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推しが弟の友達でした!?  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
第一章

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18/20

18.推しのグループ大集合!?(3)

「ルイ、煮込むのってどれくらい?」

「あくを取りながら、15分くらいかな」

「えっめんどくさあい! これもっと火を強くしたら短縮できないの?」

「こら! 火は弱火から中火! 焦げるから!」

「うえー」

「じゃ、水で煮込んでいる間に、ポテトサラダの準備を進めていきます」

「わーい!」

「ショートは鍋に集中! マモル、見張りよろしく」

「ういっす」


 ひとりで火を見るのが危ないと判断されたショートの隣に、真守が見張りとして付くことになった。

 一応真守は料理できるし、1対1で張り付いているなら安心だろう。


「えー、まず、じゃがいもを用意します。これはさっきの皮を剥いたやつがあるので、これ使います」


 ボールに入った、皮を剥いてひと口大に切れたじゃがいもをカメラに向ける。


「丸ごと茹でた場合は、そのまま皮を剥いて、潰します。今回は切れたものがあるので、これをこのままレンジで加熱します。じゃがいもはしわしわになりやすいので、できれば茹でた方が失敗しないですが、レンジの場合は様子見ながらまず短時間でやりましょう」


 少しだけ水を振って、ラップをかけて、レンジで加熱。


「温かい内に潰します。はい、ユウマ」

「わかった」


 マッシャーを渡されたユウマが、じゃがいもを力の限り押し潰す。


「ちょ、ユウマ、すり潰さないで。ペーストになってる」

「ん? 潰すんだろう?」

「そうなんだけど……軽く押し潰した方が、じゃがいもの食感が残るから……あーあー」


 私は滑らかなポテトサラダも結構好きだけど。

 圧縮されたじゃがいもを見て、瑠為くんが頭を抱えていた。

 あーれは……滑らかともちょっと違うか……?

