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推しが弟の友達でした!?  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
第一章

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13/20

13.推しの熱愛発覚!?

 年も明けて。

 ついにルイが主演を務めるドラマの放送が開始となった。

 月曜9時のゴールデンタイム。

 私はテレビの前で、正座待機していた。

 SNSなどで感想を共有しながら見る人もいるけど、私は断然集中派。

 片時も目を離さず、テレビに食い入るようにして見ていたい。

 感想を吐き出すのはそのあとだ。


「始まった……!」


 画面に学生服のルイが映し出されると、もうそれだけで歓声を上げたくなる。

 24歳で学生役とは。でも全然違和感ない。

 冒頭のシーンが終わって、音楽が流れ出し、【水縹の恋】と大きくタイトルが表示された。


 水縹の恋は、いたって王道の学園青春恋愛ストーリーだ。

 主人公の正人は品行方正な優等生。だけど、毎日に物足りなさを感じていた。

 そこに、天真爛漫なヒロインの宏美が転校してくる。

 宏美は正人からすると突飛な発言や行動が多く、正人は振り回されることになる。

 けれど次第にそれが嫌ではないことに気づき、正人は恋を自覚する。


 しっかりものの正人の役は、素の瑠為くんと近いものがあるし、役には合っていると思う。

 はらはらしながら見ていたけれど、瑠為くんの芝居は雪乃さんに引っ張られている部分もあるのか、そんなに違和感なく見られた。

 きちんとドラマに没頭できたし、終わる頃には、私は放心状態だった。


「ふー……」


 推しの、初めての、ドラマ主演。

 無事見守れた、という達成感がある。

 余韻を感じながら、SNSをチェックする。

 概ね好意的な感想ばかりで、私はうんうんと頷きながら、満足げに眺めていた。

 暫く巡回した後は、録画をもう1回。

 今度は感想を皆と共有しながら。

 私のアカウントは、ルイ推しの人たちとだけ繋がってる鍵アカウントだから、瑠為くんが見ることはない。

 安心して、気持ち悪いオタクの感想を吐露する。


「はー……。これはますます、ルイの人気が出てしまう」


 私はルイ推しだけど、同担の人たちと繋がっていることからわかるように、同担歓迎のスタイルだ。

 推しにはもっともっと輝いてほしいし、推しの魅力はたくさんの人に知ってほしい。

 ずっとそう思っていた。

 だけど、今は。


 瑠為くんが遠い存在になっていくのが、少しだけ、寂しくもある。

 ルイと瑠為くんは別ものという考え方もできるかもしれないけど。

 だってそうじゃなきゃ、瑠為くんはプライベートでも、ファンが納得するような人格者としか付き合えないことになってしまうではないか。

 現に真守と友達なんだし。いや、あいつだって、チャンネル登録者数12万の配信者だけど。

 瑠為くんにだって、昔の同級生とか、地元の友達とか、芸能界だけじゃない、普通の人間関係があるはずだ。

 あんまり特別視しすぎるのも良くない。

 私はアクセサリーケースからキーホルダーを取り出して、それを眺めた。


 これが、私が瑠為くんと友達である証拠。

 一緒に遊んで、一緒に笑って、一緒に過ごした。

 夢みたいな時間だったけど、あの時間を共有したのは、瑠為くんだから。

 テレビで見るのとは違う顔だから。

 私はそれを、ちゃんと大事にしなきゃ。



 ☆★☆



「先輩先輩! 昨日のドラマ見ました?」

「当たり前でしょ、美心ちゃん」

「ドヤ顔だ。どうでした?」

「推しが……尊かった……」

「先輩通常運転だなあ」


 翌日の会社で、私は後輩にルイの良さについて語った。

 エンタメの会社なので、オタクは多いし、流行を追うのも仕事の内なので、こういった会話に対する反応は優しい。


「まさか学生役でくるとは思いませんでしたけど、ちょっと顔幼いところあるし、ぴったりでしたよね~」

「そうなの……! まさか推しのブレザー姿が見られるとは、夢にも思わなかった……!」

「良かったじゃないですか。ドラマの放送に合わせて、衣装でのオフショットとかバラエティ出演とかも増えるし」

「そーなの! そうなの! もうテレビの録画が凄いことになってる」

「先輩配信見ないんですか?」

「見なくはないけどね。推しの姿は何度でも楽しみたいから、基本録画」

「ガチですねー」


 だって配信に頼ってると、忙しくて溜めてたらうっかり配信期限が切れていた……なんてことがあるから。

 ルイのために、レコーダーを買った。

 これで推しの姿を何度でも繰り返し楽しめる。


「それにしても、ヒロインの雪乃、やばいですね。さすが朝ドラもこなした清純派美女。ルイの隣に並んでも全く見劣りしないどころか、相乗効果で輝きがすごい。あの人発光してません?」

「……わかる……」


 なんの加工もしていない生でも、超がつく美人だった。


「ドラマでツーショも増えるでしょうし、ルイ推しとしては複雑なんじゃないですか?」

「甘いわよ美心ちゃん。美しいものの隣に美しいものがあって、何の文句があるというのか。あのビジュがあるからこそ、ドラマの視聴率だっていいわけだし。むしろ感謝しかないわ」


 可愛いだけの下手な新人アイドルなんかと組まされたら、目もあてられなかっただろうし。

 役者経験の浅いルイに、実力派で、ファンも多い美人女優を連れてきてくれた制作陣の判断は正しい。

 瑠為くんの隣に、いつも美女がいると思うと、正直全くモヤつかないわけではないけど。

 ドラマで共演するんだから、きっと長い時間一緒にいるんだろうな、とか思うけど。

 ルイのことを考えれば、それはいいことなんだから。

 そうやって、大人の私は、気持ちを押し殺した。


 そもそも、プライベートで瑠為くんと友達だと言っても、友達にだって妬く権利なんかない。

 だって友達なんだから。

 美人の彼女ができたって、笑って祝福するのが、友達というものだろう。

 そう思っていた。

 ルイの、熱愛報道を見るまでは。

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