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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
現状維持は、基本腐る
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(そーんなに、怒らなくったっていいじゃない)


新年の儀式から、ミシェルはなんと、もう1週間近くもダンテに口を聞いてもらっていない。

ミシェルが無理やり崖から冬の海に突き落としたもんだから、実は高い所が怖いから今まで新年の儀式に参加していないとバレてしまい、この煽り耐性のゼロの男は風邪をひいたと言い張って1週間も部屋に閉じ籠っていやがるのだ。ご丁寧に魔法で部屋の鍵までかけて、カロンにすら会おうとしない。

プライドが高いのも程がある。


そういうわけで、ミシェルはカロンからもらったハートの陶器の小物が一体どんな謂れのあるものか、まだ聞けていないのだ。非常に気になる。


カロンに聞いても、内緒だよ、と言ってとても嬉しそうな顔をしてはぐらかすばかりだし、リリーだのに聞いてみても、神学にはまるっきり興味のない彼女は何も知らない。


そんなこんなで年明け一発目のお客さまが、ただいまミシェルの離れにきている。


今回の依頼者は、イカロスと名乗った。

新年の儀式のときに海に飛び込んだミシェルをカロンの天幕まで迎えにきてくれた、神殿の儀式関連の警備担当責任者の爺さんだ。


天幕でミシェルとすっかり仲良くなって、ミシェルが占い師だと知ると、じゃあ年明けの儀式の一連が終わったら見て貰いに行くよと言っていた。


本当に来てくれて、ミシェルは結構嬉しい。


おじさんと気安く呼んでいたが、実は結構な高い地位のお方らしい。

わざわざ自分の館からメイドを連れてきて、ミシェルの部屋で、女性と二人っきりにならないお気遣いまでありがとうな紳士な爺さんだ。


相手は枯れた爺さんだから、世間的にもミシェルと部屋で二人っきりになっても問題はないらしいが、ご自身は現役だと思っているのだろう。


ミシェルはそういう爺さんは嫌いじゃない。


ダンテと口を聞いていないからよくはわからないが、どうやらイカロスは非常に有名なお方らしい。


「いや、ずっとしんどくて。少しずつ担当する儀式の責務を少なくしているのですがね、もうそろそろ引退しなくてはいけないのかと思いましてね。まだそんな年ではなかったと思っていたのですが」


「そうですか。それは大変ですね」


イカロスは、爺さんにしちゃかなりのムキムキで、ミシェルの仕事部屋の小さな椅子に腰かけさせるのがちょっと申し訳ないくらいなのだが、寄る年波には勝てないらしい。


今日は最近なんだか体が上手く動かない上に、仕事にやる気がでないとかで、引退の時期を占いに来たのだ。


イカロスの仕事は神殿の儀式の警備関係の責任者らしい。

要するに、神殿軍という神殿が独自にもっている軍隊をとりまとめる役割で、ちょっと特殊な立場にいるらしいのだが、神殿なんぞ攻撃するような連中は戦争中にもいなかったそうなので、まあ名誉職だ。


ちなみに爺さんが取り仕切っている次の仕事は、女性の日の祭典の神殿警備だとか。


後の祭りは「鍋の祭典」と呼ばれている。

爺さんによると、その日は未婚の女性が皆、良縁を望んで、鍋をかぶって神殿に祈祷にくるお祭りなんだとか。

女性がかぶった鍋の数は、今まで関係した男の数で、数の申告を偽ると、大変な神罰が降りるらしい。

えぐいセクハラだとミシェルは思うが、未婚の女性に会いにいろんな独身男が神殿にやってくるらしいので、その日は結構なお見合いの会場になるという。


(絶対そこに来る男たちは、女の子が被ってる鍋の数を数えてやがるよな)


ミシェルは己の被らなくてはいけない鍋の数を数えて、鍋の重さで首が痛くなりそうで、集計を諦めた。


「新年の儀式も随分しんどくなってきたのですがね、鍋の祭典の日は本当に問題ばかりが多くて大変で。もう私はこの仕事を引退しなくては、と思っているのですよ」


そうイカロスは言った。


「そうですか、ではちょっと鑑定してみましょうね」



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