表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
モラルは社会に、必要だけど

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/113

1

秋が深まりをみせてきた。空の青が深くなり、空が高くなるのは、異世界でも同じらしい。

ここディーテ王国の秋は美しい。

なんといっても、紅葉の色が、少し違うのだ。


(紫の木なんて、はじめてみた・・)


秋になると、赤や黄色のおなじみの美しい紅葉も楽しめるのだが、さすが異世界、白い果実をつける木の葉が、紫色に葉の色を変えて、これが非常に美しい。

この紫色の木に実る白い果実は、非常にお上品で高級。

秋の名物らしいのだが、なんか、見かけが昆虫っぽく、ミシェルはまだ食べた事がない。


「桃のようなブドウのような、そんな味がするんだよ」


異世界の女子達のあこがれだというフルーツを、気味悪がってさわりもしないミシェルがおもしろかったのか、カロンはわらって、そう教えてくれた。


「ミシェルは好奇心旺盛だし、この世界によくなじんでるのに、時々妙な所で、異世界の人が出てきて、とてもおもしろいよね」


カロンによると、元の世界のイチゴ的な存在の、女子力高めのニュアンスのフルーツらしい。まあ綺麗だとは思う。

白と紫の色のコントラストなんて、上品だと思うよ。とっても。


「だって・・どうみてもイモムシじゃない」


上品な、白い硬いダンゴムシみたいな殻を割ると、透明感のある白い、クリーム色をした、弾力のある果肉がはじけてくるのだが、これがどう見ても、イモムシだ。キモイ。


尚、この時期の、この木の幹の皮を煮詰めた液体で染められた染物は、高位魔術師のローブに使われるとか。

秋のお中元?お歳暮?的なもので、秋染めのローブを、毎年この時期に、師弟関係にある魔術師に贈るのが、この国のならわしなんだと。


異国の習わしはよくわからないが、この色は、とても綺麗だ。

秋口の夕暮れの空みたいで、ちょっと切なくなる色。


そういう訳で、今日の依頼者は、なんと、ダンテだ。


「ミシェル、私からの依頼だ。ちょっと力を貸して差し上げてほしいお方が、いる。頼まれてくれないか」


秋染めの美しい、紫のローブがダンテの元に職人から届けられると、ため息まじりに、憂鬱そうに、ダンテはミシェルに言った。


ダンテがミシェルに頼み事をするなんて。


「ダンテが?いいけど、誰?」


別に頼まれるのが嫌なのではないが、この男は、絶対にミシェルに貸しを作りたくなさそうなタイプだ。

どうしたんだろう。


ダンテは、ローブのついでに、同じ染料で染めた、綺麗なショールをミシェルに頼んでくれたらしい。

きれいに染め上がったショールを、ミシェルに渡してくれて、ミシェルは大喜びだ。


このショールには、濃紺のワンピースがよく合うと思う。


ダンテは、ミシェルがショールを気に入った事がうれしかったのか、少し気分がよくなったらしい。

少しだけ口角をあげたが、すぐに不愉快そうに眉をひそませて、


「うん、助かる。見てほしいのは、私の魔法立法史の師匠なのだが、かなり高齢の女性だ。あまり異性との関係が上手く行っていないとかでな・・」


そう、言葉を切った。

あまり、らしくない。

察するに、おそらくこちらをチラチラ伺っているカロンの前で、言いたくない、内容なのだろう。

大丈夫、分かった、と軽くうなずいて、ミシェルも突っ込まない。


だが。


ダンテの師匠。


しかも女性。


おもしろそうではないか。


好奇心むき出しで、ワクワクがとまらないミシェルと、なんだか憂鬱そうなダンテ。


ダンテは、大きなため息を吐いて、


「まあ、おおよその所は、馬車で説明するから、外出の準備をしてくれ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