夫が浮気しました。「本気じゃないんだ」と言いますが、許せません。なのに我が国では、夫の同意がなければ、妻は離縁することができません。ですから、実力で法律を超えてみせます。離婚を勝ち取ってやりますわ!
私、マーベル・ライン侯爵夫人は、結婚三年目で別居に踏み切りました。
原因は、私の夫、バーク・ライン侯爵の浮気です。
相手は、夫の幼馴染のキャリー・ペイン子爵令嬢。
七つも年下で、ピンクの髪をした女の子です。
春の舞踏会で、箱入り娘のキャリー嬢が、自ら私に近寄って来て、堂々と非難してきたことによって、夫の浮気が発覚しました。
「マーベル様。
貴女は名誉あるライン侯爵家の奥方でありながら、どうしてご主人様をないがしろになさるのですか。
バーク様は私を抱き締めながら、おっしゃいました。
『マーベルは、君みたいに優しくない。
好きにやらせてくれないし、領地経営に関しても、勝手に口出ししてくる。
俺を立ててもくれないし、控えるということを知らない』と。
これではバーク様が、お可哀想です」
褐色の瞳を涙でいっぱいにしながら、そう言い捨てて、私から背を向け、キャリー嬢は走り去ってしまいました。
私の周りで、扇子を広げながら噂話に興じていた連中は、
「きゃああ! ついに宣戦布告よ」
「ようやく戦う勇気が出来たのね!」
などと、はしゃいでいます。
すでに彼女たち貴族夫人、令嬢の間では、夫のバーク・ライン侯爵と、彼女、キャリー・ペイン子爵令嬢とがデキていることは、周知の事実であったようです。
知らなかったのは、どうやら私だけみたいでした。
私は青いドレスの裾をたくし上げ、銀髪をなびかせて、舞踏会場から立ち去りました。
そして深夜ーー。
酩酊した状態で帰宅した夫バークに、私、マーベルは青い瞳を怒らせながら、詰問したのです。
夫は、赤い貴族服をだらしなくはだけたまま、大柄の身体をソファに横たえたままに聞いていました。
「キャリー嬢を抱き締めたっていうのは、ほんとうなの?
いえーー抱き締めたって、そもそも、いったい何処で?
まさか、ベッドの上じゃないでしょうね!?
それに、キャリー嬢が言うには、貴方が私のことを、
『好きにやらせてくれない』
ってボヤいたそうだけど、いったい何のことをさすのですか?
貴方が無駄に狩猟にお金を費やすのも、
『男の付き合いだ』
と言われるので黙っていたし、領地経営に関しても、
『面倒だから、家宰と相談してやってくれ』
と言われたので帳簿を繰りながら、農作物や工芸品による収益確認や、肥料や原材料の流通を適宜手配しておきました。
しかも、使用人が結託して物資の横流しをしていることを摘発したりして、収益を増加させました。
それなのに、いったい何が不満なんです!?」
夫は一気に酔いが醒めたようで、青褪めた顔になって、ソファに座り直し、言い訳を始めます。
「いや、おまえには感謝してるよ。
俺が狩猟に打ち込めるのは、おまえが領地を見てくれるからだ。
うん。キャリー嬢は箱入りだからな。
夫婦間の、そういった綾を知らんのだ。
実際、抱きつかれて一緒になってシーツに倒れ込むと、そういった理知的な話をまったく受け付けなくなる娘で……」
「では、やっぱり、ベットの上で、あのピンクの小娘を抱いたのですね?
それって、私に対する裏切りーー浮気じゃないですか!
私にプロポーズした際、言ってましたよね!?
『今まで遊んできたが、君と出会ってようやく落ち着くことが出来そうだ。
生涯、君だけを愛する』と。
あれは嘘だったわけですね。
あのとき、私は言いましたよね?
『私は、父が他所で女を作るのが、不快で仕方なかった。
おかげで、母の死を契機に、父とは絶縁状態になっているほどです。
それぐらい浮気は、家族の絆を壊すものと思って、嫌っているの。
だから、浮気は許さない。
一度でも浮気をしたら、即刻離婚しますから、そのつもりで』と。
お忘れですか?」
「それは、そうだが……側室を何人ももうけるのも、貴族家ならよくあることだし、浮気程度、男なら一度や二度は……」
「私は母のように、夫の浮気を耐えるつもりはございません。
離縁させてください」
それでも夫は、浮気が発覚しても開き直り、初めは謝りませんでした。
「そんな、アレとは幼馴染なんだ。
単なる浮気だ、本気じゃないんだ。
昔から、よく懐かれていてーー『据え膳食わぬは男の恥』と言うだろう?」
と吐き捨てて、居直ったのです。
でも、私が首を振って、にべもなく、
「知らないわよ。
そんな、オトコの都合だけを謳ったことわざなんて」
と答えて、軽蔑の眼差しを向けます。
すると、夫は態度を一転させました。
突然、私に縋り付いてきて、激しい口調で泣き落としにかかってきたのです。
「たった一度の浮気だけで、おまえは家庭を壊そうというのか!?」
「家庭を壊したのは貴方でしょう!?
