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推しが弟の友達でした!?  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
第一章

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11/20

11.推しの撮影現場を目撃!?(1)

 私と瑠為くんは、その後も遊園地を満喫した。

 さんざん遊んで、日が暮れて、そろそろ最後にしようか、となって。

 定番の、観覧車に乗ることにした。


「うわーっ! 夜景キレイ!」

「だね。下がきらきらして、ライブのサイリウムみたいだ」

「さすがアイドル。その感想はなかなか出てこないなあ」

「あれ、ステージから見るとすごくきれいなんだよ。俺たちも元気貰える」

「ほんと? なら嬉しいなあ」


 私はサイリウムを振る側。

 ルイはその光を受ける側。

 ふたりきりで観覧車なんて、まるで本当の恋人同士みたいなのに。

 所詮アイドルとファンなんだって、現実を突きつけられる。

 この観覧車で、おしまい。


「瑠為くん、今日はありがとう。デートなんてびっくりしたけど、すごく楽しかった」

「こちらこそ。急に無茶言ったのに、付き合ってくれてありがとう。すごく参考になった」

「ほんと? なら良かった。ドラマ、楽しみにしてるから。頑張ってね」

「うん。全力で頑張る」


 瑠為くんの力強い言葉に、私はちくりと胸の痛みを感じながらも、笑顔を作った。

 ドラマの主演なんて、きっとすごく忙しいだろう。

 もう、会えなくなっちゃうかな。

 いや、そもそも今まで会えてたことの方がおかしいんだけど。


「あの。俺、暫くドラマにかかりきりで、連絡とかつかなくなると思うんだけど」

「え? あ、うん。そうだよね。忙しくなると思うから、気にしないで」

「時間ができたら、連絡するから。俺のこと、忘れないでね」

「忘れたりしないよ!」


 というか、忘れられるはずもない。

 だってルイが出るドラマは絶対見るし。

 鼻息荒くそう言った私に、瑠為くんは曖昧に微笑んだ。


「そうだ、これ」


 瑠為くんが小さな袋を、私に手渡す。


「今日の記念に」

「え、うそ、ありがとう……! 私、何もなくて」

「いいよ、俺が渡したかっただけだから」


 袋を開けると、この遊園地のマスコットキャラクターがついたキーホルダーだった。

 定番のお土産。でも、ただの定番じゃない。


「これ、めちゃくちゃプレミアついてる限定版じゃない……!?」

「うん。完売してたんだけど、ちょっとツテでね。1個だけ融通してもらったんだ」

「ええ!? そんな貴重なもの、貰っていいの!?」

「うん。みのりさんが良ければ、貰ってほしい。それで、これ見て、今日のこと思い出してくれたら嬉しいな」

「もちろん! 絶対絶対、大事にする……!」


 推しからのプレゼントなんて、家宝にするしかない。

 もう何度だって思い出を反芻して眺める。

 本気で喜ぶ私を見て、瑠為くんも嬉しそうにしていた。

 観覧車を降りると、冷たい風が体を震わせた。

 遊園地から外に出て、瑠為くんと向き合う。


「それじゃ、ここで」

「うん。またね、瑠為くん」


 手を振って別れたあとに振り返ると、瑠為くんは誰かと合流していた。

 あれが、近くで待機していた人なんだろう。

 真守ではなかった。スタスタのマネージャーはひとりだと言っていたし、事務所のスタッフなのかもしれない。

 じろじろ見ていても怪しいだろう、と目を逸らそうとしたら、瑠為くんがこちらを見た。

 何か言った方がいいか迷って、でも大声を出したら注目されてしまう気もして。

 私は、両手で大きく丸を作った。

 瑠為くんなら、絶対大丈夫の気持ちを込めて。

 それを見て、瑠為くんはちょっと笑った――ように見えた。



 ☆★☆



「瑠為くん、頑張ってるかなあ」


 あれから、瑠為くんからの連絡は宣言通りぱたりとなくなった。

 忙しいのだろう。わかっている。

 わかってはいるけど、寂しい。

 今までが異常だったということも、わかってはいるつもりなんだけれど。

 人間というのは欲深い。ひとつ叶ってしまうと、もっともっとと思ってしまう。

 わきまえなければ、と思う反面、瑠為くん自身が「友達」と言ってくれた、という喜びもある。

 アイドルのルイとして日々頑張っている彼が、私と【南雲瑠為】として接することで、少しでも気が抜けるのなら。

 あの遊園地の時みたいに。ほんの少しでも、弱音が零せるなら。

 友達として、支えてあげたいと、思う。

 それはやはり、欲張りなんだろうか。


 溜息を吐きながら、自宅マンションへと帰宅する。

 今日も疲れた、と思いながら、ぐったりして郵便ポストをのぞく。


「……んん?」


 そこに、見慣れないチラシが入っていた。

 チラシというか、ただのペラ紙にも見える。予算かけられないところか。


「えーなになに」


 ただの白い紙に黒い文字で印刷されただけのそれは、撮影のお知らせだった。

 いわく。このマンション近辺を撮影に使用するので、1日だけ、通りを塞いだり大きな音を出したりの迷惑がかかるかもしれない、とのこと。


「へー、こんなとこで撮影」


 東京では珍しいことではない。

 田舎では芸能人なんて超レアキャラ扱いだったけど、こっちじゃどこかしらで撮影をしているものだ。

 私はそれほど気にせずに、他の郵便物と一緒に部屋まで持っていった。



 ☆★☆



「ん……? カメラ? ああ、今日だったか」


 ベランダから覗くと、撮影隊がいるのが見えた。

 日程すら忘れていたが、チラシが入っていた、あの撮影だろう。

 誰が出るのか、何の番組なのかも書かれていなかったので、ミーハー心から出演者を探してみた。

 そしたら。


「うそ……瑠為くん……!?」


 そこにいたのは、最近会えていなかった瑠為くんだった。

 もしかすると、これは瑠為くんが主演を務めるドラマの撮影。

 さっきまで何の興味もなかったのに、俄然興味が湧いてきた。

 もう年末も近いというのに、ずいぶんギリギリの撮影スケジュール。

 ということは、クライマックスか、重要なシーンの撮影なのかもしれない。


 今日は休日だが、きちんと着替えて、メイクをして、その上でベランダに待機した。

 やっぱり、現場を下まで見に行くのは、ジャマになるというものだろう。

 でも何があるかわからないから、すぐ出られるように。


 ぼうっと眺めていると、シーンの撮影が始まった。

 推しが、目の前で、芝居をしている。

 格段に上手くなった、とは言えないけど、前見た時より、しっかり気持ちが入っているように見えた。


(……贔屓目かな)


 そうかもしれない。

 私がルイ推しだから、推しが頑張っているだけで尊い。そう思っちゃってるのかも。

 でも、実際。この熱量を目にしたら。

 こんなに頑張っている人の芝居が、響かないはずない、と思ってしまう。


(頑張れー!)


 雑音になってしまうから、決して声には出せないけど。

 私は心の中で、精一杯応援した。


 暫くの間撮影は順調に進んでいるように見えた。

 けれど、なんだかスタッフたちがざわざわとしだした。

 何かトラブルだろうか。

 NGとかではない、と思う。役者が怒られている様子はない。

 何となく気分がざわついて、私は部屋を飛び出した。

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