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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
モラルは社会に、必要だけど
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しくしくと可憐な女の子のようにこの女、しおらしく泣いているが、ヒュパティア女史、ド級の恋愛問題児だ。

道理でダンテが匙を投げて、ミシェルに押し付けたわけだ。

これでこの国の七賢者がつとまっているのだ。大丈夫だろうか。


ダンテがとっつかまったら3日3晩、男に対する呪怨を聞かされるのだろう。

非常に腹が立つが、ダンテの気持ちが、今になってよく分かる。

だからと言ってミシェルにこの問題児を押し付けるのは、腹が立つが。


(しょうがないなあ・・)


ミシェルは、しくしく泣いている蛇女の後ろにさざめく光に、心を向けた。


(へえ・・一途なんだ)


ミシェルが期待していたのは、べっちょりとした、辛気臭い重たい濁った光。

それが体に張り付いているから、誰彼構わずに、人にねっちょりひっついていくのだろう。そうおもっていたのだ。

ダンテの屋敷の近くに住んでいる、一人暮らしの面倒くさい好色爺さんが、そういう感じなのだ。

女とみたら、すぐに執着するから、あの家の前は通るなとダンテにきつく言われていた。


だが見えたのは、とても大きな薄いピンク色の、美しい光のさざめき。普通の女性の10倍くらいの光の量、サイズ感、熱量。いや、それ以上だ。重量感もかなりある。


そして、その光は、まっすぐに行き場を一か所にだけ、求めている。


このうごめく光が、一身にその光を受け止めてくれる、たった一人の男を探している様子なのだ。


光は、意外な事に、まるで小さな女の子のように、濁りのない、純粋に美しい光をしていた。


どうやらこの人の愛、ただひたすら、重いだけで、悪い人ではないらしい。


「ヒュパティア様、泣き止んでください。私がお手伝いしますから、少し、ここに掛けていただけますか」


ミシェルは、ヒュパティアがびーびー泣いている間に、なんとかずらかろうと靴の紐まで結びなおして準備していたのだが、思い直して、きちんと座って、鑑定してみたいと思った。


このヒュパティア女史、話を聞くと、とんでもない地雷女だが、うしろのさざめきは、とても、美しいのだ。

どの人間の光も大抵は美しい。だが、とても、美しい光はめずらしい。


そして、ミシェルは美しいものが好きなのだ。

このド級の地雷女の美しい光の事が、知りたくなったのだ。


べそべそしながらも、ヒュパティアはしゅるり、とその身を蛇女から、清楚な美少女の姿に戻り、おとなしく、素直にミシェルの前に座った。


ミシェルは、手元のサイコロを転がす。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ミシェルは、サイコロをにらみつける。


ヒュパティアは七賢者と呼ばれるほどの大魔導士だというのにだ。


(はああああ?? まるっきりわかんない)


出てきたサイコロの数字に導かれたカラオケの歌詞本は、なんと、割り算の歌。

掛け算の歌は、ミシェルが子供の頃に覚えさせられたが、どうやら割り算バージョンもあったらしい。

そんな事も、今はじめて知った。


ヒュパティアの後ろの光に、ミシェルは心で問い直す。


(ちょっと、なんでなのこれ、わかんないんだけど!)


すると、ミシェルの心に呼応するかのように、すぐに大きな光はすさまじい勢いの、巨大な光の滝となった。

光の滝は、地を割らんばかりの大きな衝撃の勢いで、地に落ちる。

地に落ちた光の滝のその先には、非常に大きな静かな光の湖ができていた。

湖にはいくつもの川が流れ、静かに周辺の乾いた土地に水の恵みを与え、海へと、落ちてゆく。


アケロン川の穏やかな流れに似ている、美しい流れ。


「ねえ、ミシェルさん、どうでした?どうやったら私、幸せになれるんでしょう?」


しくしくと、この地雷女は、泣く。

ミシェルは、先ほどまで、本当にうっとうしいと思っていたが、やっと気がついた。

ヒュパティアは、本当に悲しくて、本当にきれいな心が傷ついて、泣いているのだ。


そうなると、ミシェルのお節介と無駄な面倒見のよさが出てきてしまう。

本当に悲しくて泣いてる目の前の人を、見捨てる事ができていたら、こんな異世界まで飛んでないのだ。


ミシェルは、持っていたハンカチでヒュパティアの涙を拭ってやって、心で、心からヒュパティアの為に力になりたい、そう願った。


そう願った瞬間に、ヒュパティアの後ろから、ミシェルの心に一気に、光の粒がおしよせてきた。









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