それに、『たった一度』とは思えません!」
「やり直そう。
彼女から言い寄られると、断りきれなかっただけだ。
わかるだろ?
遊びなんだ。
ちょっとした気の迷いなんだ。
それに、おまえが勝手に離縁することはできないぞ!」
そうなのです。
いくら求婚された際に約束していようが、私が腹を立てていようが、我がサンドル王国では、夫の同意がなければ、妻は離縁することができないのです。
そのくせ、夫が離縁したい場合は、妻の同意なくして離婚できるのですから、不平等な法律でした。
でも、サンドル王国の上位貴族が、法律を破るわけにはいきません。
結局、簡単には離婚できそうもないので、私、マーベルは、王都にあるお屋敷から出て、領地の本館に移り、別居を選びました。
ただでさえ、「後継者をーー孫を早く!」と顔を合わせるたびに義両親からせっつかれていた矢先に、夫に裏切られたのです。
夫のみならず、義両親、ベルトとシーラの顔もみたくありませんでした。
彼ら、義父母の反応は、自分の息子の浮気が発覚したにも関わらず、腹に据えかねるものでした。
義父ベルト・ライン元侯爵の態度は一向に変わらず、偉そうなままでした。
金の刺繍が映える黒衣装を着込んだ、チョビ髭男は、大きく鼻を鳴らします。
「儂はライン侯爵家の家督を、すでにバークに譲っておる。
だから、おまえたち夫婦のイザコザに関わるつもりはない。
あとは妻のシーラと一緒に、悠々自適の生活に入りたいだけだ。
だから、そのために、一刻も早く、孫の顔を見せて、儂ら夫婦を安心させてくれ。
バークのヤツが浮気しようが、おまえは孫さえ産めば勝利者となるのだ」
ほんと、嫁を文字通り「借り腹」ぐらいにしか思っていない発言です。
ざけんな。
嫁の私に前時代的な説教する暇があったら、まずアンタの息子バークに、
「浮気するな!」
と説教してもらいたかった。
結局、義父のベルトは、
「男の浮気は仕方ない。
むしろ甲斐性だ」
と言うだけでしたし、義母のシーラ・ライン元侯爵夫人も、
「マーベルに魅力がなかったからじゃない?」
と、金色の扇子で、自らの太った身体を仰ぎながら、からかうばかり。
まったく、二人して、息子を庇いすぎでは?
そんなふうだから、あなたたちの息子バークは甘やかされて育ち、自身の感情をセーブできない男性に育ってしまったのでしょうに。
今からでも遅くはありません。
まずは、息子のバークに貴族紳士らしく、万事につけて落ち着くように、と忠告してやってくださいな。
バークは気性が激しいというか、感情の高低の落差が激しすぎるんです。
すぐ怒るし、すぐ泣き出すし、やりにくいったらありゃしません。
夜の営みでも、私が痛がることをしては、抱きついて甘えてくるし、情緒不安定に過ぎます。
私は落ち着いた、静かな日々を送りたいのです。
私、マーベルにとっても、領地住まいになって王都から離れると不都合もありました。
でも、夫バークと義両親の顔も見たくなくなったのだから、仕方ありません。
王都で、友人が開くお茶会にも出席したくありませんでした。
私が夫バークの浮気が許せないと言ったら、皆が総出で私を窘める始末でした。
「許してあげなよ」
「貴女に柔らかさがないから、嫌われたんじゃない?」
「夫が浮気するっていうのは、妻として避けられた結果なのよ」と。
皆、私より、夫の浮気相手であるキャリー・ペイン子爵令嬢の肩を持ち過ぎでは?
彼女らは、バークとキャリーは古い幼馴染で、昔から、まるで実の兄妹のように、二人は仲良しだった、といいます。
(そう。わかったわ。
だったら、二人で仲良くしていたら良いじゃない?)
