7.推しからのサプライズ!?

 日程決まったよ、と真守から連絡があったのは、その数日後だった。

 何か準備しておくことはあるか一応聞いたけど、特に必要ないらしい。

 私は顔丸出しもどうかと思って、お面とか被っていいか、と聞いたのだけど、気になるな ら顔は出さずにゲーム画面をメインにして、音声だけで配信できるらしい。

 ということで、私はなんの準備も心構えもせず、仕事が休みの日に、真守の部屋を訪れた。


「言っとくけど、本当に面白いこととかなんにも言えないからね。期待しないでよ」

「わーかってるって。誰も素人にそこまで期待してねーよ」


 素人って、じゃあお前はプロなのか、と突っ込みたかったけれど。

 慣れた手つきで配信の準備をする真守は、実際プロなのだろう。だってそれでお金稼いでるんだし。


「んじゃ、そろそろ時間だけど……準備はいい?」

「……まあ」

「んじゃいくぞー」


 真守が配信を開始する。

 画面上のコメントが盛り上がって、真守が笑顔で口を開く。


「こんにちはー! マモルです! 今日は日曜なので、珍しく昼間からの配信です! 見に来てくれた人たち、ありがとー!」


 挨拶をしただけで、わっとコメントが流れる。

 さすがフォロワー12万人。もうこれコメント追えてないんじゃなかろうか。


「やー俺夜型なんだけどね、今日のゲストがどーしても昼間がいいって言うから」


 当たり前だろうが学生と一緒にするな。

 ていうか学生もダメだろ、こいつちゃんと大学行ってるんだろうな。


「ん? そうそう、ゲスト。あ、わかってる人何人かいるな。まあ匂わせしておいたからね」


 真守は猛スピードで流れるコメントをきちんと拾っているようだった。

 動体視力はいいのか。


「じゃあゲストのご紹介です。俺の姉、みのりんでーす!」

「!?」


 おい待て、みのりんてなんだ、と声には出せないので鬼の形相で伝える。

 真守は口の端を引きつらせながらも、トークを続けた。


「本人希望で、顔出しはなし! 名前もテキトーな渾名なんで、検索しても出ないからそこんとこよろしくー」


 あ、そういうことか。

 ルイもマモルも本名でやってるけど、それでもカナに変えるくらいはしてる。

 私は一般人だし、名前から身バレしないように考えたんだろう。

 ……それにしちゃ、もうちょいなかったのか、って感じだけど。


「ではさっそく、本日のゲームをご紹介しましょう! 本日は~、こちら!」


 ぱっと真守が画面に映したのは、いかにもジャパニーズホラーといった、薄暗い雰囲気のゲームだった。


「【裏切りの館、黒の記憶】~!」


 げえ。ゾンビものとかが良かった。

 私、日本の陰湿な感じのホラー、苦手なんだよなあ。


「有名なんで、コメントでも何人か知ってる人いるね。初見殺しのホラーゲーム! 是非存分に悲鳴を上げてもらいましょう!」


 真守に促されて、私はゲームを開始する。

 なるべく喋ってね、と言われているので、ここからは私も口を開く。


「えー……既にBGMがおどろおどろしい感じでね、嫌なんですけど。そんなこと言ってると話が進まないので、まずは館に入りまーす」


 慣れない喋りの姉に、「頑張れ」といった応援のコメントがつく。

 おお、チャンネル民意外と優しい。

 ぎいー、というホラーならではの錆びた扉が開く音で、館の内部に入り、ゲームスタート。

 おそるおそる進んでいくが、歩くだけで床がミシミシ言って嫌な感じ。


「えーと? まず、奥の部屋に行って、館の主人の日記を見つける……んだよね」


 一番奥の部屋に進むと、扉に手をかける。

 そして開こうとした瞬間。


「ぎゃああああ!?」


 私の声とゲーム内の声がダブった。


「あっははははは!」


 隣で弟が爆笑している。キッとそれを睨み、コメント欄に目をやる。


「え、あ、初見殺しってこれ!?」


 扉を開いたら、真正面に黒くてデカいドロドロしたものがいて、部屋に入れなかった。そして死んだ。

 なんだこれ。日記読むどころじゃないじゃん。なんだったんだあのアナウンス。


「えー……なになに。先に手前の部屋で斧を入手しておかないとダメ? え、斧? 除霊とかじゃないの? 物理なの?」


 バイオレンス系なのか。

 アドバイスに従って、先に斧を入手し、先ほどの黒いやつを斧でぶっ叩く。

 そいつの屍を乗り越えて部屋に入り、主人の日記を読む。

 館の主人は最愛の人物に裏切られたので、その無念を晴らしてくれとかいう話らしい。

 その最愛の人物が誰なのか、なぜ裏切ったのかを、この屋敷を探索しながら推理していくゲームのようだ。

 屋敷は怨念に取り憑かれていて、あちこちに化け物が出る。

