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謎の弟子入り志願者

 私はヴェル。

 貴族でありながら、吸血鬼の血を引く両親から生まれ何不自由なく生きてきた。

 私には生まれながら魔法の才能があり、小さい頃から徹底的に修行した。

 十六歳になった時冒険者ギルドに登録し、最短記録の二年で第一級冒険者になった程の腕前だ。


 そんなある日、屋敷に輝く月のような銀の髪を持つ青年が訪ねてきた。

 年齢は二十歳くらいだろうか。

 長い銀髪を束ねて背中に流し濃紺の瞳を持った青年は、満面の笑みを浮かべながら言った。


「はじめまして。私はルカと申します。こちらで魔法の修行と下働きをさせていただけないでしょうか?」


 あまりの突飛な要求に、私と私の隣に控えていた執事兼護衛のノワールは困惑した。


「なぜ私を師としたいと思ったのですか?既に魔法使いであるならば、下働きなどしなくても修行をつけてくれる魔法使いは他にもたくさんいるはずですが。」


 何を考えているのか知らないが、怪しいことこの上ない。


「先日、あなた様の魔法を拝見いたしました。私など遠く及ばない高い技術に感服いたしまして、あなたに魔法の修行をつけていただきたいのです。

 それだけでは申し訳ないので、お屋敷で働かせていただきたく参りました。」


 そういえば先日、魔物討伐でだいぶ暴れたなぁと思い出した。あの時に見ていたのだろうか。


 ノワールが声を顰めて言った。


「私は信用できません。…我が主の御命を狙った刺客かもしれません。叩き出しましょう。」


 確かに怪しい。私は一応吸血鬼の血を引いているし、何かの間違いで討伐依頼が出ていれば(もちろん心当たりはないが)、寝首を掻かれかねない。


「申し訳ありません。当家にはもう十分な人手がございますので、お雇い出来かねます。魔法修行の方も、私は教える気はございません。お引き取りください。」


「…わかりました。」


 ルカは何か言いたそうだったが、諦めて帰って行った。

 厄介ごとに巻き込まれずに済んで良かった。と、私とノワールは、ホッと息をついた。



 翌朝。

「おはようございます!商業ギルドと冒険者ギルドからの身元保証書を持って参りました!雇ってください!」


 朝もまだ明けて間もない時間に、またルカが現れた。

 この男、外見は綺麗だが、性格はかなり粘着質なのでは…。

 やれやれと思いながら、ルカが持ってきた書類を確認する。正真正銘の身元保証書だった。…両ギルドにたった一晩でこの書類を用意させるとは、一体いくら積んだんだか…。


 ここで追い返しても、また手を変え品を変えやってくるだろう。それはそれで、大変厄介だ。

 ノワールを見ると同じことを考えていたようで、こちらをちらりと見て咳払いをした。


「…わかりました。あなたを雇います。ただし、魔法修行については、あなたの働き次第ということで宜しいですか?」


「はい!一生懸命働かせていただきます。よろしくお願いします!」


 ルカは花が咲いたように満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに頭を下げた。

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