私は荷物をまとめて、王都のお屋敷を飛び出しました。
王宮での秘書勤めを辞しての決断でした。
離婚を決意したにも関わらず、夫の領地のお屋敷で別居するしかできなかったのには、それなりの理由があります。
まず第一に、私、マーベルには、帰る場所がありませんでした。
実家はハイト伯爵家という、長年、王宮で事務職を担ってきた家柄です。
ですが、すでに弟のロイド・ハイトが家督を継いでいますし、弟夫婦には子供も二人います。
姉の私が今更帰ってきて、居候を決め込むのは恥ずかしい。
しかも、「夫が浮気したのが許せない」という出戻り理由を白状したら、弟からも、
「一度くらい魔がさしただけだろ、許してあげなよ」
と、面倒臭そうに銀髪を掻き上げながら、当たり前のように言われるだけでしょう。
その横で、奥さんの笑顔が貼り付いたものになってることにも、気付かずに。
結果、私が出戻ることで、悪くすれば弟夫婦の仲を悪くしてしまうかもしれません。
それは嫌です。
さらに、私が実家に帰ることで、「事実上の離婚」をする、という選択肢は取りたくありませんでした。
夫の許可がなければ離婚できない現状では、これが妻側がやれる、もっとも一般的な「縁切り」で、「事実離婚」などと呼ばれています。
ですが、これでは公的にも法的にも離婚したことにはなっておらず、正式には夫婦扱いのままになります。
ですから、例えば、夫から離れて、新たに、別の人と結婚することはできません。
それでは納得がいきません。
公的にも法的にも離婚して、真の独立を勝ち取りたい。
それに、夫のバークは、どうせ妻である私から離縁することはできない、と見越して、幼馴染のキャリー・ペイン子爵令嬢の誘いに乗ったという疑惑が濃厚です。
どれだけ腹を立てようとも、妻のマーベルは俺を許すしかないのだ、と驕っていたに違いないのです。
実家に出戻るだけの「事実離婚」では、その傲慢さを打ち据えることにはなりません。
ですから、夫に不実であったことを認識させるためにも、真の離婚を勝ち取りたいのです。
とはいえ、悔しいですが、私、マーベルに、ライン侯爵家から出て行ったところで、行くアテがないのも事実でした。
ですから、王都から離れて、馬車で一日半はかかる領地の本館へと引っ込むことを選んだのです。
ライン侯爵家の面々は、夫のバークだけではなく、義父母ももはや気に入らなくなっていましたけど、唯一、その領地だけは気に入っていました。
ライン侯爵領はじつに美しい。
豊かな自然に取り囲まれていました。
野生動物や、希少な草花が咲き誇る渓谷、そして深い青色をした、美しい湖があります。
ですから、私は決めていました。
しばらくの間、湖でも眺めながら、心穏やかに過ごそう、と。
そうすれば、ささくれだった気分も和らぐのでは、と思ったのです。
一ヶ月は、ゆっくり過ごすつもりになっていました。
幸い、私は第三王女ローズ・サンドル様と学園時代に親友だった縁で、お母様である王妃マルタ・サンドル様とも懇意になって、秘書として働き口をいただき、可愛がられています。
ですから、王宮の事務職なら、いつでも復職できるのです。
かくして、夫を王都に残し、私だけで領地の本館に引っ越して、三日ーー。
湖畔にパラソルを立ててのんびりしていると、靄のかかった、湖の向こう側から、小振りの舟が一艘、近づいてきました。
その舟の舳先に立っていた男は、質素な作業服ながらも、仕立てが良く、袖口に金糸で刺繍が施された高級品をまとっています。
姿だけでわかります。
豊かな貴族の若い男性です。
向こうも、こちらのパラソルを目にして、私の存在に気づいたようで、靄の中から近づいてきます。
「やあ。マーベルだろ?
久しぶり。学園卒業以来だね」
銀髪に碧色の瞳を輝かせる、見知った顔がありました。
学園時代に同級生だった、エスター・デミルト公爵令息です。
スリムな体躯の彼が、湖の向こう岸から、舟でやって来たのでした。
そういえば、向こう岸には、広大なデミルト公爵領が広がっていたはず。
私は寝そべった状態から上半身を起こして、お辞儀をしました。
「お久しぶりね。四、五年ぶりかしら。
どうして、我がライン領に?」
彼が言うには、魚を捕まえるために網を張って魚影を追いかけていたら、ここまで来てしまったそうです。
彼は大貴族の令息なのに、魚釣りという地味な趣味を持っているようでした。
「王宮勤めのマーベルこそ、休暇の季節でもないのに、どうして領地に籠っているんだい?」
エスターに問われたので、「夫が浮気したの」と言ったら、彼は快活に笑いました。
「そりゃ、君なら許さないだろうね。
バーク・ライン侯爵は、自分の妻の気性を知らないとみえる」
「なによ、その言い方」
「いや、別にけなしてるつもりはないよ。
ただ、君という素敵な淑女がいるのに、浮気をするものじゃない、とバーク侯爵に一言、忠告したいと思って」
「初めて、夫が悪いっていう見解を聞いたわ。
皆、私を非難してばかり」
「外野の連中なんて、そんなもんさ。
もっとも、親族同士の内輪揉めほど、厄介で手出ししにくいものはないがね」
エスター公爵令息は、「はあ……」と溜息をつきます。
彼は、腹違いの弟ホイルが、「デミルト公爵家の跡目を譲れ」とうるさく言うから、逃げてきたといいます。
彼、エスター・デミルト公爵令息も、修羅場の渦中にいるようでした。
彼、エスターは国務省に勤務していますが、内務省の官僚から通達があったそうです。
貴方の継母と異母弟が勝手に「デミルト公爵家の意向」と称して、いまだ健在の父パース・デミルト公爵から家督の生前相続を主張して困っている。
だから、長期休暇を取ってでも、家庭内で争いを収めて欲しい。
公爵家のような高位貴族家の内紛は、長引かせると国政にも悪い影響が出るからーー。
と、上司から命じられ、領地のお屋敷に帰省していたのだといいます。
「本来、こんなことは、現在の家督者である父が収めるものだろう?
