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桶屋の罪状  作者: SBT-moya
19/25

「カール・ギブソンがシュートを止めると、日本は国際社会から一歩遠のく。」13


日本時間、20:00

墨田区、隅田川沿い。

アレックスが、薄暗い街灯の下、電話をかけている。



「…… ……もしもし」


相手が電話に応じた。


「…… …… …… ……ワシじゃ」


「アレックス!? わざわざ俺の電話番号調べてくれたのか! 嬉しいなあ!」


「ふざけてる場合じゃなかとよ。……今大丈夫か」


「もちろん!大丈夫だよ。あっちゃん」


「そうじゃなか!! …… ……『ワシが電話かけても大丈夫な状況下か?』と聞いちょる」


「あ…… 了解。待ってね移動するわ。で……何?」


「まずい事態じゃ。先ほど、大統領が例の事案の被害にあった……」


「…… …… 新たな『因子』か?」


「副大統領じゃ。すでに拘束済みじゃ」


「…… ……なんでよりもよって。そうか……。こっちも、あの直後仲間が二人やられたよ……。今日は全く、お互いついてないな」


「ワシはまだ本題を言うとらん。ええが?……危ないぞ。政府は、カバーストーリーを用いて責任を日本に押し付ける気じゃ」


「……どんなストーリーだ?」


「『Infectious Cerebral Infarction』」


「……『伝染性脳梗塞』だと?」


「さっき言うたが、去年のデトロイトの件でアメリカはこの事案に敏感になっちょる。報道官制もこれ以上効果は無か。

 ……それも、大統領が発症したとなったら、国内問題で対処できてない言うこつになる。

 中、露、相手に国際的主導権を失いたくない政府は、ええが?この病気を、『埼玉県発祥のウイルス』として明日にでも世界に発表するつもりじゃ」


「な……!! ちょっと……待ってくんねえかな……。日本はスケープゴートってわけかよ」


「仕方なか……。アメリカにとって日本は、いまだに『敗戦国』なんじゃ。」


「……わかったよ。よく教えてくれたな?あっちゃん。」


「ワシも正直、浮き足立っとる。お前もモノノフなら、今夜中に事件を解決せい。……じゃあの」


アレックスは電話を切った。

……突然二人の大男に体を背中から密着された。

同じアメリカ人だ。

二人の後にはさらに二人。

背中に、銃を当てられている。


アレックスは十間川沿いに、スカイツリーまで連れて行かれ、さらに川沿いを西に連れて行かれた。

スカイツリーは、押上駅から少しだけ西に進めば閑散とした下町であり、夜になれば誰もいなくなる。


……刺客が送られてきたのだ。初動での任務失敗、日本警察との接触、国家機密の暴露、さっきの電話……。思い当たる節なら山ほどある。

国に忠を尽くすと決めた瞬間から、死ぬ覚悟はできており、準備もしていた。しかし……

同胞に消されることになるとは。

……これもあの日本人のせいだ。


男たちは歩くのを止め、後続の二人もアレックスに銃を構えた。

アレックスはすでに観念していた。そして、ゆっくり目を閉じた。


サイレンサー越しの4発の銃声が『ドシュ』と、静かに響く。




同刻、ピィ事案対策課本部、屋上。

庄司は新宿の街を見下ろしている。

改装工事は夜通し行われている。大気が湿っている。もう少ししたら、大雨になるかもしれない。


『お前もモノノフなら、今夜中に事件を解決せい』


アレックスの言葉が目の裏で合唱する。


(んなこと言われてもなあ……)


庄司は、最後の一本に火をつけた。吐き出す煙が、新宿の湿った大気に混ざり合っていく。


(湊は、大樹の発する『音』に解決策があると思った。確かに、今のところそれ以外この事件に対してとっかかりが無い。

 そしてそれができるomnisは……)


庄司はため息をついた。


「ごめんな! 湊!」


庄司は、投げやりに声を出した。そして……左手の腕時計を口元まで持ってきた。


「(息を吸う音)…… …… ……Hello Sirius」


すると、腕時計が『起動』した。


『System working…… ……Hello SHOJI』


こんなことはやりたくなかった。理由はいくつもある。

その一つはSiriusの使用にはomnisと違い、特事法を適用できない事。

もう一つ、膨大な量の始末所と報告書の制作だ。

1回の使用につきOmnisのそれより厳密な規定に沿った文言と提出手順で193か国に提出しなければならない。

Siriusを無闇に使うことは国際的な摩擦を引き起こす。よって、『まずはSiriusだ』という安易な考えには至らないのだ。

しかし、今夜中に事件を解決しなければならず、omnisが使えないなら庄司も手段を選んでいられなかった。


「Sirius、……この動画の音声を解析しろ」


『Roger SHOJI』


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