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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
お水の神様がついているのに、お水にならないのは、不幸な事だ

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さすがにカロンは、名目上とはいえこの聖女が、「お母さま」なのだ。

扉の向こうの薄いカーテンの向こうでくつろいでいた美しい女は、息子が久しぶりにやってきた事がうれしかったらしい。

聖女様は10人はいようかというお付きをほっぱらかして、いそいそと、カーテンの向こうからやってきて、カロンを抱き締める。そして、ダンテが土産だと差し出したタキコミゴハンを、ためらいもなく、珍しそうに食した。


「タキコミゴハンというのね、素晴らしいわ、ダンテ」


「お褒めに預かり、恐縮です」


「この干菓子もとてもいいわね。神官と巫女にも、手配するように。みな喜びます」


その言葉一つで、ワラワラと聖女の周りの神官達が動く。

エンの商売は一層の飛躍を遂げそうだ。

ダンテも、カロンも、和やかに、楽しそうだ。聖女様は、ダンテとも古い知り合いらしい。


客観的に見ても、自分で食べて旨かったお菓子を、即みんなにオーダーしてやるなんて、なるほど清廉な女性だという前評判そのものらしい。みんなうれしそうで、実によろしいことだ。


聖女様は、ミシェルが考えていたような、融通の効かない優等生タイプではなく、どちらかというと、少女のまま大きくなったような、あっけらかんとしたタイプだった。神殿で、何の悪意にも晒されず、丁寧に蝶よ、花よと育てられた、純粋培養の聖女。清廉な性格も、実に思慮深く、そうなるように育てられたのだろう。


(うーん、国策としては悪くない)


ミシェルは関心してしまった。

その神との交信の力により、存在が、国の存続にかかわるようなる事が確定している重要な子供を、まだ幼いうちから一般社会から離して、国力を投じて徹底的に性格のよい人間に育て上げるなど、ミシェルが施政側でも、そうやるに決まってる。


和やかな雰囲気の中、どよーんと機嫌がよくないのは、ミシェル一人。


ミシェルはこんな面倒臭そうな場所にやってきたのは、超絶美形だという近衛兵のアラン様の顔を拝見したかったからだ。ああ、そうだよ。超絶美形で目がつぶれそうだよ。だがな。


「女性騎士なのですね・・」


アンジェリーナ様とかいう本名をもつこの女性の名前を簡単に、皆アラン様と呼んでいるらしい。

男の名前とおもうじゃないか、アラン様って!


普段は王女付きの近衛の兵だとかで、地方の男爵家の娘ながらも、その腕一本で王女付きとなった、実に実力派の、美しい女性だ。


「とても美しいだろう、ミシェルは美しいものが大好きだから、きっとアランも気に入ると思ったんだ」


カロンは、純粋に美しい人をミシェルにお目にかけたかったらしい。


「ありがとう、カロン。こんな美しい方、はじめてお会いします」


ミシェルは力なく、そう答えた。


めちゃくちゃイケメンを期待してたのに、出てきたのが絶世の男装の麗人であった事には心の底からがっかりだが、そりゃそうだ。穢れを知らない美しい聖女の寝所の警備を担当する騎士が、男であるはずもないだろう。それに、この女性は実に美しい女性であることは、間違いない。おもわず同性のミシェルも見惚れてしまうほどの美しさだ。そりゃカロンもミシェルに見せたくなるよ。


だが、この女性、こんな禁欲的な男装の麗人を宝塚レベルでやっているというのに、どうも、何か、うまく言えないが、しっくりこないのだ。


(これは・・この方の本来の姿では、ないのね)


そう心の中で、すとんと考えを落とした時に、ミシェルには、アランの後ろの光のさざめきが、見えた。


(ええ??????この人の後ろにいるのって・・・お水の神様じゃん???なんで??)


そこに見えたのは、この聖域には、ほぼふさわしくない、神の姿。

全キャバクラ・ホステス・あらゆる男性相手の夜の商売こと・水商売の現場のお姉さま方が、悶絶するほどうらやましいと思うだろう、水の女神の姿が、見えてしまったのだ。

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