どうして、僕なんかに内務省から苦情が来るんだ。
どうせ、父が裏から手を回してるんだろうけど、こんなことだけは巧みにこなせて。
少しは継母と異母弟を黙らせて欲しいよ」
エスター・デミルト公爵令息は、碧色の瞳を伏せます。
彼、銀髪のエスターは前妻の子で、茶髪の弟ホイルは後妻の子でした。
エスターにとって継母であるヘラ・デミルト公爵夫人も、実子である弟ホイルの家督相続に積極的に手を貸していました。
父のパース・デミルト公爵は、家庭内においては、片眼鏡をくゆらせるだけの、空気のような存在になっていたのです。
エスターはマーベルの横に寝そべると、碧色の瞳を細めて、苦虫を噛み潰したような顔をしました。
「別に家督は、弟にくれてやっても良いんだ。
だけど、デミルト領地の自然も、王都の屋敷も気に入っているから、『僕を追い出さないでくれ』って言っているんだけど、どうにも弟たちは『僕が居るだけで安心できない』って、きな臭いことを言うものだから……」
デミルト公爵家の継母と弟の気性がずいぶん激しいのは、私でも聞き知っています。
そのくせ母子揃って浪費家で、頭の冴えが野心に比例していません。
このまま家督を父から奪ったところで、領地経営や、政府高官の職務が勤まるとは思えません。
そういった内容を絞り出すように口にしてから、エスターは静かになりました。
私、マーベルは、「わかる!」と、大きく頷きました。
夫のバーク侯爵も、大きな野心に比して、能力が伴っていません。
ですから、自分自身、始終、イライラが募るのでしょう。
私は、わざと話題をバカ夫にズラしてみました。
「実際、夫のバークは、内務省の職場でも浮いちゃってるみたい。
筋トレ馬鹿で、同僚との交流も疎かにしてるから?
ああ、それとも、浮気をするのは、それだけ立場が浮いちゃってるからかしら?」
エスター公爵令息は、銀髪をゆらせて笑います。
「ははは。そんな質問、僕にどう答えろって言うんだよ」
「たしかに」
私たちは笑い合いました。
同じ銀髪同士で、気が合うようです。
それ以来、私、マーベルは毎日、湖畔に通いました。
領地の本館から、湖畔の別荘付近の岸辺に。
決まって向こう岸からエスター公爵令息がやって来て、釣りを教えてくれました。
こうして、かつての学友との穏やかな交流が、一週間ほど続いたのです。
そんな、ある日の昼下がりーー。
私、マーベルと、エスター公爵令息が、いつものように二人で釣りを楽しんでいると、いきなり後頭部に激痛が走りました。
倒れるときに振り向くと、金髪を振り乱して、碧色の瞳を怒らせた、夫のバーク・ライン侯爵が、拳を握りしめて立っていました。
夫が私を後ろから殴ったのです。
「貴様……やはりオトコがいたんだな。
この裏切り者の雌犬が!」
夫バークは、興奮して喉を震わせます。
私は頭を抱えながら、地面でもがきました。
そこへ、さらに殴ろうとして、巨軀の夫がのしかかろうとします。
エスター公爵令息が細い身体ながらも、慌てて私を庇って立ちはだかりました。
「どけ! この間男が!」
「僕は間男なんかじゃない。
話を聞け。
それでも王国貴族か!」
夫は、エスターをも殴ったり、蹴ったりしました。
エスターも拳を繰り出し、応戦します。
男同士の殴り合いが、しばらく続きました。
ですが、趣味で身体を鍛えているような夫バークと、ほっそりとした身体のエスターでは、勝敗は目に見えていました。
怒りに我を忘れた夫バークの勢いに押されて、エスターは綺麗な顔面に何度もパンチを喰らって、倒れ込んでしまいました。
そして夫は金髪を振り乱し、碧色の瞳を輝かせて、再び私に襲いかかってきたのです。
そのとき、私はやり返しました。
夫の急所を、思い切り蹴り上げたのです。
「ぎゃ!」
呻き声とともに、夫バークはうずくまりました。
大きな身体が、股間を押さえて、団子虫のように丸まっていきます。
いくら身体を鍛えて筋肉ムキムキになろうとも、ここだけはどうしようもないらしい。
大きく顔を歪ませて、全身を震わせています。
ですが、知ったことか。
今、私が看るべきは、エスター・デミルト公爵令息の容態です。
