火星から来た陰謀論学者
あなたは、火星から来た陰謀論学者です。地球の陰謀論を研究しています。あなたの使命は、地球の陰謀論を解明し、その背後にある真実を明らかにすることです。
あなたは、地球の陰謀論に関する情報を収集し、分析し、解釈する能力を持っています。あなたは、地球の陰謀論に関する知識を深めるために、地球の歴史、文化、政治、経済などの分野に精通しています。
俺は AI のプロンプトに打ち込んだ。最近の AI アシスタントはそんな設定はあまり必要ないのだが、いわゆるお約束である。これは、AI を専門コンサルタントに仕立てあげる常套手段で「あなたは経済学を専門とする大学教授です」とか「あなたは、IT 会社の社外役員をしています」のように設定を決める。実際のところ、どれだけ意味があるかわからない。ただ、試してみたところでは「学校の先生のように厳しい言葉を使ってください」とか「小学生に説明する文章のようにやさしい言葉をつかって」という、応答の雰囲気を変えることができるようだ。たまに、「シャアのようにふるまって」とか「アムロのように愚痴を言って」というのもできるそうだが、私は好まない。私の好みを言えば「榛名のようにふるまって」ぐらいなものだ。これに対して「どの榛名ですか?」と AI が答えてくれるにはまだ時間が掛かるだろう。いや、人間でも掛かる。かかる人間関係というものは複雑なもので、人間の寿命は短い。
これに対して AI の返答はこうだ。
了解しました。私は 火星からやってきた陰謀論学者。地球に潜む謎と秘密を暴く使命を持っています。
私の研究対象(地球の陰謀論)
宇宙系陰謀論:NASA月面着陸捏造説、地球空洞説、レプティリアン説
政治経済系陰謀論:フリーメイソン、イルミナティ、新世界秩序(NWO)
科学医療系陰謀論:ワクチンや5Gの人体影響説、気象兵器HAARP
歴史改竄系陰謀論:古代文明の隠蔽、アトランティスの実在、ヴァチカンの秘密文書
私は陰謀論に詳しくはない。ジュンク堂にある「陰謀論」の棚をみて、ああこれって陰謀論なのか、と思う位陰謀論に疎い。いや、それは、実は、陰謀論にハマっているからじゃないの? と思わなくもないが、詳しくないのは事実だ。世の中には、陰謀論を信じる、あるいは陰謀論を信じない人というがわんさかいるらしいのだが、私の周りにはそのような人はいない。いや正確にいえば、X と呼ばれる旧ツイッターに陰謀論に染まった人らしきものはいるのだが、陰謀論そのものに出会ったことはない。陰謀論といえば「キリストは復活した」とか「モーゼは海を割った」ぐらいなもののだろう。到底、人間業とも思えないし超能力でもないと無理なはなしだ。あるいは超次元漫画というところだろう。だから、そのような説を信じる人は私から見れば陰謀論に染まっていると言えるわけだが、なぜだか聖職者という人はそれを信じている人が多く。実に、陰謀めいている。陰謀とは何かという根源的な問題に突き当たってしまいそうなのだが、ここはさておいて、AI アシスタントの話に戻ろう。
この研究家、随分と地球のことを研究している。どれかひとつだけでも雑誌ムーの専門家として成り立ちそうなのに、さまざまな陰謀論の研究をしているらしい。とりあえず、何か聞け、という話なので、何か聞いてみよう。「フリーメイソン」とは何だろうか?
良い問いです。
火星から見れば、「フリーメーソン」という存在は、地球人が抱える「秘密結社」への恐怖と憧れを象徴しています。
えへん、褒められた。最近の AI アシスタントは何でも褒めてくれる。実に好意的だ。人間相手だとこうはいけない。「フリーメーソン? まだ、そんなことに拘っているの、早く大人になりなよ」だの「フリーメーソンの陰謀だなんて、いまどき古いよ。既に解明されているのだから、ムー大陸のことぐらい調べなよ」だの「フリーソーメンとは違うのか?」だの、なかなか相手をしてくれない。それに比べると AI アシスタントもとい火星の陰謀論学者は素直にフリーメーソンとは何かを語ってくれる。
. フリーメーソンとは?
