19.推しのグループ大集合!?(4)
4人が和気あいあいと食べているのを、私は遠くから見守った。
テーブルが4人掛けということを除いても、この画の中に入っていいのは、4人だけなのだ。
この光景が見たくて、ファンは動画を再生するだろう。
私も、こんな4人が見られて良かった。
……いや、別に3人でも良かったな?
真守はいらないし。
「みのりさん」
「え、うん? なに?」
ある程度食べ進めたところで、瑠為くんが私に声をかけた。
まさか食べてる時に声をかけられるとは思わなかったので、一瞬動揺して返事をする。
「一緒に食べない?」
「え!?」
まさかの発言に、私はぶんぶんと手を振った。
「いやいや、スタスタの方々に混ざるわけには!」
「ある程度トークの場面撮れてるから、大丈夫だよ。食べ終わるまでずっと流したりしないでしょ」
「でも、席もないし」
「俺食べ終わったから退くよ」
何故かこんな時ばかり気をきかせて、真守が席を立った。
「ええ……と」
ここまでしてもらって、これ以上遠慮するのも、嫌がってるみたいかと迷って。
「じゃあ……ありがたく」
私は自分の分のカレーライスとポテトサラダをよそって、真守が座っていた席についた。
真守は別の椅子を引っ張ってきて、テーブルの近くに座った。
皆ももう食べ終わりそうだったからちょっと気まずかったけど、瑠為くんが笑顔でこっちを見ているから、気にせず食べてってことなんだろう。
「いただきます」
手を合わせて、カレーライスを口にする。
「ど? ど?」
メンバー以外の感想が気になるのか。ショートが身を乗り出して聞いてきた。
「とっても、おいしいです」
「やったー!」
ショートが嬉しそうにしたので、私も嬉しくなる。
自分が作った料理、人に食べてもらうの、嬉しいよね。わかる。
味わいたいけど、なるべく急いで食べちゃわないと、と口に運んでいると。
「ね、ね。みのりちゃんて、ルイの彼女なの?」
「ぐっ!?」
「ショート!」
衝撃の発言にカレーが喉に詰まりそうになって、瑠為くんがショートを諫める。
「だあーって、ルイがプライベートで仲良くしてる女の子なんて珍しいじゃん」
「友達だから! 変なこと言わないで!」
変なこと。そりゃそうか。友達以上には、なりっこないんだから。
「そうですよ、ショートさん。私なんかじゃ、とてもルイさんには釣り合いませんよ」
私は、わきまえたファンの顔を作った。
なぜか、ちょっと瑠為くんが寂しそうな顔をした気がした。
「ショートでいいよ。ぼく堅苦しいのきらあい。ルイにはタメ口だったじゃん」
「おれも、ユウマでいい」
「ええと……では、お言葉に甘えて」
こほん、とひとつ咳払いをして、私は瑠為くんと喋る時のように切り替えた。
「ねえねえ、ルイとはどこで知り合ったの?」
「真守に会いに来た時に、たまたま瑠為くんが部屋にいたの。そこで」
「へー。やっぱマモルくん経由か」
「そういえば、配信にも出てたよな?」
ユウマの質問に、ぎくりとする。
私的にはあれ、結構黒歴史なんだけど。
「真守から頼まれて。でも、やっぱり私には向いてなかったかな」
「えー? ぼくちょっとだけ見たけど、結構おもしろかったよ」
「見たんだ……! お恥ずかしい姿を……」
「そうでもないよ? やっぱ身内だからかな。マモルくんとのやり取りとか、すごい自然だからさ。配信のために作られたキャラ感が全然ないんだよね。友達とゲームしてるみたいな親近感あって、良かったよ」
「あ、ありがとうございます……」
ショートに褒められてしまった……。
……褒められた、のか?
ちょっと複雑だけど、やっぱり芸能人なんだな。視点が違う。
「ショートとユウマは真守とどう知り合ったの? 瑠為くんとゲーム関係で仲良くなった話は聞いたけど、他のふたりは聞いてなかったから、びっくりしちゃった」
「ルイ経由だよー。でも、マモルくんって配信者の中でも上澄みだからね。他にも芸能人との繋がり結構あるんじゃない? 飲み会とかもたまにいるもんね」
ばっと真守の方に視線を向けると、そのままばっと逸らされた。
こいつ。
いや、芸能人の情報をぺらぺら話していない、という点においては、評価すべきだけど。
配信以外の活動をほとんど黙っているという点においては、家族として心配な部分もある。
芸能界ってきれいな部分だけじゃないし。変なクスリとか流通させてる会に呼ばれたらどうすんだ。
なんか興味本位で手を出しそうな印象がある。つまり信用がない。
成人してるから、飲酒は問題ないけど。どっかで迷惑かけてないだろうか。
私の内心が顔に出ていたのか、ユウマがフォローしてくれた。
「なんだかんだ可愛がられてるから、大丈夫だろ。ルイもそうだけど、悪い大人から守ってくれる大人も、だいたいセットでついてるから」
「そうなの?」
「得なキャラだよねー」
そうなのか。なんだかんだ、真守は真守でうまくやっているらしい。
私が、ちょっと過保護だったんだろうか。
母に甘やかされてきた弟を、私がちゃんとした方に導いてやらないと、と。
真守からしたら、余計なお世話なのはわかってたけど。
もう、たくさんの人たちが、真守の側にはいるみたいだから。
私はそろそろ、お役御免なのかもな。
「――真守がそういうキャラになれたのは、みのりさんのおかげでしょ」
「え?」
優しげな声に視線を向けると、瑠為くんが微笑んでいた。
「いや、私は。怒ってばっかだったし、むしろそういう愛嬌は、多分母の影響で」
「だって、わがままなだけの傍若無人だったら、きっと人から嫌われてたよ。素直でまっすぐで、自分の欲求を遠慮なく通すけど、それが嫌味なく失礼にならないのは、みのりさんの教育のたまものでしょ。ね、真守」
瑠為くんに話を振られた真守は、ごにごにょと言葉を濁しながらも、視線を逸らしたまま呟いた。
「まー……、一応、感謝は、してるよ。俺だって、いい加減母ちゃん甘かったんだなってことくらいわかったし。姉ちゃんの小言なかったら、多分彼女できなかったし。結局フられたけど」
初めて聞く弟からの感謝の言葉に、私は泣きそうな気分だった。
フられたのはお前の自業自得だけどな。調子のって浮気するから。
「ね、ぼくマモルくんの子どもの頃の話ききたーい!」
「おれも興味あるな。すごくバカなことやらかしてそうで」
「よくわかるね、ユウマ」
「おい、俺の恥で盛り上がるのやめろよ!」
そこからは、皆でわいわい楽しい時間を過ごした。
瑠為くんが優しい顔で私を見ていたのが、ちょっとむずがゆかった。