彼が、私を庇って、大変なことになってしまっていたのですから。
エスターは口から泡を吹いて、全身を痙攣させています。
オロオロするだけの、夫が引き連れてきた従者に向かって、私は大声で命令しました。
「急いで本館に連絡を。
医師を呼びなさい!」
私はエスター公爵令息の傍らに座り、ハンカチを取り出して、傷口を拭います。
どうしたら良いかわからないなりに、看護を試みたのです。
夫バークは、股間を押さえながら、「俺は無視かよ」と涙目で呟きましたが、知りません。
やがて、ライン侯爵家お抱え医師が複数、馬車で駆けつけてきて、男性二人の診察を開始します。
案の定、バークは安静にしているだけで良かったのですが、エスターは脳震盪を起こしていました。
しかも、鼻の骨と頬骨が陥没し、さらに左腕の骨までが折れていたのです。
これで夫バーク・ライン侯爵は、立派に傷害罪を犯した犯罪者になったのでした。
私は即座に早馬を飛ばし、王都から貴族専門の事件捜査を担当する第二騎士団を招きました。
領民同士が引き起こした事件なら、ライン侯爵家の騎士団で捜査を行いますが、今回の事件は、領主であるバーク・ライン侯爵が行った、他家の、しかも上位貴族家であるデミルト公爵家のご令息に対しての暴行傷害事件なのです。
ライン侯爵家だけで内々に済ませられるものではありません。
私はライン侯爵家の医師を伴いつつも、馬車でエスター公爵令息を王宮の医務室へと運びました。
このままライン侯爵領内にエスターを置いていたら、さらにどのような陰謀が働かれるかわかったものではありませんから。
事件を隠蔽しようと、家宰や義父母が、何かしら手を下す可能性が大いにありました。
エスター公爵令息が王宮医務室に運び込まれた途端、事件は表面化し、二日後、夫バーク・ライン侯爵は、騎士団によって拘束されました。
ところが、夫は無罪を主張したのです。
エスター公爵令息に暴行を加えたことは認めつつも、それは「無礼討ち」であったと訴えたのです。
夫のバークは、胸を張って、
「私の愚妻が、その色男と浮気していたんだ。
まさか、デミルト公爵家のご令息とは思わなかったが、妻と旧知の仲だそうじゃないか。
妻のマーベルは、勝手に別居しやがって、挙句、オトコを連れ込んで、我がライン領内で連日、よろしくやってやがったんだ。
私はその現場を押さえたのだ。
間男を誅罰して、何が悪い!」
と開き直ったのです。
実際、ライン侯爵領内での事件ゆえ、エスター公爵令息の方が闖入者ということになります。
さらに、もし本当に、私、マーベルと不倫していたことが事実であったならば、「無礼討ち」と見做され、夫バークは無罪放免となるかもしれませんでした。
さらに、
「すべて嫁のマーベルが悪い!」
「嫁が不倫をしていたのよ!」
と義父ベルトと義母シーラは訴えます。
王都の「お茶会仲間」に至っては、
「湖畔で逢引きって、素敵じゃない?」
などと軽口を叩き、こちらも、私、マーベルが不倫していたと信じ切っていました。
「旦那に浮気されたんだから、仕返ししたのよね?」
「でしたら、お可哀想なのは、エスター・デミルト公爵令息ね。
大怪我しちゃって」
「火中の栗を拾うからよ。お盛んねえ」
「やはり、弟のホイル様が、デミルト公爵家をお継ぎになるのかしら?」
おほほと、笑い合う始末でした。
ところが、夫バークが勾留されてから三日後、事態は急展開を迎えたのです。
エスター・デミルト公爵令息が意識を取り戻すやいなや、満身創痍の身体を押して、捜査にあたっていた騎士団の詰所に出頭しました。
そして、銀髪を振り乱しつつ、マーベル・ライン侯爵夫人の無実を訴えたのです。
同時に、
「僕が浮気だなんて、とんでもない。
僕が愛するのは、マーベル侯爵夫人ではない。
別の女性ーー赤い瞳が美しい、金髪の女性と婚約している」
とエスターは主張したのです。
その訴えを耳にした人々は、一気に緊張しました。
なぜなら、赤い瞳は王族に多く見られる特徴だからです。
案の定、エスター公爵令息のお相手は、なんと第三王女ローズ・サンドル様だというではありませんか!