 いかにも「出ますよ」って空気をかもしているところもあれば、なんの脈絡もなく飛びててくる場所もある。


 私が日本のホラーが苦手なのは、予備動作がないところだ。

 別にお化けが怖いのではない。突然の大きな音と演出に、びっくりしてしまうだけ。

 それでも、私が「わー!」とか「ぎゃー!」とか悲鳴を上げる度に、コメント欄は盛り上がった。

 まあ、これはこれで成功なんだろうから、いいとしよう。


 叫びながらもゲームは進み、ようやくクリア目前のところまできた。

 あとは証拠を館の主人に提示するだけ。

 そして怨念と化した主人に、証拠の数々を見せると……


「『お前だったのか』」

「っぎゃーーーー!!!?」


 私は最大級の声を上げた。

 何故って、ゲームの声と共に肉声が聞こえ、しかもリアルで肩を掴まれたからだ。


「なになになになに!?」

「あっはははは! 姉ちゃんビビりすぎ!」

「すみません、みのりんさん。驚かせてしまって」

「え……る、瑠為くん!?」


 そこにいたのは、瑠為くんだった。

 信じられなくて目を白黒させる私を置いてけぼりに、真守がドヤ顔で言う。


「じゃーん! サプライズゲスト! ルイでーす!」

「こんにちは」

「姉ちゃんが乱入してきた回の配信にいたからさ。今度はルイを乱入させてみた。どう? ビビった?」

「先に言えバカ真守!」

「先に言ったらサプライズになんねーじゃん」


 にやにやする真守を睨みつけるも、姉弟の醜いやりとりを瑠為くんに見せるわけにはいかない。

 私は意識して深呼吸をした。


「……とりあえず。ゲームは一応クリアしたし、瑠為くんが来たなら、ここからはバトンタッチってことね」

「別に、姉ちゃんもいてもいいけど」

「これ以上私がいてどうすんのよ。配信をご覧の皆さん、ありがとうございました。今回は弟の気まぐれで参加しましたが、楽しんでいただけたなら嬉しいです」


 私の挨拶に、「またホラーやってほしい」とか「楽しかった」など、コメント欄は概ね好意的だった。

 ほっとした気持ちでその場を離れ、私は帰った方がいいのかどうしようかと悩んでいると。

 瑠為くんが、こちらに向けて口パクをしていた。

 首を傾げて、動きを読み取ると。


『い』『て』

 

「……!?」


 合っているのかどうかわからないけど、そう言っているように見えた。

 真守はそのまま配信を続けているので、口を挟むわけにもいかず、私はふたりから少し離れた場所で、配信を生で見学するという奇妙な時間を過ごした。


 元々ゲームのプレイで相当時間がかかっていたし、真守とルイの雑談配信はそこそこの時間で切り上げられた。

 真守が機材を片付けている間に、瑠為くんが私に話しかけてきた。


「久しぶりです、みのりさん。イベント以来ですね」

「え、ええ……どうも」


 なんだかキョドってしまう。もう二度と会うことなんかないと思っていたのに、どんな顔で。


「本当はもっと早くに会えれば良かったんですけど……なかなか都合がつかなくて」

「え?」


 ということは、瑠為くんは、私とまた会うつもりだった?

 私が驚いた顔をしたのに気づいて、瑠為くんが苦笑した。


「やだな、友達になりたいって言ったじゃないですか。忘れちゃいました?」

「いや、だって、連絡先も交換しなかったし……。社交辞令かなって……」

「ああ、そのことですか。俺も迷ったんですけど、みのりさんとは真守経由で会ったじゃないですか。だから、真守の仲介がある場所で交換した方がいいと思って」


 まさかの理由に、私は目を丸くした。

 そんなの、気にしなくていいのに。


「俺とふたりきりだと、断れないかもしれないでしょ。だから」

「そんな! 断ったりなんかしませんよ!」

「良かった」


 朗らかに笑う瑠為くんに、胸がきゅんとした。

 なんてちゃんとした青年なんだ。真守に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

 瑠為くんはくるりと真守の方を見ると、


「ってなわけで、お姉さんと連絡先交換してもいいー?」

「いーよー」


 ぞんざいな返事が聞こえて、「オッケーだって」と瑠為くんがスマホを取り出す。

 私はふわふわと浮つく頭で、瑠為くんと連絡先を交換した。


「やった」


 なんで、そんな、嬉しそうな顔。

 アイドルの連絡先なんて、持ってていいの……!?

 今日からこのスマホは最重要機密だ、絶対なくさないようにしないと、と私はスマホを握りしめた。

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