カイエンという大魔法使い
これは転生前の記憶?
妄想?頭がおかしくなっただけじゃなくて?
これ、他人に言ったら厨二病扱いされるだけだろうな。
右手に握っていたライターをテーブルに置き、ソファに倒れる様に横になる。
少しの時間の映像が流れただけだが、わかったことがある。
あの転生前の世界は、今の俺がいるここ東京のある世界ではなく、
全く別の、地球でもない世界。
魔法とモンスターが存在する、異世界。
そして倒れていた「カイエン」という男が転生前の俺。
カイエンは魔法を使えたようだ。分かる。
頭には呪文らしきものが勝手に思い出されていく。
火を放つ魔法や空を飛び回る魔法、傷や病気を癒す魔法だって存在していた。
しかしカイエンは倒れていて、今にも意識を失ってしまいそうな感覚だった。
自分の体を癒す魔法は使える余裕は無かったのだろうか。
熊に襲われたのではなく、強大なモンスターに瀕死に追いやられてしまったのだろう。
一緒にいたあの女、、、女の子も。
女の子の事は、よく知っている、気が、する。
「カイ」である俺には会った事もない女の子だが、「カイエン」には一緒に行動していた頼れる女の子だった。
倒れている時、カイエンは何を考えていたのだろうか?
あの時の映像では何を考えていたのかは分からない。
分かるのは、女の子に心配をかけてしまった申し訳なさから来る胸の苦しさだったが、死の恐怖は感じていなかったはずだ。
何だろう。何か希望を持っていたような?あの心の暖かさは。
うん。
すげえや。
意味わからん。
なんでいきなりこんな記憶が頭に流れこんできたんだよ。
今日の俺、どこかで頭打ったりすごいストレス感じたりしたっけ?
学校から家に帰ってきた時に冷蔵庫に入っていた見慣れないラベルのオレンジジュース、実はアルコールが入ってなかったか?
しかも何だよ、魔法とモンスターが存在してるとかいうファンタジー世界は。
ファンタジーRPGを父親がリビングでやってたゲームがそんな感じであって、俺はそういうゲームをやったことないんだよな。オンラインで銃火器で戦い合ったりレースとかはやるけど。
そういう深夜アニメみたいなゲームもアニメもそこまで知らないんだよな。
オッサンとかでしょ、そういうの好きなのって。
ソファに倒れたまま、左手を伸ばしてテーブルにあるテレビのリモコンを取り、電源をつける。
本当はスマホで動画を見たいけど、親に「見過ぎだ」って制限されてるんだよなあー。
テレビはニュースをやっている。隣の県で火事があったようで、2階建ての木造アパートが燃えていた。
うわ、凄い火だ。あれだけ大きい火だと消防車の水だけだと時間がかかるだろう。
だったら、雨でも降らせてやればいいよな。
(え?)
カイエンとカイの魔法で。
(は?)
俺の頭に急に大雨を降らせる魔法が浮かんできた。
それをそのまま口に出した。
日本語でもない、英語でもない、異世界の言葉で。
そして、テレビの向こうで。