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(あ、また算数だ)
どうもこのカラオケ本、子供のセクションは算数系の歌が多い。
前回も掛け算の歌だの割り算の歌だの、そんなセクションにぶちあたったと思う。
ミシェルには子供はいないが、子供がいる先輩は、いつも携帯にそんな歌をいれて、隙あらば子供に聞かせているとか言っていた気がする。おかあちゃんも大変だ。
ミシェルがサイコロの目の通りにページを開いたら、そこには足し算の歌。
1たす9は10、2たす8は10,そんな歌だ。
(なんじゃこら)
どうやらどの歌詞も、足したら10になるコンビネーションを歌っている様子だ。
まあ、先輩が言っていたように、小学生の算数の勉強にはいいのかもしれない。だがなんだこりゃ。
ミシェルは歌詞に集中する。
そのうちに、歌詞は数字3つの足し算、数字4つの足し算になる。
1たす2たす3たす4は10。
1たす1たす1たす7も、10。
(まあ、そうだよね、だからなんなんだろ)
数字はつづく。
そして、ミシェルの目の前にみえる、光の粒も、同時に強さをおびてきた。
そして、ぼんやり光の粒に意識を向けると、その大きさは数値となって、ミシェルのビジョンに迫ってくる。
いくつも波のように折り重なりながら、おしよせてくる、ファブリジェ女史の家庭を担う光の粒。
ミシェルはその光の粒の種類を感じながら、光に心を寄せる。
一つ目の波は、外向きの光の粒だ。
これは、仕事や外からの収入に関連している光の粒だ。
女史も、ご主人も手を取り合って、二人で一つの光の波となっている。
だが、光の粒がご主人は小さく、女史は非常に、非常に大きい。
頑張って大きくしているが、疲弊しているご主人と、頑張って小さくしているが、非常に息苦しそうな女史の姿がみえる。
(ああ、こりゃご主人仕事辛いよね。あんまり仕事むいてないのね。女史の方は、仕事我慢するのがつらそうね。すごく、すごく大きなエネルギーだもの。行き場を求めてる)
次の光の波は、内向きの光の粒。家の仕事や、育児に関連する光の粒。
ガリガリとして非常に不器用な光の粒をもつ女史。するっと、滑るように上手におどる光の粒を持つご主人。
(ひゃー、こんな光の粒で家事してたら、毎日疲れ果てるわ)
だが、二人は二人で一つの波である事を、守っている。
これはよい家庭になるはずだ。二人で一つだと、二人とも心を決めているのだから。
そして。
「あー!!!!!!」
ミシェルは突然に、そしてやっと、分かったのだ。
ミシェルの大声にびっくりしたファブリジェ女史は、目をぱちくりさせてこちらを見ている。
立ち上がって、ミシェルは大きな笑顔をみせた。なんだ、簡単な算数だ。
「あなたが8で仕事して、ご主人が2で仕事したら、合計10よ!」
「そんでもって、ご主人が8で家事して、あなたが2の家事をしたら合計10よ!」
顔中で?という表情をしているファブリジェ女史に、ミシェルはもっと迫る。
「それどころじゃないわ、あなたが10で仕事して、ご主人が2で仕事して、それからご主人が8で家事をして、残りの2の家事を、外の人にきてもらえば、全部の合計は20よ!計算があうのよ!」
ミシェルは、謎が解けてもう有頂天だ。
非常に頭の切れるダンテは、ミシェルの算数的な解釈に、すぐ反応した。
「ミシェル、分業の比率を変えろと言っているのだな」
ダンテは興味深々といった顔をして、体を乗り出してきた。
「そうよ!なんて簡単な事だったのかしら!カロン!カロン!ちょっとその積み木もってきて!」