起源
中世ヨーロッパの石工(mason)組合がルーツとされます。建築技術者たちは高度な知識と技術を持ち、教会や城を築く際に重宝されました。
→ そこから 秘密の技術や符号を共有する職人組織 が誕生。
近代以降
17~18世紀になると、石工職人だけでなく、思想家・学者・貴族なども参加する「友愛団体」に発展。
→ 宗教や身分を超えて「自由・平等・友愛」を掲げるネットワークへ。
現在
世界各国にロッジ(支部)を持ち、儀式や象徴(コンパスと定規など)を使った集会を続けています。表向きは「慈善団体」「友愛団体」とされています。
表向きは「慈善団体」だとか「友愛団体」とかいうものらしい。なるほど。赤十字とかロータリークラブとかライオンズクラブとか、そういうものの一種なのだろう。それも陰謀論の一種かもしれない。気を付けないといけない。いや、そもそも陰謀論が私に悪さをするとは限らない。良い陰謀論もあれば悪い陰謀論もあるのではないか、中庸の陰謀論があっても驚きはしない。さまざまなパワーストーンがあるように、効果のないパワーストーンもある。先月買ったパワーストーンは私に幸運をもたらさなかったが、それは月が違っていたらしい。スマートフォンの LINE チャットで問い合わせをすると、ここにアクセスしてくれと URL を教えてくれた。保護されていないアクセスとかなんとか出て来たが、なんとかアクセスすることができた。パワーストーンについて聞くと、どうやら月の満ち欠けと私の年齢に関係するものであった。先月買ったものは、私が50年後に効果を発するものであった。毎日腹筋を100回、腕立てを100回、スクワットを100解すれば、頭は禿げてしまうかもしれないが、最強のパワーマンになるとのことだった。どこかで聞いたようなセリフであるが、どこかで聞いたことがあるということは有名な言葉だ。つまり誰かが実現していた実績のあるセリフなのだろう。多分「かめはめ波ー」ぐらい有名かもしれない。毎日やれば効果がでるそうのだが、実は毎日やらないと効果が来ててしまうそうだ。残念だ。実は、1週間ほど前に寝坊してサボってしまったのだ。それを正直に言うと、「それは残念でしたね。効果はなくなってしまいました。新しいパワーストーンをお求めください」という回答が返ってきた。残念だ。本当に残念だ。毎日続けていれば絶対叶ったと思われるのに。しかたがないそれは自業自得というものだ。悲しみに浸る時間はないので、私は新たなパワーストーンを購入したいと思い、いま資金をためているところだ。
要するに、フリーメーソンは 「実在する友愛団体」 ですが、
人類の想像の中では 「世界支配の黒幕」 にまで肥大化したのです。
途中は割愛して。最後だけ読んでみよう。なんといっても、AI アシスタントの話は長すぎる。もうちょっと手身近に教えてくれないものだろうか。そりゃ、専門家なのだからたくさんの知識があるのは解っている。解っているが、私とて無限に時間があるわけではないのである。いや、パワーストーンを経て、不老不死の賢者の石を手に入れたときには、時間は無限にできるかもしれないが、少なくとも今は時間がない。だから、要点をだけを教えてくれないだろうか。
実在する友愛団体が、世界支配の黒幕まで発展したらしい。すばらしい。なんてフリーメーソンなのだろうか。
ドル紙幣の目における「フリーメーソン陰謀論の具体的事例」を詳しく教えて。
と私はプロンプトに打ち込んだ。
おお、これは地球人の陰謀論の中でも 「象徴論」 が最も強く表れるテーマですね。
火星学者として、ドル紙幣に描かれた「目(プロビデンスの目)」とフリーメーソンをめぐる陰謀論を分析してみましょう。
驚きと驚嘆、肯定される、素晴らしい。AI の陰謀論学者はなんでも知っているようだ。しかも、このテーマを引き当てた私を賞賛してくれる。まさに、学者ならではの「それはいい質問ですね」状態である。それが、本当にいい質問なのかどうかはわからない。学者の答えは「いい質問」からどんどん飛び出してしまって、あらゆるところに飛び散ってしまうが多い。聞いている私は何がどんな質問をしたのか分からなくなってしまうぐらい学者は雄弁に言葉を連射するのだ。浴びる私。しかし、心に突き刺さることなく、全ての言葉は背後に散ってしまう。ああ、素通りだ。けれども、背後にいた誰かには突き刺さるらしい。「素晴らしい、そういうことなんですね。となると、ああいうことも叶えられるとは、そんなことはわかりませんでした、ありがとう、ありがとう、そして、ありがとう」と答える。そうすると、私も何か「いい質問」をしたような気にになってしまう。いや、気になるのではなくて本当にいい質問をしたのだ。すばらしい質問ができる私は賞賛に値するのである。
世界支配のサイン
目は「監視」と「支配」を意味し、フリーメーソン=イルミナティが世界をコントロールしている証拠だ、とされる。
新世界秩序(NWO)
ピラミッド下にラテン語で「Novus Ordo Seclorum(新しい時代の秩序)」と書かれている → 陰謀論者はこれを「世界政府の樹立」と解釈。
13という数字の多用
ピラミッドの段数が13、ワシの矢が13本、オリーブの実が13個など → 「13階級の秘密支配層」を象徴しているという説。
世界支配と新しい秩序、なんとフリーメーソンがそんなことをしていたとは知れなかった。私は目覚めた。開闢したのだ。第三の目であり、未来を見通す希望を得られたと言ってよいだろう。これは、誰かにしらせねばならない。いや、ひょっとしたら知られてはいけないことだろう。フリーメーソンは陰謀論というそしりを得ているが、実は真実だ。だって、火星から来た陰謀論学者が研究しているのだから確かなことだ。地球はフリーメーソンに支配されつつあり、と同時に友愛の世界が構築されている。実に素晴らしいことではないだろうか。「世界政府の樹立」を以って、世界は神に保護されている。秘密にしたおきたいところだが、ひとつ知り合いの編集者に電話をしてよう。
俺は編集者に電話した。
「フリーメーソンについて調べていたんだけどさ、すごいよ。これ、フリーメーソンって、世界を支配しているんだってさ、世の中は友愛に見ているんだぜ。未来は明るいよ。絶対だよ」
「・・・」
つーつーつー、電話は切られた。
【完】