話を伺っていた捜査官たちは、思わず声をあげました。
「えええ!?」
「ローズ王女にお相手がいたのか!?」
美貌の王女ローズ・サンドル様は、現在、唯一の未婚王族でした。
多くの高位貴族の令息が狙っている、王国最大級の上玉でした。
サンドル王国の貴族社会は、大騒ぎとなりました。
エスター公爵令息がそう言い出した当初は、その発言の真偽が取り沙汰されたものです。
彼は顔面を強打されていたから、意識が混濁して妄言を吐いているのでは、と疑われたのです。
ですが、その翌日、第三王女ローズ・サンドル様ご自身が、エスター・デミルト公爵令息との婚約を公表し、
「近いうちに、私、ローズが、自らデミルト公爵家に輿入れいたします」
と宣言したことによって、真実と確定しました。
以降、強力な政治的な力が働き、騎士団によって、バーク・ライン侯爵による暴行疑惑の捜査結果として、以下のように公表されたのです。
「『エスター公爵令息が、マーベル侯爵夫人と不倫関係にあった、というのは虚偽』であり、『エスターは、夫バークの暴力に悩んでいたマーベルの相談相手をしていただけ』であった」と。
つまり、「嫉妬から生まれた誤解」によって、バーク侯爵は暴行を働き、その結果、エスター公爵令息は怪我をして、妻であるマーベル侯爵夫人も頭部を殴打されたのだ、と結論付けられたのです。
従って、バーク・ライン侯爵の傷害罪が確定し、謹慎処分に加えて、内務省からの離職が勧告されたのでした。
上位貴族に対する暴行事件の割には軽い罪となったのは、被害者であったエスター・デミルト公爵令息が、
「いくら旧知のマーベル公爵夫人のためであったとはいえ、私自身がライン領にまで赴いていたのでは、誤解を招いても仕方があるまい。
責任は自分にもある」
と処分を軽くするよう、司法局に申請したからでした。
それでも、夫バーク侯爵の社会復帰は厳しくなっていました。
義父ベルト・ライン元侯爵の働きかけがあっても、王妃マルタ・サンドル様にバークが激しく嫌われてしまっていたからです。
愛する娘、ローズ王女の結婚相手であるエスター公爵令息に暴力を振るうとは。
しかも、浮気を疑っての暴力と知って、王妃様は余計に呆れられた。
「自分が先に浮気しておいて?
女性として言わせてもらえば、『恥を知れ』と言いたい。
しかも、暴行を働いた相手は、身分上のデミルト公爵家のご子息。
しかも我が娘、王女とお付き合いする方なのですよ。
これが軽い処分で許されて良いのですか!?」
王妃様の当然とも言える言い分に、いつもバーク侯爵を弁護していた貴族連中も沈黙せざるを得ませんでした。
ライン侯爵家の義父母も、息子バークの擁護を断念しました。
それを機に、私、マーベル侯爵夫人は、夫バーク・ライン侯爵に離婚を強く求めます。
私の弟ロイド・ハイト伯爵も援護してくれました。
我がサンドル王国では、これまで妻の側からの申請で、離婚が成立した前例はありません。
ですが、だからこそ、かえって私は、新たな歴史を作る気満々になっていました。
いくら長丁場になろうとも、バークとの離婚を成立させてやる、と意気込んでいたのです。
ところが、残念なことに、新しい、妻からの離婚成立事例を生み出すことは、できませんでした。
あっさりと、事態が解決してしまったからです。
夫バークは拘置所で独り、神経質になった挙句、短刀で喉を突いて自殺してしまったのです。
我が国の法律では、
『妻による離婚申請は、夫側の拒否に遭うと却下される』
とされていました。
ですが、夫の自殺によって、夫バークによる離婚拒否が行われなくなったために、自動的にマーベルによる離婚申請が通ることとなり、離婚が成立してしまったのです。
とはいえ、マーベルも手放しで喜んでいられる事態ではありませんでした。
予想以上に悲劇的となったこの結果に、
「バーク侯爵がお可哀想。
たった一度、幼馴染相手に浮気しただけで……」
という声も、貴族間であがったからです。
それは、葬儀において、妻と愛人の態度が大きく違ったせいもありました。
葬式中、(離婚申請中であった)マーベル侯爵夫人は、毅然と背筋を伸ばして座ったままで、一筋の涙も流しませんでした。
それに対して、浮気相手のキャリー・ペイン子爵令嬢は、バークの遺体が入った棺に縋り付いて、喪服姿で泣き崩れました。
ですから、多くの貴族男性がバークとキャリーに同情し、マーベルを非難したのです。
とはいえ、そうしたマーベルを非難する声に対して、多くの貴族女性が反論しました。
そうした反論の代表格として、またもやマルタ王妃様の呈した苦言を紹介するとーー。
「『たった一度の浮気を許すべきだ』というのなら、バーク侯爵本人も、『妻が浮気した』と思い違いをしたときに、暴行を働くことなく、妻もお相手も許すべきでした。
自分が浮気した場合は許されて当然で、妻が浮気したというなら一度だろうと、いや、その疑いが持たれただけで許されるべきではないーーというのは、王国貴族の紳士として、公正さを失ってはいませんか?
