おっさんと蚊
おっさんが燃えた。
燃えたアパートの周りにいた10人程度の野次馬の1人、50代に見えたおっさんが着ているジャケットがドバッと燃え始めた。
おっさんはすぐに火に気付き、両腕をばたつかせる。
テレビカメラはおっさんをアップする。
現場に居た男性記者は
「うわっ!男性が突然火に包まれました!」
中継しているテレビスタジオの芸能人、コメンテイター達も驚きながらも、
「危険です!アパートから飛んできた火の粉から引火したかもしれません!アパートから離れてください!」と注意喚起している。
他の野次馬達が手助けしておっさんのジャケットを脱がす。野次馬達がそれを踏みつけて火は消えた。
おいおい…おっさん大丈夫か?火傷も気になるけど、少し髪が燃えてたような…
いや…そうじゃなくて…。
さっき咄嗟に口から出た魔法(?)はなんだったんだ
家に誰も居なくて良かった
俺、厨二病すぎるだろ
やっぱり魔法なんてあるわけない
頭の中にあるカイエンとかいう男の記憶もただの俺の妄想だよ
ため息をつく。
プーンと不快な音がする。俺の耳元を蚊が通り過ぎた。窓は閉め切っているのに入ってきているのは、俺が玄関を開けた時に一緒に入ってきたんだろう。
鬱陶しい、けど手を伸ばして蚊を仕留めるにはちょっと遠い。
蚊を消すくらいの魔法なら出るかも、なんてな。
「ファイア。」小さく呟く。おらっ、カイエン様の大魔法を喰らえっ。
ボンッ。
蚊が小さく燃えて、消えた。
部屋には虫の焦げた臭いだけが残った。