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「ええと、ではリリーさん、どんな男性と恋仲になりたいんでしょう?」
そうやってとりあえす話を聞くことにするが、ミシェルは本当に、頭痛がしていた。
リリーの後ろのさざめきは、まるで機械のように整然と並んでいて、軍隊の行進かなにかのように、正確にきっちりと、なにか完璧な法則をもって、動いている。
普通の人のさざめきは、太陽のフレアのように、波のように、燃え盛る火のように、多少の規則はあるのだろうが、割と自由な感じてさざめきは動くものだ。
リリーは質問をうけると、台本があったかのように、
「そうですね、3年後には一人子供を産んでいたいので、あまり年齢が高い方は困ります。家庭は王都に持ちたいですし、そうなると相手は王都に仕事がある、官僚か、それに準ずる立場の人がよろしいですね。やはり子供の体格が悪いと、男の子の場合は騎士になるという可能性も妨げられる場合が大きいので、体格はそれなりの体格を求めます。また、私もそれなりに収入がありますので、それ以下の収入の殿方ではない事は条件ですね。私の実家とも仲良く付き合いできる程度の家柄でないと、今後の付き合いが難しいので、同等の家格の相手が望ましいですが、嫡男の場合は私の仕事が難しくなるので、嫡男ではない方がよいと思います」
きりり、となんの迷いもなく、立て板に水を流すかのごとく、そう一気に言い切ったのだ。
「ええと、それでしたら、ご実家にお願いして、お見合いされた方が、いいのでは・・?」
さっきリリーが出したのは、結婚相手の条件だ。
王宮のバリキャリが務まるくらいのリリーの家柄なら、いくらでも条件にはまる相手は、親が紹介してくれるだろう。
聞けば、リリーの家は二人姉妹で、姉がもう婿をとっているので跡継ぎなどは、心配はいらないという。なら好きな相手と結婚したらいい、という部分で、けつまずいているらしい。
「家の事は考えないでよいので、でしたら私は燃えるような恋愛がしたいのです。恋愛して、その相手と結婚がしたいのです。その為に、私の先に申しましたような条件に当てはまる男性がいるような場所に色々と、顔をだしておりますし、いろんな方ともお会いしたのですが、どうも、上手く行かないのです」
と、顔をくもらせた。
まあ、圧はちょっと強いが、リリーは相手の男の条件もそう無茶は言っていないように聞こえる。
別に大金持ちと結婚したいとか、すさまじいハンサムと付き合いたいとか、そういう無茶ではなくて、リリーにとってそこそこの相手と恋愛結婚したい、それだけだ。
リリーのそこそこは、一般的にはハードルが高いが、リリー自体もかなり悪くない。
リリーは、立派な仕事を持つ自立した、おしゃれな女性で、それなりに美しいし、目的意識もしっかりしている。
性格の部分も、大分はっきりしているが、いやな感じはしない。
それなのに、リリーの後ろの光のさざめきは、一つの重要な事を、ミシェルに教えてくれたのだ。
(うそ・・)
にわかには信じがたい。
どうやら光のさざめきは、リリーを心配して、大切な事を教えようとしているらしい。
「・・え、リリーさん。あなた、10年も彼氏が、いないんですか・・?」
リリーは、さっと頬を紅潮させた。
 