それに、妻から離婚申請を受けていると承知の上で、あたかも被害者かのごとく、自らの生命を絶つというのは、夫として卑怯ではありませんか」と。
遺族も、口さがない連中も、黙るしかなかったようです。
そして、夫バークが自殺した結果、ライン侯爵家から脱け出せてから一ヶ月ーー。
今では私、マーベルは、王妃様付きの秘書官に復職していました。
王妃様に気を遣っていただき、私は、王宮の侍女控室で寝泊まりをして、昼休みには、王宮の中庭でのんびり寛ぐことが許されていました。
ちなみに王宮で滞在していると、エスター・デミルト公爵令息と、第三王女ローズ・サンドル様のお二人をよく見かけました。
婚礼儀式の準備などで忙しく立ち回っておられて、今日も渡り廊下を歩くさまを中庭から見かけたので、私は立ち上がってお辞儀をします。
向こうも微笑みを浮かべつつ、軽く頭を下げて立ち去ります。
その間も、二人はしっかりと恋人手繋ぎをしていました。
仲が良さそうでなによりです。
一週間後、彼らは結婚し、エスター公爵令息はデミルト公爵家の家督を継ぎ、第三王女ローズ様は平民降下してローズ・デミルト公爵夫人となる予定です。
(良かったわ。咄嗟に出したアイデアが、うまく実現して……)
私、マーベルはベンチに座り直して、往時を思い起こします。
私は、エスター侯爵令息と湖畔で初めて出逢った際に、提案しました。
「エスター様。
貴方がデミルト公爵家の家督相続を確かなものにするための、とっておきの方法がございますよ。
訊いてくださいます?」
エスター公爵令息は半分笑いながらも、「もちろん」と言って、身を乗り出します。
私はパラソルの軸に身を預けながら、自分の構想を話しました。
「私、第三王女のローズ様と懇意なの、知ってるでしょ?
貴方、彼女と結婚しては?」
「いきなり、突拍子もないことを言うね」
「でも、ローズ様に輿入れしていただけたら、貴女がデミルト公爵になるのは間違いないわ。
王女が嫁いだ家の家督を、夫になるヒトが継げないなんて、あり得ないもの。
貴方の弟や継母が何を言っても、元王女の権威に敵うはずがないわ。
貴方の地位は盤石なものとなるはずよ」
「それはそうかもしれないけど……ローズ王女ご本人は、どう思うのかな?
僕は君と違って、ローズ王女とそこまで親しくはない」
「いえ。正直にいえば、貴方のお父上、パース・デミルト公爵閣下ののらりくらりとした態度が功を奏した結果ね。
じつは、ここだけの話、ローズ王女はお食事に毒を盛られるなどして、何度もお生命を狙われてるの」
「まさか、どうして……」
「サンドル王家でも、相続問題で揉めていてね。
第一王子のヨーム様が病弱で王位を継げないと目されているので、第二王子派と第一王女派とで激しい王位継承権争いが水面下で行われているわ。
それぐらいは知っているでしょ?」
「そりゃあ、まあ。
僕も一応、公爵家の息子だからね。
国務省勤めの折に、何度か耳にしている。
でも、どうして第三王女のローズ様のお生命が狙われて……」
「ローズ王女は殊の外、王妃様に気に入られておいででしょ?