 考えた末、私は予め用意しておいたマッシュポテトを、すっと横から差し出した。

 気づいた瑠為くんが、それを受け取って。


「えー……加熱したじゃがいもをマッシャーで潰したものが、こちらになります」


 適度に潰されたじゃがいもの入ったボールを、瑠為くんがカメラに向ける。


「じゃがいもは、このまま暫く置いて粗熱を取ります。……まあ、これは既に冷めてるんですけど……。その間に、他の野菜を用意します」


 野菜はカレーと同じ人参と玉ねぎ、そしてきゅうり。


「きゅうりは頭を尻尾を落として、ピーラーで皮を剥きます。はい、ユウマ」

「わかった」


 ユウマがピーラーで勢いよく皮を剥く。


「ちょちょちょ! それ手の皮まで剥ける! あっぶないなもう!」

「そうか?」

「もっとゆっくり! 押さえる手に気をつけて!」


 ユウマが意識してゆっくり、ピーラーで皮を剥く。


「全部剥けたら、今度はスライス。これはスライサーがあるから、こうやって」


 瑠為くんがお手本で何枚かスライスする。

 それから、スライサーをユウマに渡した。


「ゆっくりね! 指までスライスしないでね!」

「わかった」


 うーん、この人たちに火とか刃物触らせるの、危ないなあ。

 番組、ちゃんと成り立つんだろうか。


「スライスしたきゅうりは、塩もみすると馴染みやすくなるけど……今回は省略。あとは玉ねぎと人参を、薄く切って加熱します。が」


 きゅうりでやっとだったユウマに、玉ねぎと人参まではきついだろう。

 ちらりと瑠為くんが視線を寄越したので、私は心得たようにボールを渡した。


「はいそうしたものがこちらです。プラス、ハムも短冊切りしてあります」

「おお。準備がいいな」

「でないと鍋の方が心配だからね! ショート、どんな感じ?」

「いい感じ~!」


 真守に見張らせておいたおかげで、事故もなく、無事鍋は煮えているようだった。

 いや、普通煮てるだけでそうそう事故は起こらないんだけどね。


「よし、それじゃそろそろルー入れよっか。いったん火を止めて」

「なんで?」

「ダマになるからだよ。でも、初心者はレシピに疑問を持たずに、とりあえず書かれてる通りに作ろう。省略とかせずに。面倒くさがらずに」

「はーい」


 瑠為くんの威圧に、おとなしく返事をして、ショートが火を止める。

 それからルーを割り入れて、ぐるぐると混ぜて溶かしていく。


「ちゃんと全部溶かしきってね」

「ほーい」

「十分にルーが溶けたら、また弱火で煮込みます」

「今度はどのくらい?」

「10分くらいかな」

「そうなんだ。短いね。カレーってめちゃくちゃ煮込んでるイメージだった」

「本格派ならね。家庭用なんだから、これで十分」

「隠し味は入れないの? チョコとか、コーヒーとか」

「初心者は、レシピに、忠実に」

「……はーい」


 背景に暗雲を背負った瑠為くんを見て、ショートはすぐに引き下がった。

 うーん、ほっといたら料理で実験しだすタイプ。


「ルーを入れたあとは焦げつきやすいから、底の方からしっかりかき混ぜ続けてね」

「えー!」

「えーじゃない。火力もあげない! マモル、よろしく」

「がってん」


 ショートの見張りを真守に任せて、瑠為くんは再びポテトサラダへ。


「さて、この頃にはじゃがいもの粗熱も取れているので、混ぜていきます」


 今回は冷めているものを渡したけど、本来だったらあそこで加熱しているから、まあこのくらいだろう。


「味はシンプルにマヨネーズと塩コショウ。慣れたら色々自分好みに調節すれば」


 はい、と瑠為くんがユウマにボールとスプーンを渡す。

 調味料を入れたボールを、ユウマが混ぜていく。


「瑠為は何か入れるのか?」

「俺? 練乳入れるかな」

「練乳!?」


 ぎょっとしたようにユウマが声を上げる。


「な、なんだよ」

「ポテトサラダだぞ? デザートじゃないんだぞ?」

「合うんだよ! 今度食べてみなって!」

「いや……練乳だろ……?」


 今日は教えるばかりだったから、瑠為くんがたじたじになっている画はレアだ。

 珍しい表情に、私もこっそり笑った。

 ポテトサラダが完成したので、人数分の皿に盛りつける。


「カレーは? どんな感じ?」

「おいしそ~!」

「よし、そろそろそっちも盛ろうか」


 瑠為くんが言い出したところで、ショートが首を傾げた。


「そういえば、ごはんってあるの?」


 瑠為くんが固まった。

 ぎぎぎ、とユウマの方を向いて、


「米って……誰か……炊いたっけ……?」

「いや? おれたちは言われたことしかやってないからな」


 瑠為くんが膝から崩れ落ちた。


「え!? ごはんないの!?」

「カレーだけ作ればいいと思っていて、盲点だったな」


 ショートとユウマが顔を見合わせて、爆笑する。

 堪えていたのか、真守もそれに合わせて声を上げて笑った。


「カ、カレーなのに! ライスないって!」

「いや、まだ、パンで食べるという手がだな」

「ごめん、うちパンないわ」

「詰んだー!」


 爆笑が埋め尽くす中、私は膝をついた瑠為くんに、そっとパック米を差し出した。


「みのりさん……これ……」

「いえ、あの、ご飯炊くの失敗するかもって思って」


 お約束的には、洗剤入れて洗ったりとか、水を入れずに炊いたりとか。

 そういうハプニングを予想して、レンジで加熱するだけのパック米を、人数分用意していた。

 真守から頼まれたリストにはなかったけど、企画を聞いたあと、これは要るだろうと思って、下ごしらえの時間に急いでコンビニに行って買っておいたのだ。


「ありがとうございます……!」


 瑠為くんは心底感謝した様子でパック米を受け取り、立ち上がってカメラにそれを向けた。

 そしてやけくそ気味に叫ぶ。


「今回は! 誰も! 米の不在に気づかなかったので! スタッフさんが気を利かせて用意してくれた、こちらを使用します!」

「やった~! ごはんだ~!」


 そうして無事、カレーライスとポテトサラダが、テーブルに並べられた。

 4人掛けの席に、スタスタの3人と、真守が座る。

 席についた全員を見て、瑠為くんが号令をかける。


「それでは、皆さんご一緒に」

「「「「いただきます!」」」」

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