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推しが弟の友達でした!?  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
第一章

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19/20

19.推しのグループ大集合!?(4)

 4人が和気あいあいと食べているのを、私は遠くから見守った。

 テーブルが4人掛けということを除いても、この画の中に入っていいのは、4人だけなのだ。

 この光景が見たくて、ファンは動画を再生するだろう。

 私も、こんな4人が見られて良かった。

 ……いや、別に3人でも良かったな?

 真守はいらないし。


「みのりさん」

「え、うん? なに?」


 ある程度食べ進めたところで、瑠為くんが私に声をかけた。

 まさか食べてる時に声をかけられるとは思わなかったので、一瞬動揺して返事をする。


「一緒に食べない?」

「え!?」


 まさかの発言に、私はぶんぶんと手を振った。


「いやいや、スタスタの方々に混ざるわけには!」

「ある程度トークの場面撮れてるから、大丈夫だよ。食べ終わるまでずっと流したりしないでしょ」

「でも、席もないし」

「俺食べ終わったから退くよ」


 何故かこんな時ばかり気をきかせて、真守が席を立った。


「ええ……と」


 ここまでしてもらって、これ以上遠慮するのも、嫌がってるみたいかと迷って。


「じゃあ……ありがたく」


 私は自分の分のカレーライスとポテトサラダをよそって、真守が座っていた席についた。

 真守は別の椅子を引っ張ってきて、テーブルの近くに座った。

 皆ももう食べ終わりそうだったからちょっと気まずかったけど、瑠為くんが笑顔でこっちを見ているから、気にせず食べてってことなんだろう。


「いただきます」


 手を合わせて、カレーライスを口にする。


「ど? ど?」


 メンバー以外の感想が気になるのか。ショートが身を乗り出して聞いてきた。


「とっても、おいしいです」

「やったー!」


 ショートが嬉しそうにしたので、私も嬉しくなる。

 自分が作った料理、人に食べてもらうの、嬉しいよね。わかる。

 味わいたいけど、なるべく急いで食べちゃわないと、と口に運んでいると。


「ね、ね。みのりちゃんて、ルイの彼女なの?」

「ぐっ!?」

「ショート!」


 衝撃の発言にカレーが喉に詰まりそうになって、瑠為くんがショートを諫める。


「だあーって、ルイがプライベートで仲良くしてる女の子なんて珍しいじゃん」

「友達だから! 変なこと言わないで!」


 変なこと。そりゃそうか。友達以上には、なりっこないんだから。


「そうですよ、ショートさん。私なんかじゃ、とてもルイさんには釣り合いませんよ」


 私は、わきまえたファンの顔を作った。

 なぜか、ちょっと瑠為くんが寂しそうな顔をした気がした。


「ショートでいいよ。ぼく堅苦しいのきらあい。ルイにはタメ口だったじゃん」

「おれも、ユウマでいい」

「ええと……では、お言葉に甘えて」


 こほん、とひとつ咳払いをして、私は瑠為くんと喋る時のように切り替えた。


「ねえねえ、ルイとはどこで知り合ったの?」

「真守に会いに来た時に、たまたま瑠為くんが部屋にいたの。そこで」

「へー。やっぱマモルくん経由か」

「そういえば、配信にも出てたよな?」


 ユウマの質問に、ぎくりとする。

 私的にはあれ、結構黒歴史なんだけど。


「真守から頼まれて。でも、やっぱり私には向いてなかったかな」

「えー? ぼくちょっとだけ見たけど、結構おもしろかったよ」

「見たんだ……! お恥ずかしい姿を……」

「そうでもないよ? やっぱ身内だからかな。マモルくんとのやり取りとか、すごい自然だからさ。配信のために作られたキャラ感が全然ないんだよね。友達とゲームしてるみたいな親近感あって、良かったよ」

「あ、ありがとうございます……」


 ショートに褒められてしまった……。

 ……褒められた、のか?

 ちょっと複雑だけど、やっぱり芸能人なんだな。視点が違う。


「ショートとユウマは真守とどう知り合ったの? 瑠為くんとゲーム関係で仲良くなった話は聞いたけど、他のふたりは聞いてなかったから、びっくりしちゃった」

「ルイ経由だよー。でも、マモルくんって配信者の中でも上澄みだからね。他にも芸能人との繋がり結構あるんじゃない? 飲み会とかもたまにいるもんね」


 ばっと真守の方に視線を向けると、そのままばっと逸らされた。

 こいつ。

 いや、芸能人の情報をぺらぺら話していない、という点においては、評価すべきだけど。

 配信以外の活動をほとんど黙っているという点においては、家族として心配な部分もある。

 芸能界ってきれいな部分だけじゃないし。変なクスリとか流通させてる会に呼ばれたらどうすんだ。

 なんか興味本位で手を出しそうな印象がある。つまり信用がない。

 成人してるから、飲酒は問題ないけど。どっかで迷惑かけてないだろうか。


 私の内心が顔に出ていたのか、ユウマがフォローしてくれた。


「なんだかんだ可愛がられてるから、大丈夫だろ。ルイもそうだけど、悪い大人から守ってくれる大人も、だいたいセットでついてるから」

「そうなの?」

「得なキャラだよねー」


 そうなのか。なんだかんだ、真守は真守でうまくやっているらしい。

 私が、ちょっと過保護だったんだろうか。

 母に甘やかされてきた弟を、私がちゃんとした方に導いてやらないと、と。

 真守からしたら、余計なお世話なのはわかってたけど。

 もう、たくさんの人たちが、真守の側にはいるみたいだから。

 私はそろそろ、お役御免なのかもな。


「――真守がそういうキャラになれたのは、みのりさんのおかげでしょ」

「え?」


 優しげな声に視線を向けると、瑠為くんが微笑んでいた。


「いや、私は。怒ってばっかだったし、むしろそういう愛嬌は、多分母の影響で」

「だって、わがままなだけの傍若無人だったら、きっと人から嫌われてたよ。素直でまっすぐで、自分の欲求を遠慮なく通すけど、それが嫌味なく失礼にならないのは、みのりさんの教育のたまものでしょ。ね、真守」


 瑠為くんに話を振られた真守は、ごにごにょと言葉を濁しながらも、視線を逸らしたまま呟いた。


「まー……、一応、感謝は、してるよ。俺だって、いい加減母ちゃん甘かったんだなってことくらいわかったし。姉ちゃんの小言なかったら、多分彼女できなかったし。結局フられたけど」


 初めて聞く弟からの感謝の言葉に、私は泣きそうな気分だった。

 フられたのはお前の自業自得だけどな。調子のって浮気するから。


「ね、ぼくマモルくんの子どもの頃の話ききたーい!」

「おれも興味あるな。すごくバカなことやらかしてそうで」

「よくわかるね、ユウマ」

「おい、俺の恥で盛り上がるのやめろよ!」


 そこからは、皆でわいわい楽しい時間を過ごした。

 瑠為くんが優しい顔で私を見ていたのが、ちょっとむずがゆかった。

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