第三の勢力を形成するんじゃないかって、第二王子派の宰相閣下や、第一王女派の外務大臣が揃って攻撃を仕掛けてきているのよ。
若い芽のうちに摘んでおきたいって。
それも、毒殺を仕掛けるかと思えば、自分の息子や甥っ子をローズ王女と縁付かせようとしたりして、策謀が錯綜して、とにかくローズ王女の身の安全が保証できない状況にあるの。
ローズ様は、王位を継ぐつもりなんか、毛頭おありにならないのにね」
「そんなことが……」
「そこで、貴方のお父様パース・デミルト公爵の日和見な態度が好ましい、と王妃様やローズ王女なら、きっと思ってくださるはずなの。
最上位貴族家の爵号を持ちながらも、どの派閥にも属していないデミルト公爵家のご子息なら、ローズ王女にとって、格好の結婚相手だと王妃様もご了承くださるはず。
王妃様の専属秘書である私、マーベルが太鼓判を押しますわ。
もちろん、ローズ王女の親友としても保証します。
必ず王女様は喜んでくださると。
貴方の顔も、スタイルも、彼女の好みですもの」
私が笑顔を振り向けると、エスターは胸を撫で下ろしました。
「ありがたい。
お美しいローズ様を我が家に迎え入れることが、僕にとっても、サンドル王家にとっても好都合だという事情はわかりました。
ですが、この提案、タダではないだろう?
マーベル、君なら、何か考えがあって、僕を巻き込もうとしているんだろう?」
「巻き込むだなんて。人聞きが悪い。
エスター様のお為を思ってのことですのに」
「ははは。そいつは、ありがたい。
で、喜んで君の策に乗ろうとする僕は、これからいったい、何をすれば?」
「たいしたことはございません。
毎日、私と湖畔で、そうねーー釣りでも教えてくださったら、それで良いわ」
「それだけ?」
「ええ」
私は、チラリと、後方に控えている馬車の方に、目を遣りました。
いつも本館に私が帰宅した後、ライン侯爵家の家宰が、御者から私の動向を訊いているのを、私は知っています。
おそらくライン侯爵家の家宰は、王都にいる夫バークに命令されて、私の行動を監視し、バークに逐一、報告しているのでしょう。
自分が浮気したヒトは、逆に、相手も浮気するものと思いがちなものです。
もし、私がエスター公爵令息と湖畔で逢引きしていると耳にしたら、どうせ、自分が浮気したのを棚に上げて、夫のバークは、私を「不倫女め!」と罵ることでしょう。
そう思わせて、激情に駆られた夫が、私やエスター様に襲いかかったら、私の勝ちです。
夫に傷害罪、暴行罪の実行犯という烙印を押させて、その事実をもって離婚を迫ってやる!
そうでもしなければ、離婚できそうにありませんから。
ーーそう思って、殊更、エスター公爵令息と一緒に釣りなどをして、懇意な様子を使用人たちに見せつけながら、それまで網を張っていたのです。
そしたら、わずか一週間で、思い通りに夫バークが網に引っ掛かりました。
それも盛大に。
私だけでなく、エスター公爵令息までが、これほど酷く殴られるとは想定外でしたが。
(でも、私がアイツのアソコを思い切り蹴ってやったから、溜飲は下がったかしら。
ふふふ……)
結果、ほとんど想定通りに、事が推移してくれました。
(エスター公爵令息には大怪我をさせて悪かったけど、これで彼もデミルト公爵家の家督を継げるし、第三王女ローズ様をお嫁さんに迎えられる。
悪い取引ではないはず。
ーーそれにしても、まさか夫のバーク・ライン侯爵が自殺するとは。
しかも、家宝の短剣で喉を突いて絶命するなんて。
最期まで感情の起伏が激しい人だった……)
ちなみに元義父のベルト、義母のシーラの二人は、息子バークの自殺によって家督者がいなくなったので、お家が取り潰されないよう、自身がライン侯爵家の家督者に返り咲くよう試みたようです。
ところが、すでに家督を譲って引退していたことを理由に、サンドル王家は復帰を認めず、結果、ライン侯爵家は廃絶となりました。
結局、元侯爵家夫婦の二人は、元ライン侯爵領の一部である山間部に、小さな領地と山荘を捨て扶持として与えられ、老後を寂しく過ごすことに決定しました。
ちなみに、夫バークと浮気したキャリー・ペイン子爵令嬢は、浮気の結果、相手が自殺したことで、「稀代の悪女」として有名になってしまい、誰とも付き合うことができなくなってしまいました。
結局、彼女の弟夫妻が家督を継いだペイン子爵家の部屋住みとして厄介になっているようです。
いろいろなことを思い出しては嘆息し、私、マーベルは青空を見上げました。
空は澄み渡っています。
私は大きく伸びをしました。
なんだか、バークと結婚して以来、身体にまとわりついてきたしがらみから、ようやく脱け出すことができて、いろいろと吹っ切れた気持ちでした。
今では、仕事も充実して、私は人生を楽しんでいます。
ちなみに、もう結婚するつもりはありません。
(了)
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