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短編小説

おばあちゃんのクエスト──5年間、毎日モンスターを捕まえてたまごをふ化させてます!

作者: 歌池 聡


※『第5回なろうラジオ大賞』参加作品です。



 期末テストが終わり、友人からカラオケに誘われたんだけど、今日の僕には先約がある。

 おばあちゃんのクエストのお供をしなくちゃいけないのだ。






 5年前、父方の祖父が亡くなった。それからしばらく、両親はひとり暮らしになってしまった祖母の心配ばかりを話し合っていた。

 近所なのでよく様子を見にはいけるけど、祖母はあまり社交的な方じゃないし、これといった趣味もない。このままだと早くにボケてしまいかねない。

 かと言って、どちらの家も同居するには狭すぎる。


 両親は同居のための家を探すか、施設を検討するか迷っているようだった。

 でも、当時小学生だった僕には、引越しもイヤだったし、おばあちゃんっ子だったので祖母が施設に入れられちゃうのも絶対にイヤだった。


 そこで、子どもながらに何かできないかと考えた末に、ある作戦を思いついたのだった。






『おばあちゃん、今日は外にいこうよ!

 スマホあるよね、ちょっと協力してよ。ひとりじゃたおせないモンスターがいるんだ』


 僕が考えた作戦は、祖母に新しい趣味を勧めることだった。


 ──その頃爆発的にヒットしていたアプリ『プチモンGO』。自分が歩くとゲーム画面のキャラクターも歩く。そして『プチっとモンスター』を捕まえたり、たまごをふ化させたりするコレクションゲームだ。

 子どもはもちろん、スマホゲームなんてやったこともないお年寄りまで、当時はみんな夢中になっていた。このゲームの仲間にしてしまおうと考えたのだ。


『でも、おばあちゃん、難しいことなんて出来ないわよ?』

『だいじょうぶ、操作はかんたんだから! ぼくが色々教えるから手伝ってよ』


 チームごとの陣取り合戦や、皆で強い敵を倒す要素もあるので、何人かで協力する方が有利だ。

 そこで僕は遊びにいくたびに、祖母をひっぱり回し、他のプレイヤー達と触れ合う機会を作るようにしたのだ。






 あれから5年。高校生になった僕は、通学の途中くらいしかあのゲームをしていない。

 でもすっかりハマった祖母は、今でも毎日何時間も歩き回っている。


 待ち合わせの公園に行くと、祖母が20代くらいの数人と談笑していた。


『え、そんなレアなやつ、持ってるの!?』

『ばあちゃん、レベルがハンパねぇ!』


 祖母ももう古株、この辺りでは伝説級のプレイヤーだ。


「あら、孫が来たわ。今日はあなたたちも一緒にプレイする?」

『うっす!』


 そして今日も、おばあちゃん──『伝説の勇者マリイ』と従者たちのクエストが始まるのだ。


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― 新着の感想 ―
おばあちゃん……! ゲームが得意なおばあちゃんっていいですよね(*´ω`*) 昔から「コンピューターおばあちゃん」といい、デジタルとおばあちゃんの組合せってなんだか好きですv 面白かったです! 歌池さ…
ありがとうございます。再読する事が出来ました( ^ω^ ) 勇者にほっこり〜
[一言]  1日のうち、自由に使える時間が多いぶん有利でしたね(笑)  自分の楽しみを持ってくれることも、もちろんですが、ひとと触れ合う時間を持ってもらうことも、大切ですね。  いっしょにいる時間をつ…
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