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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
創造するって事は
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「うわ。これ白エビでしょ!ホタテもはいってるし、白身の鯛これ?お野菜も全部白いのね、何、白ずくしの豪華スープってわけ?最高!」


ミシェルの興奮具合に、ダンテもカロンもご機嫌だ。


「あ、上にのってるネギまで白ネギだし、キノコも白いのばっかり!やだ手がこんでる!」


「ああ、お前はキノコが好きだったな。今度このキノコでパスタを作ってやろう。このキノコは今が旬だ」


ダンテもカロンも絶賛していた、儀式の後のスープは伊達ではない。そりゃ美味だ。

とろりとした質感のスープの中には、これでもかといわんがばかりの高級海産物が入っており、材料全部が白い。


なんでも、野菜からなにから全部白でできたスープである事がこの儀式の後で食べるスープの条件らしいのだが、年明け一発目に飲む、縁起担ぎもあるのでいつも贅沢な食材をふんだんに使ったスープが振舞われるとか。冬の海で穢れを払った体に、年の息災を祈ってええもんを与えるんだとか。


信仰心なんぞ何一つ持ち合わせていないミシェルですら、ちょっと体が浄化された気持ちになるような上品で優しい味だ。海で冷え切った五臓六腑に染み渡る。


参加者のみんなは炊き出しのごとく、浜辺でタオルを受け取ると、大きな釜で煮えたスープを並んで受け取って、一緒に飲んでお互いの無病息災と、神様にお互いの願いが聞き届けられる事を祈るのだ。


ミシェルもヨタヨタと凍えながら浜辺に帰ってきた所を、カロンのお付きの迎えがすぐにタオルを持って見つけて迎えてくれて、カロンの為にと用意された天幕まで案内してくれた。


「いやー、前の世界にもクラムチャウダーっていうアサリでつくった似たスープがあったけど、レベルが違うわ。本当においしい。カロンも寒かったでしょう。沢山食べてあったまりなさいね」


こうやって同じ白い服をきて、同じ寒い海に飛び込んで、同じ釜の美味いスープであったまると、仲間意識もわいてくるというものだ。

この連帯感がいいんだろうな、と、一人だけいつものボロイ黒いマントに身を包んだ、ダンテに目をやる。


みんなの様に水に入っていない癖して、しれっとスープだけはみんなと同じように美味そうに堪能してやがる。くやしい。


「毎年このスープが楽しみなんだ。それから、スープを飲み終わったらまだお楽しみもあるんだよ」


本日成人を迎えたとは思えないほどかわゆいカロンが、ニコニコとミシェルに大きな笑顔をみせてくれる。


「お楽しみ?」


「スープの底には小さな丸いお団子が入っているだろう、この中に、何か小さな物が入っているんだ。今年の一年を占う神からのお告げだから、みんな楽しみにしてるんだ」


「えー!そうなの!ちょっと楽しいじゃない!早く見たい!」


なるほど、初詣のおみくじみたいなもんなのだろう。

確かに、じつに楽しいイベントだ。冬の海に飛び込むなんて冗談じゃないと思ってはいたが、こんなに楽しいなら来年も来てもいいかもしれないなんて、ちょっと思ってしまう。


「それで?どんなのが入ってたりするわけ?ダンテのは?カロンのは?」


福袋系だのガチャだのが大好きなミシェルはもう、大喜びだ。

子供のようにキャッキャ喜ぶミシェルに苦笑いをしながら、


「おちつけ、今から開けるところだ。いつもは陶器の小物が入っていて、去年カロンは黄金の金貨の小物、私は確か、野イチゴの小物がはいっていたか」


「そうでしたね、聖女様には子犬の小物がはいっていましたね。めずらしいものでは、靴の小物とかありますね。この小物を集める為に毎年参加している人もいるくらいなんだ」


私のスープにかわいい小物が出たら、ミシェルにあげるからね、ちょっとスープが終わるのまっててね、なんてカロンは可愛い事をいってくれるじゃないか。


なるほど、コレクター要素あり、福袋要素あり、うまいメシあり、こりゃ楽しいじゃないか。



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